感想:NHK番組「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」第13回『地獄の炎 ナパーム』

ナパーム空爆史 (ヒストリカル・スタディーズ16)

フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿 http://www4.nhk.or.jp/P3442/
放送 NHK BSプレミアム(毎月最終木曜日 22:00~23:00 放送)。

【※以下ネタバレ】
 
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「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」内容・感想まとめ
 

第13回 『Case13 地獄の炎 ナパーム』 (2017年5月25日(木)放送)

 

内容

フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿「地獄の炎 ナパーム」


科学史に埋もれた闇の事件簿。今回は、地獄の炎「ナパーム」。太平洋戦争で東京大空襲を始め日本の都市を焼き尽くし、ベトナム戦争ではジャングルもろとも村を壊滅させた。発火しやすく対象に粘りつくために消火が極めて困難になるという特徴を持つ。あまりにも非人道的だとして国際的に禁じられたが、今もなおテロや内戦で使用されているという。この恐るべき兵器を作ったのは、ノーベル賞候補にもなった若き天才化学者だった―。

 今回は非人道的兵器として国際的に使用を禁止されたナパームの物語。


●ナパーム

 「ナパーム弾」という爆弾がある。対象物を燃やすために使用される「焼夷弾」の一種で、ゲル状になったガソリンが詰められており、爆発すると火が付いたゲルが建物や人体に飛び散り、燃え尽きるまで消えることが無い。このナパームが開発されたのは第二次大戦中のアメリカだった。



●ナパームの開発者

 ナパームを開発したのは有機化学者ルイス・フィーザーである。フィーザーは1899年生まれ。1940年当時、ビタミンKの合成などの業績でノーベル賞候補級の高名な化学者だった。

 1940年。アメリカは第二次世界大戦のための兵器開発のため、軍と40を超える大学が共同で研究を始めていた。フィーザーは新型兵器として、ゲル状にしたガソリンを詰めた焼夷弾を思いつく。当時使われていた焼夷弾の「テルミット焼夷弾」は、金属の粉を詰めたもので、爆発と同時に熱せられた金属の粉が周囲に飛び散ることで火災を起こす、という原理だったが、金属はすぐに冷えてしまうので、あまり効果的な兵器ではなかった。

 フィーザーは最初はガソリンに生ゴムを混ぜることを思いつくが、日本軍が東南アジアに侵攻したことで生ゴムが手に入らなくなってしまう。軍はフィーザーに、材料が手に入りやすく、戦場で簡単に製造できる、といった条件を出してきた。

 フィーザーは長鎖脂肪酸のナフテン酸アルミニウムとパルミチン酸アルミニウムを混ぜることで、ガソリンをゲル状にする方法を開発する。フィーザーは「ナフテン+パルミチン」から、この薬剤を「ナパーム」と名付けた。フィーザーは、ナパームをインスタントコーヒーなどと同様に粉末化することで、容易にガソリンに溶けるように仕上げた。



●ナパーム、太平洋戦争に投入される

 ナパームは1943年から量産が開始された。ナパームを混ぜたガソリンを火炎放射器の燃料に使用すると、粘りがあるため炎が棒状になって遠くまで届き、従来の火炎放射器の射程が30メートルだったのに対し、ナパーム燃料ならば70メートルまで届いた。

 またゲル状ガソリンを詰めた爆弾は「ナパーム弾」と呼ばれ、日本に大量に投入された。従来型の爆弾では目標に正確に命中させないと効果が無いのに対し、ナパーム弾は火災を引き起こすので目標に命中しなくても火災により最終的に目標を破壊できる。極めて効果的な兵器だった。

 1945年に戦争が終わると、フィーザーは優れた兵器を開発した功績でトルーマン大統領から感謝状が贈られた。フィーザーは普通の研究者に戻り、優れた教科書を書き、後進を育てた。



●使い続けられるナパーム弾

 その後、朝鮮戦争ベトナム戦争でもアメリカ軍はナパーム弾を使用し続けた。ベトナム戦争では、ガソリンの入ったドラム缶にナパームを混ぜて簡易な爆弾を作る、という事が戦地で行われた。粉末で扱いやすく、戦場で簡単に調合できる、というナパームならではの事だった。

 1967年、アメリカの雑誌がナパームの特集を組み、これによりナパーム弾の非人道ぶりが広く知れ渡り、ナパームを開発したフィーザーは非難を浴びることになった。しかしフィーザーは、「国のためならまた同じことをやる」と言ったという。この年フィーザーはハーバード大学を退官した。

 1972年、戦場カメラマンによって、ナパーム弾により大やけどを負った少女の写真が撮影され、ピューリッツァー賞に輝いた。これが決定打となったのか、1980年、国連は人口密集地でのナパーム使用を禁止した。そして2001年にアメリカは全てのナパーム弾を廃棄したと発表する。

 しかしアメリカ軍は2003年のイラク戦争では、ジェット燃料をゲル化した爆弾を使用し、「これはナパーム弾とは違う」と強弁したが、同盟国のイギリスからも高性能のナパームに過ぎない、と非難されることになった。

 また、とある武装勢力は、ネットで「砂糖や石鹸などの日用品でナパームを作る方法」を公開した。安価に製造できながら効果の高いナパーム弾は、このような武装勢力にとって格好の兵器なのである。ナパームは今でもシリア内戦などで使い続けられている。


 ナパームの開発者、フィーザーは1977年に死去した。享年78歳。


感想

 ハイ来た、「科学界に優れた業績を残した人物が、その一方で非人道的なことに関与していた」的な話。こういう『偉人のダークサイドをさらけ出す』ような内容こそまさしく「闇の事件簿」というタイトルに相応しい。大満足の回でしたよ。
 
 
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Napalm: An American Biography
 

感想:NHK番組「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」第12回『ゆがめられた天才 幻の世界システム』

Nikola Tesla: Prophet Of The Modern Technological Age (English Edition)

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第12回 『Case12 ゆがめられた天才 幻の世界システム』 (2017年4月27日(木)放送)

 

内容

フランケンシュタインの誘惑「ゆがめられた天才 幻の世界システム


科学の知られざる姿に迫る知的エンターテインメント。今回は、あのエジソンに勝利して世界初の大規模送電を実現し「電気の時代」の扉を開いた天才科学者ニコラ・テスラ!その後、現在の携帯電話につながる無線通信さらに無線送電までも100年以上前に構想、実用化をめざしたテスラ。資本の論理に翻弄され「マッドサイエンティスト」としてゆがめられ、やがてカルト的な信者を生み出してしまった。早過ぎた天才の悲劇と闇に迫る―

 今回は現代の電気社会の基礎を築いた天才ニコラ・テスラの物語。


●電気時代を作った男

 テコラ・テスラは1856年クロアチア生まれ。テスラは考えたことを、目の前にあるように思い浮かべることが出来たという。数学の数式でも、機械の設計図でも、紙に書かずに頭の中だけで処理することが出来たのである。

 19世紀後半は、電気がいよいよ実用化に入っていた時期だった。発明王エジソンは、アメリカやヨーロッパ各地に発電所を建設していたが、その発電所が生み出すのは「直流」だった。

 電流には「直流」と「交流」の二種類があり、直流は電気の流れが一定、交流は電気の流れが周期的に変化する。実は電気は交流の方が使いやすく、発電所で何万ボルトの高圧電流を作っても、家庭に届けるときには100ボルトに落とす、という事が簡単にできる。直流では電圧を変えられないので、最初から低い電圧にするしかなく、すると発電所から3キロほどの範囲にしか届かず、発電所を大量に作らなければならなくなる。

 ではなぜエジソンは直流で送電したかといえば、当時のモーターは直流でしか動かなかったからである。しかしテスラは交流で動くモーターを発明し、そのアイデアを持ってアメリカに渡った。そして交流による送電網をアメリカ中に張り巡らせる、というアイデアをぶち上げた。そして、投資家ウェスティングハウスがテスラに投資した。

 エジソンは交流が危険だと大ネガティブキャンペーンを展開、動物を交流で感電死させてみたり、死刑囚を処刑する電気椅子に交流を使わせたりした。しかしテスラも交流を使った科学ショーをやってみせ、「電気の魔術師」と呼ばれた。

 しかし、一度にアメリカ全土に電力網を展開しようとする構想はあまりに壮大過ぎて、ウェスティングハウスの財政が危なくなった。テスラは自分の特許権を放棄してウェスティングハウスを助けた。その後、直流対交流の戦いは交流の勝利に終わり、エジソンの設立した発電所も交流送電に切り替えた。



世界システム構想

 次にテスラは無線に目を付けた。無線により、通信・ラジオ放送・電力送電などを行おうというのである。まだ電信が電線で送られていた時代の話である。

 テスラは1893年には無線送信実験に成功し、1898年には無線操縦のボートを動かして見せた。テスラは無線で世界中に送電することで、送電線のない所にいる人でも電気が使えるようになる、というシステムを構想し、それを「世界システム」と名付けた。その構想に投資家J・P・モルガンが出資した。テスラは電力を送信するための高さ60メートルの鉄塔「テスラタワー」を建設した。

 1901年、マルコーニがヨーロッパからアメリカへの無線通信に成功した。これをテスラは気にも留めなかったが、モルガンは構想ばかり巨大で完成しないテスラのシステムに見切りをつけ、1905年にテスラへの出資を打ち切った。その後テスラに出資するものはなく、彼の夢はここで終わってしまった。テスラタワーもやがて解体された。

 その後テスラは第一次世界大戦中には、無線操縦兵器、高周波で潜水艦を探知するレーダー、等の構想を発表するものの、注目されることはなかった。そして1943年に、とあるホテルの一室で看取られることも無く亡くなった。享年86歳。



●テスラ、オカルトのカリスマになる

 忘れられていたテスラだったが、生前彼が「殺人光線」「地震発生装置」などのアイデアを発表していたことで、彼は工学者というよりマッドサイエンティストとして扱われるようになり、オカルトのカリスマのような存在になってしまった。テスラの死んだホテルの一室は、今では毎日一人はテスラ信者が訪れる聖地と化しているという。

 また1990年代に世間を騒がせたオウム真理教の教祖は、1995年の阪神・淡路大震災を「ニコラ・テスラが考えた地震発生装置が起こした」などと本に書いている。



●妥協できなかった人生

 科学者というのものは最先端の研究を行うが、工学者はその研究の成果を社会に応用するためにある程度妥協する。性能が素晴らしくても高価すぎれば誰にも購入できないからである。テスラは天才で、何ができるかという事が明確に見えていたが、工学者としてそれを社会に普及させるために妥協することを知らなかった。それが悲劇の元だったのかもしれない。

 マルコーニは無線通信開発の功績でノーベル賞を受賞した。テスラはマルコーニの発明は自分の特許を侵害していると裁判に訴えた。裁判は長期にわたり、最終的に裁判所はテスラの言い分を認めたが、その判決が出たのはテスラの死んだ五か月後であった。


感想

 今回は特に「闇」ではなく、第五回の「切り裂きハンター」同様の「栄光なき天才たち」編というところでした。今回はエジソンがテスラ攻撃のためにめちゃくちゃエグイ事をしまくった話を延々やるのかと思ったら、さらっと流してしまってちょっと拍子抜けでしたねぇ。
 
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感想:アニメ「武装少女マキャヴェリズム」第8話「彼氏彼女オネエの「事情」」


TVアニメ『武装少女マキャヴェリズム』エンディング・テーマ「DECIDE」

TVアニメ「武装少女マキャヴェリズム」公式サイト http://machiavellism-anime.jp/
放送 AT-XAT-Xが最速放送)。

【※以下ネタバレ】
 

第8話 『第八節 彼氏彼女オネエの「事情」』 (2017年5月24日(水)放送)(最速放送)

 

あらすじ

 納村は風呂場でのさとりとの戦いに勝利するが、そこに因幡月夜が現れ、納村に話があると言って外に呼び出す。納村はすぐに向かおうとするが、さとりとの戦いのダメージに加え、その前に輪&メアリに加えられた拷問の影響もあり、意識を失って倒れてしまう。納村が気が付くと、さとりたちに医務室に担ぎ込まれていた。

 一方、輪とメアリは、納村の事が気になり、こっそり仕置き部屋に様子を見に行こうとするが、途中で鉢合わせし、互いにけん制しあって身動きが取れない事態に。しかし二人はさとりから納村の状況を知らされ、慌てて医務室に駆け付ける。

 輪は納村に謝罪し、鬼の面を外さない理由を語る。輪が幼いころ父親は家族を捨てて他の女と逃げてしまい、以来輪の母は輪の素顔を見るのを嫌がったのだという。納村は秘密を聞いたお返しとして、自分が孤児で、引き取られた養父に狂気じみた剣の特訓を受けさせられたものの、体を壊してしまったことを明かす。互いに秘密を告白しあい、なんとなく距離の縮まった二人でありました。


脚本 : 下山健人 絵コンテ : 澤井幸次 演出 : 鈴木拓

感想

 まあ、幕間劇編というところですかな。今回は輪とメアリが「どっちがお茶を多く飲めるかチキンレース」とか、「医務室で出るに出られずトイレに行けなくて悶絶する蕨」「ワラビのためバケツを差し入れるキョーボー」など、お笑い一杯の回でありました。

 さて、そろそろ(すっかり忘れ去られている)女帝が登場する頃合いですが、でもラストはどう〆る気なのかな。
 
 
TVアニメ『武装少女マキャヴェリズム』オープニング・テーマ 「Shocking Blue」【通常盤】
武装少女マキャヴェリズム B2タペストリーA
【電子版】武装少女マキャヴェリズム(1)<武装少女マキャヴェリズム> (角川コミックス・エース)
 

感想:アニメ「終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?」第7話「ただいま帰りました」


TVアニメ『終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』OPテーマ「DEAREST DROP」(アニメジャケット盤)

TVアニメ「終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?」公式サイト http://sukasuka-anime.com/
放送 AT-XAT-Xが最速放送)。全12話。

【※以下ネタバレ】
 

第7話 ただいま帰りました (2017年5月24日(火)放送)(最速放送)

 

あらすじ

 ナイグラートは昏睡から目覚めたクトリを検査するが、クトリはレプラカーンとしての特性が消えていたため、もう妖精兵として戦うことはできないのではと考える。ヴィレム、ナイグラート、ライムスキンはクトリの今後を話し合うが、妖精兵に引退という概念はないため、今後も出撃を命じられかねないと危惧する。ヴィレムは大賢者に貸しを作ってクトリを引退させられないかと考える。

 一方、未だヴィレムが会ったことが無い妖精兵のノフトとラーントルクは、地上調査隊の護衛についていたが、船が獣に襲われて破壊され、地上に取り残されてしまう。

■脚本:永井真吾 ■絵コンテ:いわもとやすお ■演出:筑紫大介 ■作画監督:長坂寛治・半田大貴・宮西多麻子


感想

 BGMを聞いていると泣き方面を指向していることは解るのですが、イマイチ雰囲気作りが拙いというか、どうも妖精兵の哀れな身の上みたいなのが伝わってこない。そもそも故郷世界が謎の獣にめちゃくちゃにされて島に避難しているという悲惨な状況からして、殆ど感じ取れないしなぁ。

 原作もこんなものなのか、アニメの料理の仕方がまずいのか。
 
 
終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか? (角川スニーカー文庫)

感想:アニメ「正解するカド」第6.5話(総集編)「エクワリ」


正解するカド クリアファイル

正解するカド KADO: The Right Answer http://seikaisuru-kado.com/
放送 BSフジ。

【※以下ネタバレ】
 

第6.5話(総集編) エクワリ

 

内容

 第1話~6話の総集編。

感想

 このアニメ、中身が薄いので総集編で丁度いいわ、って感じ。

 その昔、「1クール毎の総集編を見ていればそれで充分」と思った「太陽の牙ダグラム」の再来のようなアニメです。
 
永遠のこたえ (DVD付)

感想:NHK番組「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」第11回『宇宙に魂を売った男』


Von Braun: Dreamer of Space, Engineer of War (Vintage)

フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿 http://www4.nhk.or.jp/P3442/
放送 NHK BSプレミアム(毎月最終木曜日 21:00~22:00 放送)。

【※以下ネタバレ】
 
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第11回 『Case11 宇宙に魂を売った男』 (2017年3月30日(木)放送)

 

内容

フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿「宇宙に魂を売った男」


科学の知られざる姿に迫る知的エンターテインメント。人類初の月面着陸を成し遂げたアポロ計画の中心人物として科学史に名を刻むドイツ出身の天才科学者ヴェルナー・フォン・ブラウン。しかし彼には、戦中はナチス、戦後はアメリカのロケット兵器開発に従事して大陸間弾道ミサイルを作り上げ多くの犠牲者を生みだした、もうひとつの顔があった!変節を繰り返し大国を手玉にとりながら夢に向かってつき進んだ科学者の、隠された闇!

 今回は人類初の月着陸を成し遂げた「アポロ計画」の中心人物ヴェルナー・フォン・ブラウンの光と闇に迫る。


●月にとりつかれた男

 フォン・ブラウンは1912年ドイツ生まれ、幼いころからSFなどの影響で月旅行に興味を持ち、1930年には同好の士の集まり「ドイツ宇宙旅行協会」に参加し、ロケット研究に参加する。しかしアマチュアの集まりである協会では所詮大したことは実現できなかった。

 フォン・ブラウンはロケット研究に軍を利用することを思いつく。当時のドイツは第一次世界大戦で敗れ、兵器の保有を厳しく制限されていた。しかし最新のロケットを利用した兵器は制限の外で、フォン・ブラウンはロケットの兵器化の可能性を売り込み、1932年・20歳の時に軍に技術者として入隊、1937年・25歳の時には開発チームのリーダーとなっていた。フォン・ブラウンは技術者としてだけでなく、人を率いるリーダーとしての素質も兼ね備えていた。

 1939年に第二次世界大戦が勃発。フォン・ブラウンたちが開発した弾道ミサイル「V2」は、ロンドンやパリへの攻撃に使われ、数万人の人間を殺した。またフォン・ブラウンはV2生産のため捕虜収容所の人間を使うことを思いつき、適した人間を工場に放り込んだが、劣悪な環境で捕虜は次々と死んでいった。

 しかし、フォン・ブラウンはのちに、「上からの命令に従っただけで、自分の研究が軍事利用されるとは夢にも思わなかった」云々と証言している。



●ドイツからアメリカへ

 1945年になると、ドイツは連合国軍に押しまくられ敗北は目の前だった。フォン・ブラウンは仲間たちに、次はアメリカで研究しようと提案、研究所を捨てて家族&V2号の部品と共にアメリカに投降した。アメリカはドイツのロケット技術を持ってきてくれたフォン・ブラウンたちを大歓迎した。フォン・ブラウンたちは、今度はアメリカのために核兵器を搭載可能な弾道ミサイル「レッドストーン」を開発している。

 1957年10月、ソ連は世界初の人工衛星スプートニク一号を打ち上げ、アメリカにショックを与えた。フォン・ブラウンは軍に対して、60日以内に人工衛星を打ち上げて見せると豪語し、1958年1月にエクスプローラー1号の打ち上げを成功させた。

 しかし、今度はソ連は1961年にガガーリンによる有人宇宙飛行を達成してしまう。ケネディ大統領は負けじと10年以内に人類を月に送り込むと宣言し、アポロ計画がスタートし、フォン・ブラウンはサターンロケットの開発責任者となった。

 アポロ計画にはアメリカの予算の4パーセント・二兆円を超える巨費がつぎ込まれた。フォン・ブラウンは、計画への国民への理解を得るため、ウォルト・ディズニーに宣伝を依頼したり、宇宙旅行を啓もうする記事を書いたりした。

 1969年7月。アメリカはアポロ11号で友人月着陸を成功させ、フォン・ブラウンは英雄となった。そして1977年に65歳で亡くなった。彼の最後の言葉は自分が宇宙を旅しているようなつぶやきだったという。


感想

 今回は、アポロ計画となると必ずセットで出て来る有名人のフォン・ブラウンのお話なので、特に目新しいことはなし。『最初はナチスにめっちゃ協力してミサイルを作っていました』とかも、「知られざる悪行」ではないですしねぇ。また人生の最後は悲惨だったという事も無いし……


 と、今回は私的にはブラックさが足りなかったなぁという印象です。もっともっとひどい話をテーマとして発掘してきて「こんなひどい話が合って良いのか……」と絶句するような内容でこその「フランケン」だと思うのですよ。
 
 
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紹介:あらすじ(ネタバレ):小説「虎の王者キサイマン」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 541巻)(2017年3月23日(木)発売)


虎の王者キサイマン (宇宙英雄ローダン・シリーズ541)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150121176
虎の王者キサイマン (宇宙英雄ローダン・シリーズ541) 文庫 2017/3/23
H・G・エーヴェルス (著), シドラ 房子 (翻訳)


深淵の騎士の先駆者であるポルレイターはテラに到着し、カルデクの盾のプシオン力を用いて、すべてを支配しようとするのだが……


ポルレイターを捜索する複合艦隊の旗艦“ラカル・ウールヴァ”がついにテラに帰還した。だが、そこに乗りこんでやってきたポルレイター2010名は、究極の武器“カルデクの盾”を振りかざして、自由テラナー連盟(LFT)と宇宙ハンザに対する支配権を要求してくる。自分たちこそコスモクラートの使命をはたす者であり、銀河系を統率してセト=アポフィスと戦うといいはるのだ。LFTと宇宙ハンザの幹部は反発するが…

 

【※以下ネタバレ】


◇1081話 無敵の者たち(H・G・エーヴェルス)(訳者:シドラ 房子)

 (1078話からの続き)。NGZ425年9月。ポルレイターは地球に上陸すると、自分たちがセト=アポフィスとの戦いを指揮すると宣言し、テラナーやその他の種族は自分たちに従うように要求してきた。さらにポルレイターは超兵器「カルデクの盾」の力で強引に太陽系支配を開始してしまう。一方、セト=アポフィスの手先となったアトランやソラナーは、銀河系での重要な地位を得るため暗躍を開始した。(時期:NGZ425年9月21日~)


◆1082話 虎の王者キサイマン(H・G・エーヴェルス)(訳者:シドラ 房子)

 地球では、謎の男『虎の王者キサイマン』率いる地下組織が、ポルレイターに対する抵抗運動を開始した。キサイマンとは実はソラナーだった。ローダンはポルレイターに対抗する手段を見つけるため、クリフトン・キャラモンをM-3球状星団に派遣した。(時期:不明。NGZ425年9月頃?)

感想:小説「虎の王者キサイマン」(宇宙英雄ローダン・シリーズ 541巻)(2017年3月23日(木)発売)

虎の王者キサイマン (宇宙英雄ローダン・シリーズ541)

http://www.amazon.co.jp/dp/4150121176
虎の王者キサイマン (宇宙英雄ローダン・シリーズ541) 文庫 2017/3/23
H・G・エーヴェルス (著), シドラ 房子 (翻訳)


深淵の騎士の先駆者であるポルレイターはテラに到着し、カルデクの盾のプシオン力を用いて、すべてを支配しようとするのだが……


ポルレイターを捜索する複合艦隊の旗艦“ラカル・ウールヴァ”がついにテラに帰還した。だが、そこに乗りこんでやってきたポルレイター2010名は、究極の武器“カルデクの盾”を振りかざして、自由テラナー連盟(LFT)と宇宙ハンザに対する支配権を要求してくる。自分たちこそコスモクラートの使命をはたす者であり、銀河系を統率してセト=アポフィスと戦うといいはるのだ。LFTと宇宙ハンザの幹部は反発するが…

 
発売日 = 2017年3月23日(木)
サイクル= 第16サイクル「宇宙ハンザ」


【※以下ネタバレ】


内容

◇1081話 無敵の者たち(H・G・エーヴェルス)(訳者:シドラ 房子)

 地球に上陸したポルレイターは、テラナーたちに、対セト=アポフィス戦のため自分たちに従うように要求するが!?


 ローダンの消極抵抗策を聞いて、バリバリの軍拡時代の出身のクリフトン・キャラモンが不満たらたらなのが面白いです。まあ、この時代のテラナーは、太陽系が難攻不落の要塞だった時代とは違い、「公会議→ルーワー→オービター」といろいろな勢力に支配されまくっているからか、昔みたいなガッツが無いっぽい。

 第三勢力とか太陽系帝国の時代なら、ローダンが自ら先頭に立って、侵略者を撃退するためミュータント部隊の力で破壊活動をしまくったに違いありません(実例多数)。「テラナーは決してあきらめない」とかいう燃える名セリフも有ったしなぁ。血の気の多いキャラモンがもどかしがる気持ちもわかります。



◆1082話 虎の王者キサイマン(H・G・エーヴェルス)(訳者:シドラ 房子)

 地球では、謎の男『虎の王者キサイマン』率いる地下組織が、ポルレイターに対する抵抗運動を開始し!?


 キサイマンの正体がなんだか意味不明だし、さらに本筋とは関係無さそうな「謎の地下基地」を持ち出してくるし、エーヴェルス先生大丈夫なのか、と心配になる回でした。

 ところで、P179・三行目の「喪失です」の下にある文字は誤植でしょうか。


 前半・後半ともまずまずのお話でした。


表紙絵

 メインは新キャラ「虎の王者キサイマン」の立ち姿。背景は本物の虎のイラスト。


あとがきにかえて

 担当は「シドラ房子」氏。全2ページ。再生可能エネルギーに関する話題。


次巻予告

 次巻は542巻「カルデクの盾作戦」(K・H・シェール&クルト・マール)(2017年4月6日(木)発売予定)。

 シェールとマールの作品が並ぶなんて、最初の1~10巻頃みたいで懐かしいです。