小説「夏休みは、銀河！（上・下）」（岩本隆雄）の感想です。
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■データ（公式）
http://www.amazon.co.jp/dp/4022739002/
夏休みは、銀河! 上 (朝日ノベルズ) (新書)
岩本 隆雄 (著), 間宮 彩智 (イラスト)
新書: 367ページ
出版社: 朝日新聞出版 (2008/10/21)
ISBN-10: 4022739002
ISBN-13: 978-4022739001
発売日： 2008/10/21
http://www.amazon.co.jp/dp/4022739037/
夏休みは、銀河! 下 (朝日ノベルズ) (新書)
岩本 隆雄 (著), 間宮 彩智 (イラスト)
新書: 387ページ
出版社: 朝日新聞出版 (2008/10/21)
ISBN-10: 4022739037
ISBN-13: 978-4022739032
発売日： 2008/10/21
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■データ（個人的補足）
「星虫」等で知られる超寡作作家・岩本隆雄氏の６年ぶりの新作です。また新ブランド「朝日ノベルズ」の創刊作品群の一つでもあります。
■あらすじ
小学五年生の「内田一希」（うちだ・いつき）は学校一の長身で運動も得意だけど人付き合いは苦手な女の子。一希は一学期の終業式の日、小学校に隠されていた謎めいたメッセージを発見します。それは２４年前に在籍していた伝説的なイタズラ好きの小学生たち・通称「悪ガキ三人組」が残した物でした。そのメッセージに従って集まった一希たち５人は、三人組が後輩のために用意していた驚くべき物を発見し、想像もしなかったような冒険に旅立ちます。小学生達の夏休みの冒険を描いたジュブナイルＳＦです。
■感想
一言で言えば「ワクワクする子供向けＳＦ」です。「普通の小学生たちがふとした事から日常を飛び越えた冒険に巻き込まれる」というのは児童文学の一つの定番ではありますが、この作品はまさにそれです。引っ込み思案の女の子、小学校屈指のスポーツ少年（というよりガキ大将という言葉がピッタリ）、良いところのお坊ちゃんだけどちょっと屈折している美少年、等々のメンバーが、偶然から仲間となって共に冒険をすることになる、という図式は実に懐かしく有りました。
しかも、お話は単に懐かしいというだけではなく、本当に面白いのです。きっかけは「大昔の学校の先輩たちが残したメッセージを辿る」というほんの簡単な冒険で、小学生が２４年後のために何を用意できるんだろう？という単純な疑問で引っ張るのですが、それがあっと驚く物が飛び出し、その後も次から次への冒険が続き、最後には「夏休みは、銀河！」というタイトルに相応しい壮大な結末に至るのです。ちょっと裏山へ出かけるような軽い冒険が、最後にはとんでもないスケールの大冒険になってしまうのですが、そのステップアップの仕方に無理が無く、本当に話の規模の膨らまし方が上手いのです。
あと、岩本作品を知っている人ならお馴染みだと思いますが、「登場した時はなんだか良く解らない伏線」が、後半次から次へと「実はこうでした」と明かされてゆき、何時の間にか頭がこんがらがるような壮大な設定を構築している、というあの展開も健在でした。
読み終わってみると、物語はとてつもない規模の設定（ハードＳＦに十分使えそう）が隠れているのですが、あくまで「小学生たちが主役となって物語を解決していく」という流れを貫き通しています。大人たちはあくまでも脇役、子供たちが全てを解決していくのです。ジュブナイルＳＦ、ここに極まれりですね。
そしてこんなに規模が大きな物語なのに、「悪」という物は一人／ひとつも出てこないのが実に気持ちよかったです。イラストの「間宮彩智」氏が描くふんわりした絵そのままの世界観で、最後まで気持ちよく読み通せました。
この小説は最初は高校生が主役のはずでそれを小学生に書き直したそうですが、それは大成功だったと思います。子供たちが主人公で無ければこんな素直に楽しめる物語にはならなかったでしょう。
良く出来たジュブナイルＳＦは、得てして「ああ、自分も子供の頃にこんな冒険に参加できれば素敵だったのに」と胸をかきむしるような気持ちにさせられるものですが、この作品はまさにそういう気持ちを久々に思い起こさせてくれました。
６年ぶりの岩本作品は、「星虫」から「鵺姫異聞」までの全作品を含めてベスト１にしたい好作品でした。岩本隆雄ファンはもちろん、そうでないジュブナイルＳＦ好きも是非読んでいただきたい作品です。
■評価
（５段階評価の）５点。
