【SF小説】「ローダンNEO」(全24巻)あらすじ・感想まとめ

スターダスト ローダンNEO (ハヤカワ文庫SF)

ローダン新プロジェクト〈ローダンNEO〉刊行開始!(2017/04/27)
http://www.hayakawa-online.co.jp/new/2017-04-27-173913.html

全世界で累計発行部数10億部を超える、世界最長のSFシリーズ〈宇宙英雄ローダン〉。
その50周年企画としてドイツで2011年にスタートしたリブート・シリーズ〈ローダンNEO〉をハヤカワ文庫SFから刊行します。


第1巻『スターダスト』は2017年7月刊、以下、第1シーズン全8巻を2018年2月まで毎月刊行します。


〈ローダンNEO〉は2036年の近未来に舞台を設定。米国・ロシア・中国の三大国が宇宙開発を競うなか、NASAの宇宙飛行士であるペリー・ローダン少佐は月面に出現した地球外生命体とコンタクトすべく月面に向かう。だが、そのミッションは密命を帯びていた……。現代の世界情勢を反映した国家間の対立も描かれ、従来のローダン・シリーズより物語に厚みが出ています。


ローダン・デビューのチャンスは、いま! もうひとつの〈ローダン〉の歴史を描く新シリーズにご期待ください。

 
【以下ネタバレ】
 

目次

1. 概要
2. 作家チームメンバー
3. 各シーズンのあらすじ
4. 各話のあらすじ・感想

1. 概要

 2011年にドイツで「宇宙英雄ローダン・シリーズ50周年企画」としてスタートしたリブートシリーズ。物語の開始時期をオリジナルの1971年から2036年に変更し、オリジナル版とは異なるストーリーが展開された。日本語版は第3シーズンまで翻訳され全24冊で打ち切りとなった(本国ドイツ版はその後も継続)

2. 作家チームメンバー

・フランク・ボルシュ(1巻~)
・クリスチャン・モンティロン(2巻~)
・レオ・ルーカス(3巻~)
・ヴィム・ファンデマーン(4巻~)
・ミハエル・マルクスターナー(5巻~)
・アルント・エルマー(7巻~)
・フーバート・ヘンゼル(8巻~)
・マーク・A・ヘーレン(12巻~)
・ヘルマン・リッター(13巻~)
・ベルント・ペルプリース(15巻~)
・ミシェル・シュテルン(18巻~)
・アレクサンダー・フイスケス(21巻~)

3. 各シーズンのあらすじ

●第1シーズン「テラニア誕生篇」(1~8巻/全8冊)

 2036年6月。NASAの宇宙飛行士ペリー・ローダン少佐以下四人は、連絡が途絶えた月面基地の安否を確認するため月ロケット《スターダスト》で飛び立った。しかし真の目的は、月面に突然出現した謎の物体の調査だった。

 ローダンたちは謎の物体が、異星人「アルコン人」の墜落した宇宙船だと突き止める。アルコン人は、地球人とそっくりの姿をしていたが、その文明レベルは地球人をはるかに引き離していた。しかし大半の乗員は無気力に仮想ゲームに没頭し、正常なのは女船長トーラと学術長クレストだけで、しかもクレストは白血病で死にかけていた。

 ローダンは、クレストを治療するため彼を乗せて地球に向かうが、アルコン技術をアメリカに独占させれば大国同士の衝突が起きると考え、中国のゴビ砂漠の真ん中に着陸し、エネルギーバリアによるドームを展開して立てこもる。中国はバイ・ジュン将軍指揮下の大軍がドームを攻撃するものの、全く効果は無く膠着状態に陥る。

 ローダンはドームを「テラニア」と名付け、全世界に自分の理想を語り、賛同者は集まるように呼び掛ける。しかし集まって来た者たちは中国軍に阻止され、砂漠の真ん中で難民状態と化してしまう。謎の大富豪ホーマー・G・アダムスは、ローダンを支援するため密かに世界中から超能力を持つミュータントたちをスカウトしていった。

 ローダンの仲間マノリは、クレストを病院に連れて行き治療に成功するが、彼らはアメリカの擁する超能力者集団のリーダー・クリフォード・モンタニーに捕まってしまう。モンタニーは仲間にクレストの心を読ませ、クレストが「永遠の生命の星」を探して旅していたことを知る。

 トーラは小型船で金星を調査中に撃墜されてしまい、その間にアメリカは核兵器で月面のアルコン宇宙船を破壊してしまった。トーラは金星に数千年前に建設されていたアルコン人の基地に保護される。

 中国軍は核兵器によるテラニア攻撃を実施するが、爆発直前アダムスの送ったミュータントが爆弾をドームから遠くに運んだことで、被害は最小限に食い止められた。しかし難民たちがパニックに陥りドームに押し寄せたためローダンはバリアを切らざるを得なくなり、テラニアは中国軍に制圧され、ローダンたちは逃亡を余儀なくされる。その後ローダンたちはアダムスに保護された。またバイ・ジュン将軍は核兵器を使った政府を見限り、自分たちはローダンの側にたちテラニアを守ると宣言した。

 ローダンたちはアダムスたちの支援の下、ワシントンDCに乗り込み、クレストを救出しようとするが、モンタニーが混乱の中クレストをつれて逃亡した。同じ頃トーラはクレストを救うため宇宙船で地球に向かった。モンタニーは永遠の生命の星を目指すため、トーラの宇宙船を奪おうと企み、宇宙船は墜落し、モンタニーは戦いの中で死んだ。ローダンたちはクレストを救い出し、テラニアに帰還した。


●第2シーズン「ヴェガ遠征篇」(9~16巻/全8冊)

 2036年7月。ローダンたちはアメリカに奪われていたアルコン宇宙船を奪還し、《グッド・ホープ》と命名した。直後、太陽系から27光年離れたヴェガ星系からアルコン語の救難信号が届き、ローダンたちは調査に向かった。

 ヴェガ星系では、ヴェガ星系の住民「フェロン人」を、侵略してきたトカゲ型宇宙人「トプシダー」が蹂躙していた。《グッド・ホープ》はトブシダーが入手していたアルコン製宇宙戦艦に撃墜され、フェロン人の主星である第8惑星「フェロル」に墜落する。

 ローダンたちは放浪する内、太古のフェロン人は未知種族「光をもたらす者」から多数の物質転送機を贈られていたことを知る。さらにヴェガ星系には一万年前に作られていたアルコン人の避難所があることも判明する。一万年前、アルコン人は地球にコロニーと軍事基地を建設していたが、戦争のためヴェガに避難所を作っていたのだった。しかしもう生存者は一人しかおらず、ローダンたちの前で最後の一人も死んでしまった。

 同じ頃、地球に「ファンタン星人」の宇宙船が出現し、自分たちの興味を引くものを片端から略奪し始めたが、テラニアは各国に冷静な行動を呼びかける。また、大西洋の海底では、アルコン人が一万年前に作った海底ドームと、直径800メートルの巨大戦艦《トソマ》が発見されていた。海底ドームでは、何者かが一万年間生き続けていた事が確認される。

 ファンタン星人はヴェガでの戦争を知り、略奪のためヴェガに集結した。それを追って《トソマ》もヴェガに到着し、ローダンは軍事力を背景にフェロン人とトブシダーを停戦させた。



●第3シーズン「銀河の謎篇」(17~24巻/全8冊)
 
 2036年9月。地球では国家の枠組みを超えた「テラ連合」が誕生し、初代執政官にはローダンが推薦したホーマー・G・アダムスが就任した。

 同じころ、クレストは悪性のガンで余命六週間と診断され、タチアナ、トルケル=ホンと共に海底ドームの転送機から「永遠の命の惑星」探しに旅立った。ローダンたちもヴェガ星系の転送機を使い、クレストたちの跡を追った。

 両グループは、転送機によって空間のみならず時間も飛び越え、一万年前のヴェガの各惑星などに放り出され、試練を受けることとなった。やがて全員が永遠の命の惑星「ワンダラー」にたどり着き、惑星の主である超越存在“それ”と対面した。“それ”はローダンに永遠の命を与えようとするが、ローダンは“それ”を信用できず、その提案を拒否する。永遠の命を与える装置「細胞活性装置」はクレストの物となり、彼の病は回復し、全員が自分たちの時間の地球へと帰還した。
 
 

4. 各巻のあらすじ・感想

●第1シーズン「テラニア誕生篇」(1~8巻(全8作))

No.タイトル作者発売日作品内年月日
01スターダストフランク・ボルシュ2017/07/202036/06/19~06/27
02 テラニアクリスチャン・モンティロン2017/08/242036/06/27~06/28
03 テレポーターレオ・ルーカス2017/09/212036/06/30~07/04
04 ヴィジョンヴィム・ファンデマーン2017/10/192036/06/30~07/08
05 ミュータントミハエル・マルクスターナー2017/11/212036/07/04~07/10
06 ツインズフランク・ボルシュ2017/12/192036/07/07~07/11
07 エスケイプアルント・エルマー2018/01/242036/07/11~07/12
08 テラナーズフーバート・ヘンゼル2018/02/202036/07/14~07/16
 
●第2シーズン「ヴェガ遠征篇」(9~16巻(全8作))
No.タイトル作者発売日作品内年月日
09 グッドホープフランク・ボルシュ2018/07/192036/07/25~07/28
10 ヴェガ遭遇クリスチャン・モンティロン2018/08/21?(2036/07頃)
11 フェロル攻防戦ミハエル・マルクスターナー2018/09/19?(2036/08頃)
12 海底ドームマーク・A・ヘーレン2018/10/182036/07/31~08/02
13 トーラ救出ヘルマン・リッター2018/11/202036/08/03
14 宇宙オペラヴィム・ファンデマーン2018/12/19?(2036/08/03頃)
15 タイタンの秘密ベルント・ペルプリース2019/01/222036/07/30~08/04
16 ラストホープクリスチャン・モンティロン2019/02/202036/08/06
 
●第3シーズン「銀河の謎篇」(17~24巻(全8作))
No.タイトル作者発売日作品内年月日
17 テラニア執政官フランク・ボルシュ2019/07/182036/09/13~09/15
18 ヴェガ暗黒時代ミシェル・シュテルン2019/08/202036/09/15~09/23
19 トルト戴冠マーク・A・ ヘーレン2019/09/192036/09/14~
20 水の惑星レヤンヘルマン・リッター2019/10/172036/10/04~10/06
21 ワールドスプリッターアレクサンダー・フイスケス2019/11/202036/10/06~10/07
22 時間の貯水槽ヴィム・ファンデマーン2019/12/19?
23 アトランティス滅亡クリスチャン・モンティロン2020/01/23?
24 永遠の世界フランク・ボルシュ2020/02/20?
 
 
Perry Rhodan Neo Paket 1: Vision Terrania: Perry Rhodan Neo Romane 1 bis 8 (Perry Rhodan Neo Paket Sammelband) (German Edition)
 
 

【SF小説】感想:小説「ローダンNEO 1 スターダスト」(2017年7月20日(木)発売)

スターダスト ローダンNEO (ハヤカワ文庫SF)

http://www.amazon.co.jp/dp/B073XM94YF
スターダスト ローダンNEO (ハヤカワ文庫SF) Kindle
フランク ボルシュ (著), 柴田 さとみ (翻訳)


二〇三六年、スターダスト号で月基地に向かったペリー・ローダン達は異星人の船に遭遇する。それは人類にとって宇宙時代の幕開けだった……。宇宙英雄ローダンシリーズ刊行五〇周年記念としてスタートしたリブート・シリーズがtoi8のイラストで遂に日本でも刊行開始! 解説/嶋田洋一


2036年、NASAペリー・ローダン少佐は、連絡の途絶えた月のアームストロング基地を調査するため、“スターダスト”で月面に向かった。彼らは月で驚くべき光景を目にする。そこには巨大宇宙船が着陸していたのだ。一方地球では、異星人との接触の報に米中露をはじめとする国際社会が激しく動揺する…世界最長SF“宇宙英雄ローダン”を現代の創造力で語りなおす新プロジェクト、遂に日本刊行開始。

 
発売日 = 2017年7月20日(木)
シーズン= 1
 
【※以下ネタバレ】
 

あらすじ

 2036年6月19日。NASAは四週間前から連絡の途絶えている月面基地の安否を確認するため、ペリー・ローダン少佐以下が乗り込む月ロケット「スターダスト」を打ち上げた。しかし、スターダスト打ち上げの真の目的は、月面に突如出現した人工物体、おそらくは異星人の宇宙船、の調査だった。

 月に向かったスターダストは、月の裏側に入ったところで何者かに攻撃を受け不時着してしまった。ローダンは未知の人工物体にたどり着き、それが「アルコン人」と名乗る異星人の宇宙船であることを知る。アルコン人は外見は地球人に酷似していたが、その技術力は地球人をはるかに凌駕し、宇宙に「大帝国」を建設していた。

 しかし宇宙船の乗員の大半は職務も果たさず奇妙な仮想ゲームに没頭し、船内で正常なのは最高責任者のクレスト・ダ・ツォルトラルと美貌の女船長トーラの二人だけであった。ローダンたちはトーラに月面に追い出されそうになるが、ローダンは、クレストが末期の白血病で余命いくばくもないこと、そして地球ならば治療の可能性があること、を指摘する。

 クレストは生き延びる可能性にかけて、ローダンたちと共に地球に降りることを決意した。ローダンは、スターダストを、アメリカではなくアジアのゴビ砂漠へと着陸させた。(2036年6月19日~6月27日)


感想

 2011年にドイツでスタートした、ペリー・ローダンのリブート版「ローダンNEO」の第1巻。感想を一言でいうなら「重い」、の一言に尽きる。


 本巻のあらすじそのものは、オリジナルのローダンシリーズ第1話「スターダスト計画」の展開をほぼなぞっていて、オリジナルの読者には特に新鮮味は無いのだが……、「雰囲気」がオリジナルシリーズとはまるで違うのである。

 時代を1971年から2036年に変更しただけではなく、全体のトーンが実に陰鬱で、世界情勢は緊迫し、資源の枯渇や農作物の不作など、破滅の予兆がそこかしこに見えている。アメリカは国土安全保障省が絶大な権力を握る監視国家と化し、NASAは予算を削減され、宇宙への夢も希望もほぼ無い。と、作品世界は閉塞感でひたすら息苦しい。

 そんな薄暗い雰囲気の中で、さらに超技術を持った異星人が出現するのである。オリジナル版ではこの異星人との出会いは「人類の新時代の幕開け」となる、希望に満ちた物語だったが、NEOではそんな空気はみじんもない。今後、世界各国が半狂乱になって異星人の超技術を独占しようと動き、それが世界大戦の引き金を引くだろうことも想像に難くない。先行きに全く希望が見えない。

 さらに憂鬱になるのが、オリジナルシリーズでは有名キャラだったジョン・マーシャルの設定である。オリジナルでは、マーシャルは自らの超能力を自覚すると、それを世界のために役立てようとローダンの元にはせ参じた、明るく頼もしいキャラだった。

 しかしNEOにおいてのマーシャルは、天才投資家だったが、ひたすら金を稼ぐことに嫌気がさし、仕事を辞めてストレートチルドレンの保護施設を立ち上げ、子供の世話と資金繰りに四苦八苦している疲れた男、という設定である。しかも、ひたすら善意で子供の世話をしているのに、そのうちの何人かは正真正銘の犯罪者で、マーシャルを間抜けと見なし、施設を便利な隠れ家としか見ていなかったことが明らかとなる。読んでいて辛すぎである。このシリーズは読者をどこに連れて行く気なのだろうか。


 まさに「リメイク」ではなく「リブート」である。人物名、用語、世界観はなじみのあるものばかりでも、実際に与えてくれるものは、天と地ほども違う。ある程度予想と覚悟はしていたが、実物を突きつけられると、これが想像以上に堪えた。

 まあ、確かに時代を半世紀後ろにずらしただけの物語を新しく展開しても仕方ない、という考えは理解できるのだが……、「これが新時代のローダンだ」と言われても、すんなりとは受け止められない。小説としては合格で、しっかり読めたのは間違いないのだが……、なんだかんだと言っても、自分がどれだけオリジナル版が好きか、ということを再確認させてもらった気がする。

 しかしまあ1冊だけで評価を決めてしまうのも早計である。NEOの評価は、とりあえず第一期(「シーズン」と呼ぶそうである)8冊を全て読み通してから、という事になるのであろう。毎月一冊刊行予定なので、8巻が出る来年2月までは様子見であろうか。
 
 

次巻予告

 次巻は2巻「テラニア」(クリスチャン・モンティロン)(2017年8月24日(木)発売予定)。
  
 

他の巻の内容・感想は以下へどうぞ

perry-r.hatenablog.com
 
 
Perry Rhodan Neo Paket 1: Vision Terrania: Perry Rhodan Neo Romane 1 bis 8 (Perry Rhodan Neo Paket Sammelband) (German Edition)
 
 

【ホラー】感想:NHK番組「真夏の夜の異界への旅」

MYSTERY NIGHT TOUR 2016 稲川淳二の怪談ナイト ライブ盤 [DVD]

真夏の夜の異界への旅 http://www4.nhk.or.jp/P4556/
放送 NHK BSプレミアム。2017年8月5日(土) 19:00~22:00。

【※以下ネタバレ】
 

内容

▽「鬼伝」「怪談人(かいだんびと)」「霊場伝説」の3本立て


ゾクゾクする異界の話を3本立てでお届けする。まずは夜7時から、古来より日本人の心の中にある鬼とその伝説に迫る「鬼伝」。続いて夜8時から、怪談家稲川淳二、「呪怨」などの映画監督・清水崇「リング」などの小説家・鈴木光司の3人が怖い話の極意を明かす「怪談人(かいだんびと)」。最後は夜9時10分から、霊場たる日本各地の山岳に伝わる怖くて不思議な昔話を現地への旅と再現ドラマで紹介する「霊場伝説」。


【出演】平祐奈,高橋英樹,いとうまい子,川島明,三倉茉奈,植野行雄,稲川淳二,鈴木光司,清水崇,関根勤,中川翔子,レッド吉田,遼河はるひ,渡辺裕太,今野浩喜,新谷あやか

1.「鬼伝」

 コメディー。鬼の一家(父親:高橋英樹、母親:いとうまい子、子供:川島明三倉茉奈植野行雄)が日本の鬼にまつわる話を調べていくという構成。

・第一章 岡山・桃太郎と戦った鬼

 桃太郎伝説の元となった吉備津神社の言い伝えについて。


・第二章 福島・悲しみの人食い鬼婆

 安達ケ原の鬼女伝説。


・鬼は何故角と虎の服なの?
 →一説によれば、「鬼門は北東。昔の方位で言うと丑(うし)と虎の間。だから牛の角と虎の服」ということらしい。


・第三章 青森・神様になった鬼

 青森県鬼沢。水が不足して困っていた村のために、鬼が水路を作ったという伝説。鬼の正体は、特殊技術を持った漂泊の民だったのでは。住民は鬼を神として崇め、今も節分の豆まきをしない。



2.「怪談人(かいだんびと)」

 怪談の稲川淳二、「呪怨」他のホラー映画監督・清水崇「リング」他のホラー作家・鈴木光司の三人が集まって対談し、関根勤中川翔子がそれを見守っているという設定で適時コメントを入れる、という内容。


清水崇
 呪怨では先達の幽霊描写を超えようと、ぼんやりした写し方をせず、幽霊は「白塗りにした役者をバーンと写す」という手法を開発した。人が目を見開くと感情が伝わってくるが、ごくたまに「何を考えているのかわからない」という人がいる。そういう人をオーディションで選んだ。


稲川淳二
 日本全国で不思議な話のパーツ(例:家のベランダに全然知らない人の靴が置いてある)を集めてきて、保存している。そのパーツパーツをうまく組み合わせて一つの怖い話に仕立て上げる。


鈴木光司
 小説を書くとき、あらすじとかオチとか全く考えずに書き始める。リングも最初「人が同時に四人死ぬ」という展開にどう理屈をつけようと頭を絞っていて、子供がビデオテープを机に置いていったのを見て、「念写のテープで呪われる」という話を考え付いた。


 三人にNHKのビルの中を歩いてもらい、長い廊下とかトイレ前とかロッカー前とかで「ここでこんなことが起きたら怖い」とか恐怖シチュエーションを発想してもらう。


 最後に「マンションに帰宅したAさんが、数分後にベランダで叫んでいた。何があった?」というお題で、三人がそれぞれ5分程度の作品を作って放送。

清水崇「失礼しました…」

 主人公のAさん(女性)が自分のマンションの前に戻ってくると、道にゴミが散らばっている。自室に戻ると、彼氏から元カノにまとわりつかれている云々という伝言が残っている。またスマホに知らない女性から「失礼しました」と言うだけの意味の解らない電話がしつこくかかってくる。さらに彼氏から「元カノが死んだらしい」という電話が入る。

 やがてマンション前の道路が騒がしくなり、見下ろすと自分の死体が転がっている。Aさんが言葉を失っていると、部屋の中から女が現れ「今から失礼しま~す」と言ってAさんをベランダから突き落とす。Aさんが道路に叩きつけられて、その衝撃でゴミが散らばった。〆。


稲川淳二「お願い…」

 若い会社員のAさんは事故物件があるというマンションに引っ越した。ある雨の日帰宅すると、自分の部屋の前まで雨が垂れた後がある。もちろんドアのカギは締まっている。鍵を開けて中に入り、窓の外を見ると女の顔が浮かんでいる。そして稲光が光ると、今度は女の顔がガラスに映りこんでいる。つまり室内に入ってきている。Aさんは慌ててベランダに飛び出し、手すりにしがみついた。そういえば「事故」の内容は、若い男がベランダから飛び降りたという話だった。直後Aさんの首に女が手を回してきて、「お願い、死んで」とささやいた。Aさんは絶叫した。


鈴木光司「水の流れる音がする」

 Aさんが帰宅して、ふと後ろを見るとバスルームのドアが開いている。やがてトイレの水を流す音が聞こえてくる。Aさんは怖くなって恋人の男に電話を掛けると、バスルームの中から着信音が聞こえる。ふと気が付くと、電話のかけ先を間違えて、前の彼、ストーカーとして付きまとった挙句トイレで首つり自殺した男の番号にかけていた。慌てて電話を切ると、今度はその元彼の番号で電話がかかってきた。Aさんはベランダに出てなんとか逃げようとするが、突き落とされて、アスファルトが迫ってきた。



3.「霊場伝説」

 鳥取県大山、群馬県赤城山香川県弥谷山(いやだにやま)に伝わる伝説を再現ドラマで紹介。


感想

 夏休み納涼企画という感じの三時間番組。


 第一部は、高橋英樹がいきなり桃太郎侍の名セリフを言い出したりして、NHKって意外とさばけているなぁという感じでした。


 第二部は、日本のホラー界の三巨頭が顔を合わせて、創作について語り合うというビッグ企画。特に終盤三人に番組のためにオリジナル作品を作って発表してもらうとか、NHKは金があるよなぁと思うと同時に、得した!って気持ちになりました。

 第三部は、まあ歴史のお勉強という感じでしょうか。


 第二部の内容だけで元を取った(?)と満足できました。しかし、いとうまい子も歳をとったなぁ……
 
リング (角川ホラー文庫)
 

【映画】感想:映画「ジュラシック・ワールド」(2015年:アメリカ)

ジュラシック・ワールド [Blu-ray]

金曜ロードシネマクラブ|日本テレビ http://www.ntv.co.jp/kinro/index.html
放送 日本テレビ 2017年8月4日(金)

【※以下ネタバレ】
 

映画の歴史を変えた「ジュラシック」シリーズの最新作が、豪華キャストによる新吹き替え版でテレビ初放送!! 「ジュラシック・パーク」の「事件」から22年後。恐竜と至近距離で触れ合える人気テーマパークとして実現した「ジュラシック・ワールド」で、パークの集客を伸ばすために遺伝子操作によって生みだされた新種の巨大恐竜が大暴走!野心家のマネージャー・クレアと恐竜と心を通わせる恐竜行動学のエキスパート・オーウェンが、制御不能の巨大恐竜に立ち向かう!! 最新の映像技術で実現した、恐竜VS新型恐竜の迫力のバトルは必見!! 2018年には続編「フォールン・キングダム(原題)」の公開も決定し、ますます目が離せない、家族で楽しめる最高のエンターテインメントだ!!

 

あらすじ

 現代に蘇った恐竜を扱うテーマパーク「ジュラシック・ワールド」は、一大人気観光地として、多くの客を引き付けていた。パークでは、より客を呼び込むための目玉として、遺伝子操作で新種の狂暴な恐竜「インドミナス・レックス」を開発しており、お目見えを間近に控えていた。ところがインドミナスは飼育場所から逃げ出し、行方不明になってしまう。

 捕獲に出かけた警備員たちは、狂暴なインドミナスにあっという間に全滅させられ、自ら処理に向かったオーナーのマスラニも事故死する。パークの警備隊長ホスキンスは、調教師のオーウェンが狂暴なヴェロキラプトル(ラプトル)を手なづけているのを見て、前々から兵器として利用することを狙っていた。そしてこの緊急事態にパークを仕切り、ラプトルでインドミナスを攻撃するという策を持ち出す。

 オーウェンは嫌々その策に従うが、インドミナスにはラプトルの遺伝子が組み込まれており、両者は出会った途端意気投合して一緒に人間に襲い掛かってきた。しかしオーエゥンが危機に陥るとやっぱりラプトルが味方に戻ってインドミナスと戦い始める。さらにパークの重役でオーウェンの恋人カレンは、Tレックスを檻から出してインドミナスにけしかけ、肉食恐竜同士の大バトルが展開される。そこに水中肉食生物モササウルスが現れて、インドミナスを水中に引きずり込んで食べてしまった。

 かくしてパークの危機は去った。おしまい。


感想

 評価は△。

 いやー、参った。これはちょっと、と言いたくなる出来。

 「恐竜テーマパーク」で「恐竜は管理しているから大丈夫!→狂暴な奴が逃げ出して人間を襲い始めてもう大変!」という「ジュラシック・パーク」のストーリーをまんまコピーしたような内容でもう新鮮味ゼロ。しかも子供向けに甘口ストーリーに仕立てていて、「親の離婚危機に悩む子供が出てきて大冒険」とかいうファミリー向け映画になっていて失望甚だしい内容でした。


 また「ジュラシック・パーク」のオマージュというかなんというかで、

・草原で車に乗っていたら後ろから走る恐竜たちに追い抜かれる
・博物館の中でラプトルに襲われる

 とか、もうセルフパロディ的なシーンが出て来て興ざめ。


 さらに終盤は

・「ゴジラにはキングコングをぶつけるしかない」みたいな発想で、インドミナスにT-レックスをぶつけるとかアホかという感じだった。だいたい両者が戦わずに二匹とも暴れだしたら、もっと事態が悪くなるだけなのだが、カレンはそんなことは考えていなかったらしい

とか

オーウェンを裏切ったはずのラプトルが突然友情パワーに目覚めて味方に戻ってくれるとか、バカみたいだと思った

とか

・オチでモササウルスがわざわざ陸地に上がってきてくれて、しかも悪いインドミナスだけ狙って食べてくれるとか都合よすぎ

とか

 もう見ていて呆れた。故マイケル・クライトン先生がこの映画を見たら、脚本家を捕まえて説教したんじゃないでしょうか。まあ恐竜が暴れるシーンのCG技術は大したものだと思いましたけど。


 ちなみに、有名な「オーウェンが両手を広げてラプトルを制止する」というあの場面、写真だけで見ると間抜けこの上ないですが、実際に見るとそうでもなかったですね。
 

https://kinro.jointv.jp/lineup/20170804
2017.8.4 よる9時~11時24分放送
ジュラシック・ワールド


両親の都合で叔母のクレア(ブライス・ダラス・ハワード)が勤める「ジュラシック・ワールド」で過ごすことになった16歳のザック(ニック・ロビンソン)と11歳のグレイ(タイ・シンプキンス)。世界中から家族連れが集まる人気テーマパーク「ジュラシック・ワールド」で、大好きな恐竜と触れ合えるとグレイは大喜び。しかし出資者やパークを所有する野心家のオーナー・マスラニイルファン・カーン)の対応に追われ、クレアは、兄弟をすっかり放置…! 2人はクレアの秘書の目を盗んで、勝手にパーク内を動き回り始めてしまう。


同じ頃、クレアはマスラニを連れて遺伝子組み換えで生みだされた新種の恐竜・インドミナス・レックスの飼育スペースへ。凶暴で知能が高く、“仲間”を知らない新型恐竜が本当に安全なのか、マスラニはクレアに再調査を指示していた。クレアは、群れで行動する凶暴な肉食恐竜・ヴェロキラプトルを“調教”することに成功した元軍人のオーウェンクリス・プラット)に協力を求めることに。集客数を伸ばすために新型恐竜の公開を急ごうとするクレアに、その無謀さを訴えるオーウェン。その直後、彼の言葉を証明するように、インドミナス・レックスは人間を騙して檻から逃げ出してしまい…!!



キャスト/スタッフ
出演
オーウェン> クリス・プラット山本耕史

<クレア> ブライス・ダラス・ハワード仲間由紀恵

<ホスキンス> ヴィンセント・ドノフリオ玄田哲章

<グレイ> タイ・シンプキンス(村瀬歩

<ザック> ニック・ロビンソン(上村祐翔

<ロウリー> ジェイク・ジョンソン(岩田光央

<バリー> オマール・シー(星野貴紀

<ドクター・ヘンリー・ウー> B・D・ウォン(堀内賢雄

<カレン> ジュディ・グリア田中敦子

<マスラニ> イルファン・カーン(江原正士



スタッフ
<監督> コリン・トレボロ

<脚本> リック・ジャッファ&アマンダ・シルヴァー and デレク・コノリー&コリン・トレボロ

<ストーリー> リック・ジャッファ&アマンダ・シルヴァー

<キャラクター原案> マイケル・クライトン

<製作> フランク・マーシャル パトリック・クローリー

<製作総指揮> スティーヴン・スピルバーグ トーマス・タル

<撮影> ジョン・シュワルツマン

<プロダクション・デザイン> エドワード・ヴァリュー

<編集> ケヴィン・スティット

<衣装> ダニエル・オーランディ

<音楽> マイケル・ジアッキノ

 

2017年視聴映画のあらすじ・感想の一覧は以下のページでどうぞ

2017年視聴映画あらすじ・感想一覧
 
 

感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第89話(シーズン4 第11話)「国王がドナー!?」

スパイ大作戦 シーズン4<トク選BOX> [DVD]

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン4(79~104話)の他のエピソードのあらすじ・感想は以下のページでどうぞ
海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン4」あらすじ・感想まとめ
 

第89話 国王がドナー!? The Brothers (シーズン4 第11話)

 

あらすじ

半年前から幽閉されている中東の国王。救出しようにもその居所がどうしても分からない。首謀者であるプリンスである弟を葬り、国王を権威を回復させるため、IMFチームは弟に薬を飲ませ、腎臓病を偽り、腎臓移植ドナーとして国王を手術に連れてこさせるという作戦に出る。


半年前から幽閉されている中東の国王。救出しようにもその居所がどうしても分からない。首謀者であるプリンスの弟を葬り、国王の権威を回復させるため、IMFチームは弟に薬を飲ませ腎臓病を偽り、腎臓移植ドナーとして国王を手術に連れてこさせるという作戦に出る。

※DVD版のタイトルは「移植手術を演出しろ」。


【今回の指令】
 西側に友好的なカマダン国王セリーム三世(King Selim III of Qamadan)は、半年前から、弟のサマンダル王子(Prince Samandal)によりどこかに幽閉・監禁されている状態である。サマンダル王子は今や王のごとくふるまい、さらに彼の部下ハタフィス大佐(Colonel Hatafis)がその権力を支えている。IMFはセリーム国王を救出し、王権を回復させなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、パリス、バーニー、ウィリー
 ゲスト:イリナ、無名の劇団員たち(「ハートフォード・レパートリー劇団」所属)


【作戦の舞台】
 カマダン王国


【作戦】
 IMFは、パリスが大金持ち、フェルプスとイリナがその友人、という設定で堂々とカマダン王国に乗りこむ。パリスは半年以上前から王と約束していたと言って宮殿を訪問し、サマンダル王子と石油取引の話を行う。そしてワイロも含めた提案をして、サマンダル王子と契約について合意する。

 帰り際、パリスは体調不良のふりをして倒れ、医者としてフェルプスが飛んでくる。フェルプスが病院に運ぼうと言うと、サマンダル王子は宮殿に医療設備が整っていると言って、宮殿で治療するように提案する。そのあとイリナは王子と会食し、隙を見て薬を盛り、王子は倒れてしまう。

 フェルプスは王子を診察し、末期の腎臓病なので腎臓移植の必要があるとウソの診断をする。王子は兄のセリーム国王の腎臓を移植させるため、王を眠らせてから宮殿に連れてくる。フェルプスたちは王と王子を手術室に運び、手術のふりを始める。

 一方イリナはハタフィス大佐に、パリス(大金持ち設定)はハタフィスのようなタイプが嫌いなので、貴方はすぐに宮殿から追い出されるだろうと予告する。それを聞いたハタフィスは、王も王子も殺してしまおうと部下に配電盤を細工させて停電を起こすが、バーニーたちが修理してしまう。

 フェルプスたちは手術室の床に穴を開け、王と王子を地下室に降ろし、二人の髭などの見掛けを入れ替えて、二人をすり替えてから、手術室に戻す。手術後、ハタフィスは、セリーム国王(実はサマンダル王子)の病室に忍び込み、酸素吸入を止めて王のつもりでサマンダル王子を殺してしまう。一方、目覚めた本物のセリーム国王は、フェルプスとにこやかに握手していた。

 ハタフィスは国内の有力者である族長たちを集め、サマンダル王子の陰謀でセリーム国王が殺されたので、自分が摂政になって国を預かる、と宣言する。ところがそこにセリーム国王が現れ、ハタフィスは愕然として立ち尽くし、そんなハタフィスを族長たちが取り囲む。最後、IMFメンバーが車で立ち去るシーンで〆。


監督: ムレイ・ゴールデン
脚本: リー・ヴァンス(原案: ロバート・C・デニス)


感想

 評価は○。

 IMFが所在不明の国王を救出するため、腎臓移植手術という大掛かりな仕掛けを展開するエピソード。手術中の患者の入れ替えなど、仕掛けが面白い回だった。


 今回の目玉は、IMFが展開するウソの外科手術シーンである。IMFがミッションに人数が必要な時には、契約しているらしいハートフォード(・レパートリー)劇団の団員を呼んできて仕事をしてもらうが、今回は団員を五人も六人も連れてきて医者や看護師に扮してもらい、大掛かりな手術シーンを展開してくれた。

 しかし、全員が手術着に身を包み、それらしい会話を交わしているものの、やっていることは患者のおなかの上にシートを敷いてその上に赤い染料の入れ物を置き、時たまメスやガーゼにその染料を塗り付けて、手術しているように見せかけているだけ、という展開が実に笑えてしまった。

 しかも隙を見て、人間が寝ている部分ごとエレベーター形式で下の階に降ろし、その間ばれないようにダミー人形をさっさとずらしておいておく、とか、もう視聴者レベルでは茶番としか思えないことを延々とやっていて、神の視点ですべてを把握できる視聴者としては抱腹絶倒モノの展開だった。


 とはいえ、そこまで持っていくまでの手順は緻密で、

1. パリスが王宮を訪問した後、仮病で倒れて、フェルプスが治療に来る
2. パリスの友人役のイリナが王子に薬を盛る
3. 王子が腎臓病と診断され、たまたまフェルプスが腎臓治療の権威だと判明する
4. フェルプスは妻に内緒でパリスについてきたので、ばれたら困るので、病院とかでは手術できないとごねる
5. 王宮でこっそり手術するすることになる

 と、細かい仕掛けを積み重ねて目標までたどり着いているのが、なかなか感心させてくれた。

 また、ミッションに時折邪魔が入り、王子の侍医ラバシが王子の飲んだ酒の中に薬が入っていたことを発見してイリナに銃を突き付けたり、ハタティス大佐が王族を二人とも殺そうと部下に王宮の配電盤を破壊させたり、と、アクシデントが連発するが、その度にIMFはさらっと障害を乗り越えてしまうのがなかなか頼もしかった。

 ところで、冒頭、パリスはすごい有名人としてカマダン王国に乗りこんでくるが、どんな情報操作をしたらこういう状況が作り出せるのか、どうにも気になって仕方がない。

 今回のIMFの助っ人となる女性エージェントはイリナ(ミシェル・キャリー)。しかし海外の情報によると名前は Lisa となっていて、どうも日本語翻訳時に変えてしまった模様である。何故リサでは駄目だったのかよく解らないものがある。しかし名前はともかく、サマンダル王子に近づいて薬を盛ったり、ハタフィス大佐を挑発して暴走を誘ったり、となかなかの活躍ぶりであった。

 このエピソードのサブタイトルの原題「The Brothers」は、もちろんセリーム国王と弟サマンダル王子の事を指している。劇中では単に兄・弟としか語られなかったが、二人を同じ俳優(ロイド・バチスタ)が演じており、かつ二人が入れ替わってもばれない、という展開から、両者は双子という設定だと思われる。そこは説明してくれても良かった気がする。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが車で公衆電話機の側に乗り付け、故障中の札のかかっている電話の下部の蓋の鍵を開くと、中に封筒と超小型オープンリール式テープレコーダーが入っている。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。西側に友好的なカマダン国王セリーム三世は、約半年前からいずれかに幽閉・監禁されており、幽閉の首謀者は王の実の弟サマンダル王子である。そして今や王の権力を代行するサマンダル王子は、その国の主な財源である莫大な石油の利権を自由にしており、それに反対する者を拷問と殺人によって抑えているのはハタフィス大佐といって、中東においてサソリの如く恐れられている秘密警察長官である。

 そこで君の使命だが、国王セリームを救出し、その王権の回復を図ることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 

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感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第97話(シーズン4 第19話)「老害の首相」

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【※以下ネタバレ】
 
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第97話 老害の首相 Phantoms (シーズン4 第19話)

 

あらすじ

将来有望な芸術家たちを大粛清するよう指令を出した老独裁者。高齢で幻覚を見ることもあるらしいこの首相に、視覚的トリックを使って首相の座から引きずり下ろす。

※DVD版のタイトルは「血の粛清」。


【今回の指令】
 某国の独裁者レオ・ボルカ(Leo Vorka)は、側近ゲオルギー・クール大佐(Georgi Kull)に命じて、同国の若い芸術家の大半を対象とする粛清を実行しようとしている。もしこれが実行されれば、西側に友好的な世代は壊滅的打撃を受けることになる。IMFはボルカを失脚させ、副首相バルジン(Deputy Premier Bartzin)が次期首相となるようにしなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、パリス、バーニー、ウィリー
 ゲスト:ノーラ、エドマンド・ムーア(コメンテーター)


【作戦の舞台】
 某東側国家


【作戦】
 IMFは、ボルカが若いころリサという女性と愛し合い子供を作ったものの、その後リサが裏切ったため殺してしまい、二人の子供は行方知れずになった、という事実を利用することにした。

 某国の刑務所では、若き詩人ザーラが反体制の罪で逮捕され、クール大佐に尋問を受けていた。


 IMFは国際的に有名なコメンテーターのエドマンド・ムーアとボルカ首相のテレビインタビューを行わせ、バーニーはスタッフのふりをして首相の部屋に侵入、部屋に小型映写機やスピーカーを設置したり、首相の眼鏡を特別な物にすり替えたり、を実施する。

 続いてノーラがリサの幽霊の演技をして、それを映写機でボルカの部屋に投影する。この映像はボルカのかけている特殊なメガネでしか見ることはできない。ノーラはリサの幽霊として、ボルカとの間に生まれた息子はまだ生きているが、クール大佐に殺されかけている、と言ってボルカを非難する。IMFは偽の手掛かりで、刑務所にいるザーラこそ、ボルカの実の息子だと信じ込ませる。

 ボルカは部下にザーラを連れてくるように命じるが、IMFは途中でザーラを保護し、代わりにパリスがザーラに変装してボルカの元に乗りこむ。ボルカはザーラ(実はパリス)に、お前は息子だと告げるが、パリスは荒々しく否定したため、ボルカはカッとなってパリスを殴り倒す。パリスは死んだふりをして、同時にIMFはザーラの幽霊の映像も映写し、ノーラと二人でボルカを非難する。激高したボルカは映像に銃を乱射し、銃声を聞いて部下たちが駆け付けてくる。

 ボルカは部下たちに、そこに幽霊がいると叫ぶが、他の人間には映像は見えないので、部下たちはボルカが錯乱したとみなす。バルジン副首相は、ボルカの様子を見て、もう私が首相になるしかないと宣言し、ボルカを連れて行かせる。それを見てクール大佐はすぐにバルジンに媚びて彼が首相だと認めるが、バルジンは、クールはボルカとのコンビが長かったので仲を引き裂くのはしのびない、といって、クールも連れて行かせる。最後、IMFメンバーが車で立ち去るシーンで〆。


監督: マーヴィン・チョムスキー
脚本: ローレンス・ヒース


感想

 評価は○。

 IMFがトリックで心霊現象を演出してターゲットを精神的に追い込み破滅させる、という面白設定のエピソード。幽霊を策略に使用する、というのは第50話(シーズン2 第22話)「心霊現象で追いつめろ!」でも使われたアイデアだが、内容自体は全く別の方向性だったので、これはこれで面白かった。

 今回は、ボルカが部屋の中に映し出された映像を見て怯え、「おい君、そこにいるだろう!」と叫ぶのに、呼ばれて来た他の人間たちは「はぁ?」となっている光景が、もはやコントのような状態になっていて、妙におかしかった。IMFの幽霊演出も冴えていて、パリスが扮したザーラが殴り倒されて床に倒れると、その体から幽体が離脱したように映像を流し、その「ザーラの幽霊」がボルカを非難し始めるシーンなど、もう腹を抱えて笑いたくなった。

 そして今回一番面白かったのは、オチの場面だろう。ボルカが精神錯乱に陥ったとみなされて兵士たちに連れていかれ、バルジン副首相は自分が後継者になると宣言する。すると今までボルカべったりでバルジンを目の敵にしていたクール大佐は一転、にこやかにバルジンに対して「よろしくどうぞ、首相閣下」と返事するのである。その変わり身の早さからして失笑モノだったが、それを見てもバルジンは渋い顔で、クール大佐に「君と前首相ボルカとは長い間のコンビだ。今更仲を裂くに忍びんよ」といってクールを連れて行かせてしまう。この一連のやり取りが実にこっけいで傑作だった。

 今回のIMFの助っ人となる女性エージェントはノーラ(アントワネット・バウワー)。海外の情報によるとフルネームは Nora Bennett とのことである。しかし別にターゲットと絡むシーンがあるわけでなく、パリスに幽霊メイクをしてもらい、カーテンみたいな白い服を着て、カメラの前で「うぁぁぁ、恨めしいぃぃぃ」とか言っているだけだったので、あんまりエージェントらしい仕事をしたとは言い難いし、特に印象にも残らなかった。

 このエピソードのサブタイトルの原題「Phantoms」とは「幻、幻影、幽霊、お化け」の意味。ちなみに Phantom と ghost の違いは、前者が「目撃者の想像の産物かもしれない、あやふやなもの」、後者は「祟りを起こしたりするしっかり存在するもの」、というニュアンスの様である。確かに今回の幽霊はボルカにしか見えなかったので、Phantom がふさわしいと言えよう。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが公園の中にある火災報告用の電話ボックス(棒の上に赤い木箱が付いており、中に電話が入っている)の蓋を開けると、中には大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーが入っている。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。(※第33話(シーズン2の第5話)「人身売買の闇を葬れ!(前編)」のシーンの使いまわし)


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。年老いた独裁者レオ・ボルカは、その側近ゲオルギー・クール大佐に若い芸術家の大半を網羅する大規模な粛清を命じた。もしこれを許せば、西側に友好的な新しい世代への希望は全面的に圧殺されてしまう。

 そこで君の使命だが、ボルカを権勢の座から追いやり、代わりに副首相バルジンの次期首相就任を確実なものにすることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 

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感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第88話(シーズン4 第10話)「盗まれた化学式」

スパイ大作戦 シーズン4<トク選BOX> [DVD]

スパイ大作戦BSジャパン http://www.bs-j.co.jp/missionimpossible/
スパイ大作戦 パラマウント http://paramount.nbcuni.co.jp/spy-daisakusen/
放送 BSジャパン

【※以下ネタバレ】
 
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第88話 盗まれた化学式 The Double Circle (シーズン4 第10話)

 

あらすじ

アメリカの国防を左右するミサイル燃料の化学式を盗み出した美術収集家。貴重な美術品をエサに彼に近づいたIMFチームは、厳重な金庫からその化学式を奪い返すべくエレベータを利用した作戦を繰り広げる。


アメリカの国防を左右するミサイル燃料の化学式を盗み出した美術収集家。貴重な美術品をエサに彼に近づいたIMFチームは、厳重な金庫からその化学式を奪い返すべく、エレベーターを利用した作戦を繰り広げる。


【今回の指令】
 先日、アメリカが開発した強力なミサイル用燃料の化学式を書いた機密書類が、高名な美術品収集家ビクター・ラズロ(Victor Laszlo)に盗まれてしまった。さらにラズロの相棒である殺し屋レイ・ダンソン(Ray Dunson)は、化学式を知る科学者を殺害してしまった。ラズロが情報を売る予定だった敵国は、既に自国で新燃料を開発したので、書類はまだラズロの手元に残されている。IMFはこの機密書類を奪回しなくてはならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、パリス、バーニー、ウィリー
 ゲスト:ギリアン、エリック


【作戦の舞台】
 アメリカ国内


【作戦】
 IMFはまず、ラズロが貸切ってオフィスを構えているビルの12階の直下11階を確保し、12階とそっくり同じレイアウトにして調度品もそろえ、見分けがつかないレベルで複製する。さらにエレベーターに細工し、12階に直通したつもりでも11階に到着させられるようにする。

 ギリアンは某国(明らかに中国)の代理人という設定でラズロと会い、高価な美術品「北京の仏像」と引き換えに化学式を売ってほしいと持ち掛ける。ラズロはすぐさまギリアンを調べ、(IMFがあからさまに手掛かりをばらまいておいたので)、すぐに彼女がアメリカのスパイだと気が付く。ラズロは「連合人民共和国」と取引する予定なので、アメリカには売る気はないと言ってギリアンを追い出す。

 直後、フェルプスはダンソンを拉致し、連合人民共和国のスパイのふりをして、ラズロたちは自分たちを裏切ってアメリカのスパイと取引をする気だろうと詰問する。ダンソンは慌てて否定するが、フェルプスは隠し撮りだと言って、ダンソンに「ラズロが秘密の隠し部屋を作っていて、そこに書類を隠すシーン」を見せる。

 ダンソンはすぐに確認に行くが、IMFはダンソンをラズロの本物のオフィスがある12階ではなく、11階の複製の部屋に誘導し、ダンソンはそこで隠し部屋を発見する。さらにここでラズロに変装したパリスとギリアンは、ダンソンに聞こえるように、既にラズロはアメリカと取引をしているように話し合う。そしてラズロ(実はパリス)は、連合人民共和国には書類は盗まれたと言い訳し、その犯人にはダンソンを仕立て上げるつもりだ、という。ダンソンはそれを聞いてラズロに裏切られたと確信する。

 その間に、バーニーたちは12階のラズロの本物のオフィスに侵入し、隠し金庫がある壁の前に、偽の壁を置き、偽の金庫を仕込む。

 やがてラズロのオフィスに、連合人民共和国の人間が化学式の買い取りにやってくる。ラズロは金庫(実はIMFの用意した偽金庫)を開けるが、当然中身は空っぽで、ラズロは狼狽する。そしてダンソンが盗んだに違いないと掴みかかるが、ダンソンに撃ち殺される。ダンソンは、実はラズロは裏切り者で隠し部屋に書類を移していた、といって隠し部屋の扉を開けようとするが、当然そんなものは無いので開かない。連合人民共和国の人間は呆れてダンソンを射殺して立ち去る。

 最後、バーニーが本物の金庫から書類を取り出し、最後にIMFメンバーが車で立ち去るシーンで〆。


監督: バリー・クレーン
脚本: ジェリー・ルドウィッグ


感想

 評価は○。

 今回のエピソードは、ビルのフロアを丸ごと複製してターゲットを騙す、という大仕掛けが展開され、細部で色々と突っ込みたく所はあるものの、そこそこには面白いエピソードではあった。


 さて、このエピソードで一番腑に落ちなかったのは、「連合人民共和国」は自国で燃料を開発して情報は不要になったはずなのに、ラズロたちの機密書類を買い取りに来ることになっている点である。この点が最後まで引っかかってしまい、シナリオがおかしかったのだろうと結論付けようとしたのだが、海外の情報を調べてみて、実は日本語への翻訳に問題があることが判明した。


 実はフェルプスが冒頭で聞くテープの指令内容は、正確にはこう言っていたのである。

テープの内容(抜粋)

The man you are looking at is the eccentric art collector, Victor Laszlo, who recently arranged the theft of the only copy of a new fuel formula vital to America's missile defense.

The theft was executed by Laszlo's partner, Ray Dunson, who also killed the one American scientist capable of duplicating the formula.

Enemy scientists have recently solved the same problem, so they do not need our copy of the formula, but they will pay Laszlo handsomely for the privilege of destroying it, and thereby putting us years behind them in military capability.


Google翻訳

あなたを見ている人は最近、アメリカのミサイル防衛に不可欠な新しい燃料式のコピーのみの盗難を配しビクターラズロ、偏心アートコレクターです。

盗難はまた、式を複製することができるもののアメリカの科学者を殺したラズロのパートナー、レイ・ダンソン、によって実行されました。

彼らは、式の私達のコピーを必要としないので、敵の科学者たちは最近、同じ問題を解決してきたが、彼らはラズロの権限は気前よくそれを破壊し、それによってそれらの年の背後にある米軍の能力を置くために支払うことになります。

 つまり、連合人民共和国は、既に情報は必要とはしていないが、アメリカの手に情報が渡るのを防ぐため、あえてラズロから情報を買い取るつもりだった、という設定だったのである。こんな重要な情報を抜きにしてドラマを見せられても、話が通じないのも当然であろう。当時の翻訳スタッフは何を考えていたのかと言いたくなる。

 上記の点はさておき、今回のIMFの作戦には「ビルのフロアを丸ごとコピーして相手を引っ掛ける」という大仕掛けが繰り出されるのが、物凄い無理感が有る。いくら何でもビルのフロア一つを工事するのは結構な時間がかかると思うし、前後の事情から見てもフェルプスが指令を受けてから作戦開始まで何か月もかかったようには思えないので、この時点で現実味が無くなっている。しかしまあ、IMFには、この手の土木工事を得意とするような政府の組織とのつてがあり、国防上の緊急事態のため、24時間くらいで突貫工事をしたのかもしれない。

 とは言え、この設定を受け入れられれば、IMFがエレベーターに仕掛けをしておいて、ダンソンたちは12階に行ったつもりなのに実は11階のそっくりのフロアに来てしまっていて気が付かない、という展開を楽しめる。エレベーターが上下するたびに、リレー装置がガチャガチャ動くシーンは、なんともそれっぽくて楽しかった。

 終盤、バーニーはラズロのオフィスの隠し金庫の前に偽の壁を用意し、そこに偽金庫を埋め込んでラズロを引っ掛ける、という手を使う。当然ニセの壁は本来の壁よりはるか手前に来ているのだが、ラズロもダンソンもそれに気が付かない。二人は部屋が狭くなったとかそういうことに気が付かないくらいのうっかり者なのかと言いたくなった。

 ラスト、バーニーは偽金庫のダイヤルが9に設定されているのを見て、本物の金庫のダイヤルを9にすれば開くはず、と推測し、実際それが正解だったのだが……、金庫のダイヤルとはそういう物なのだろうか。もっとぐるぐる左右に回して開くものであろう。話を単純化しようとして、見ているほうがあっけにとられるような正解を持ち出されて、ちょっと唖然としてしまった。

 と、突っ込みたくなる点が山盛りのエピソードだったが、「IMFが悪党を上手くだました結果、勝手に自滅してしまい、IMFは悠々立ち去る」といういつものパターンは守られていたので、まあ良しとしたい。


 今回のIMFの助っ人となる女性エージェントはギリアンアン・フランシス)。海外の情報によるとフルネームは Gillian Colbee とのことである。アメリカのスパイという設定(というか実際そうなのだが)で、ラズロたちを翻弄したりと、なかなかの活躍ぶりであった。ちなみにウィリーの相棒の荷物持ち役として「エリック」という男性も登場していたが、彼の台詞はゼロであった。


 このエピソードのサブタイトルの原題「The Double Circle」とは「二重丸」の意味だが、正直今回の話との関連が全く分からない。劇中の何が二重丸だったのだろうか。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスがプールのフェンス横に停めてある車に乗りこむ。車のダッシュボードの蓋を開けると、中には8トラックカセットテープと大きめの封筒が入っている。フェルプスはカセットを車の再生機器に差し込んでテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なおこのテープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。美術品収集マニアとして知られるビクター・ラズロは、このほどアメリカが開発した強力ミサイル用燃料の化学式を書いた機密書類の盗み出しに成功、しかもラズロの仲間である殺し屋レイ・ダンソンが、新燃料の化学式を知っているただ一人のアメリカ人科学者をも殺してしまった。一方最近敵国も、ミサイル用新燃料を開発、こちらの情報を必要としなくなったため、盗まれた化学式は依然ラズロの手元にあり、このままではわが国は軍備の点で非常な立ち後れを覚悟しなければならない。

 そこで君の使命だが、盗まれた化学式を奪回することにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 

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海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン4」あらすじ・感想まとめ
 
 

感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第87話(シーズン4 第9話)「ロボット」

スパイ大作戦 シーズン4<トク選BOX> [DVD]

スパイ大作戦BSジャパン http://www.bs-j.co.jp/missionimpossible/
スパイ大作戦 パラマウント http://paramount.nbcuni.co.jp/spy-daisakusen/
放送 BSジャパン

【※以下ネタバレ】
 
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第87話 ロボット Robot (シーズン4 第9話)

 

あらすじ

首相が亡くなったことを隠し、その替え玉を準備、替え玉に2日後の声明発表で首相引退・次期首相として自分を指名させる計画を立てる副首相。まるで生きているかのように動作するロボットを巧妙に使い敵の魂胆を打ち砕け。


首相が亡くなったことを隠し、首相の替え玉を準備。その替え玉に、2日後の声明発表で首相引退、次期首相として自分を指名させる計画を立てる副首相。生きているかのように動作するロボットを巧妙に使い、敵の魂胆を打ち砕け。


【今回の指令】
 某国の副首相グレゴール・カミロフ(Gregor Kamirov)は、首相パパフ・ゼコフ(Pavel Zagov)が既に一か月前に死んでいるにもかかわらず、その死を隠し、ジェミニ(Gemini)という男に首相の替え玉を演じさせている。カミロフは二日後、このジェミニにテレビ演説を行わせ、首相引退を宣言させるとともに、自分を次期首相に指名させるつもりである。もしカミロフが首相となれば、この国は中立を放棄し東側陣営に走ることは明らかである。IMFはカミロフの陰謀を阻止しなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、パリス、バーニー、ウィリー
 ゲスト:トレーシー


【作戦の舞台】
 某国


【作戦】
 フェルプスとウィリーは外国の芸人という設定で、重要閣僚の一人で情報庁長官のアントン・マセックに呼ばれて来た、というふりをして入国する。カミロフはフェルプスたちが人間そっくりのロボットを使ってコントをする芸人だと知り、さらなる調査を命じる。カミロフの部下は、フェルプスたちの宿泊している家に、ゼコフ首相そっくりのロボットが置いてあること、またテレビ放送の設備が用意されていること、を発見する。

 カミロフは、マセック長官が二日後の放送の際に電波ジャックを行い、芸人たちを使って首相そっくりのロボットに「後任にはマセックを指名する」と喋らせるつもりだ、と推測する。そしてフェルプスたちを捕まえて、ロボットごと連れてくる。パリスは人間そっくりのロボットに変装して喋って見せ、さらに義手を使ってロボットは手が取りはずせることを印象付ける。ロボット(実はパリス)の働きを見たカミロフは、このロボットに演説させることを決め、もうジェミニは不要だと判断し部下に口封じを命じる。

 一方、バーニーはこっそりジェミニが捕まっている牢屋に侵入し、ダミー人形を使って首つり自殺死体を演出する。カミロフの部下はジェミニを殺しに来るが、そのニセ死体に騙されて、そのまま帰ってしまう。そのあとバーニーはジェミニを連れて逃走し、フェルプスたちと合流する。IMFジェミニがロボットのふりをしてテレビ演説するように言い含めてから逃走する。

 ジェミニは、テレビカメラの前で、首相引退表明と同時に、自分の後任は自由選挙で選出する、と発表する。それを聞いたカミロフは狼狽して、テレビスタジオに乗りこみ、喋っているのは首相ではなくロボットだと叫ぶが、手が取れないので慌てる。さらに相手がジェミニで生きていたことを知り、言葉を無くす。最後はIMFメンバーが車で立ち去るシーンで〆。

監督: レザ・S・バディイ
脚本: ハワード・バーク

感想

 評価は○。

 今回のエピソードは、ターゲットに「人間そっくりに動くロボット」という物を信じ込ませてしまう、という一見面白そうな話だったが、実のところ内容はわりと粗く、面白さはそこそこというところだった。

 それより、今回の一番の見どころは、パリス役レナード・ニモイの働きぶりだろう。今回はニモイは、パリス役の他に「首相の替え玉ジェミニ/首相そっくりのロボット」を演じている。あの特徴のある顔を特殊メイクすることですっかり隠し、禿げ頭の老人役を見事に演じ切っていた。海外のサイトで「ニモイ=パリス/ジェミニの二役」と書いてあるのを見るまで、この事実に全く気が付かなかった。というか、事実を知って見直しても、やはりこれがレナード・ニモイだとは信じられない。IMFが変装に使用する特殊マスクは空想の産物だと思っていたが、今回のメイクを見ると、結構リアリティがあるのでは、と思い直してしまった。

 今回のIMFの助っ人となる女性エージェントはトレーシー(リー・メリーウェザー)で、第80話(シーズン4 第2話)「第三次世界大戦」に続いての登場である。これまでのところ、他のゲストの女性エージェントは一回こっきりしか登場していないが、リー・メリーウェザーは何かがスタッフに気に入られたのだろうか。

 中盤、IMFはカミロフ副首相の腹心ソレンキー大佐を嵌めて、ソレンスキーがカミロフを裏切っており、ジェミニを利用し副首相の座を狙っている、とカミロフに思わせ、カミロフに粛清させてしまう。しかし、最後まで見ると、このソレンスキー粛清のエピソードは、IMFのミッションの遂行には何の関係も無かった事が判明する。意味も無くIMFの策略で陥れられて粛清の憂き目にあったソレンスキーは哀れの一言と言えよう(まあ悪党の右腕なので、自業自得という感もあるが……)

 前述のソレンスキーの件を見てもIMFの作戦はイマイチ緻密さに欠けている感が有るが、終盤はその傾向がさらに強くなる。オチをどう締めくくるのかと思ったら、牢屋から助け出したジェミニにすべてを任せて、自分たちは無責任にも(?)そのまま逃亡してしまうのである。ジェミニがきちんとIMFの言い含めた通り「自由選挙を行う」と演説してくれたから良かったものの、あそこで演説を放棄して逃げ出されたりしたら、IMFの作戦は破たんしたわけで、かなりいい加減な作戦だった感が否めない。今回のシナリオはそういう意味で、やや不満が残った。

 ところで、冒頭にIMFメンバーが集まって打ち合わせをする際、バーニーが自分が開発したロボットの腕だけをテーブルの上に載せて、リモコンで操作してペンを持って字を書かせるシーンがある。フェルプスはそれを見て「人間そのままだ」云々と感心するのだが、実はこの腕の出番はここだけで、以後の作戦では全く使用されないまま終わる。振り返ると、あれはいったい何だったのだろうか。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが子供たちが遊んでいる公園の横に止めている車に乗りこむと、ダッシュボードには大きめの封筒とオープンリール式テープレコーダーが入っている。フェルプスはテープを再生して指令を聞きつつ、封筒の中の写真を確認する。指令は最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」といい、テープから煙が吹き上がる。


参考:指令内容

 おはよう、フェルプス君。今君が見ている写真の人物はパパフ・ゼコフ首相である。ゼコフ首相は一月前に死亡して今は亡いが、その死は副首相グレゴール・カミロフによって特に秘され、代わりに現在ではそのジェミニという替え玉が首相を装っている。副首相カミロフは二日後、この替え玉ジェミニをテレビに出し、病身を理由に引退の声明を発表させるとともに、次期首相として自分を指名させようと謀っているのだ。こうして一度カミロフが首相になるや、その国は今までの厳正中立を放棄、東側陣営に走ることは明らかである。

 そこで君の使命だが、この副首相カミロフの策動を封じることにある。例によって、君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは自動的に消滅する。成功を祈る。
 

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海外ドラマ「スパイ大作戦 シーズン4」あらすじ・感想まとめ