感想:小説「大鴉殺人事件」(1972年)(エドワード・D・ホック)

大鴉殺人事件 (Hayakawa pocket mystery books)

 小説「大鴉殺人事件」(エドワード・D・ホック)の感想です。

■データ(公式)
http://www.amazon.co.jp/dp/4150011869
大鴉殺人事件
ハヤカワ・ミステリ 1186
エドワード D.ホック
出版社: 早川書房
発売日: 1972/10

 
 
■データ(個人的補足)

推理小説
・「サム・ホーソーン」「怪盗ニック」「サイモン・アーク」等の名探偵で知られるホックの処女長篇作品。1969年発表。元私立探偵の推理作家『バーニー・ハメット』の初登場作品。


■あらすじ

 1969年4月。アメリカ探偵作家クラブ(MWA)の受賞パーティーの最中、受賞者の一人が射殺される。被害者は死の間際、大鴉のトロフィーを床に叩きつけて壊してからこときれる。果たして被害者は何を言いたかったのだろうか? クラブの副理事で元探偵のバーニー・ハメットは、クラブの依頼で事件の調査を開始するが・・・


■感想

 短編で有名なホックの処女長篇。当時の推理小説業界を舞台にした一種の業界小説で、エラリー・クイーンを初めとする推理作家や、当時有名だったらしい編集者・アンソロジストが実名で登場しているそうです。そのようなミステリ関係者が300人も集まったパーティーの最中、彼らの目の前であろうことか本物の殺人事件が発生する、という展開が面白いです。ただし面白いのはその設定だけですけどね。

 正直に言いまして、謎解き物としての内容は今ひとつです。ストーリーは淡々としており、「様々な手がかりを小出しにして読者の興味をひきつける」という様な配慮は全く無く、恐ろしく退屈な展開です。そして、主人公の素人探偵があちこちをウロウロした挙句、最後の最後に、それまで容疑者とも思われていなかった人物に突然「貴方が犯人だ!」と指摘して、余韻も無いままさっさと幕引きとなります。

 この結末を読んで気がついたのですが、この作品は短編小説のアイデアを単に水で薄めて長編に仕立て上げただけなんですよね。意味のない会話シーンとかその他の要素をバッサリ省き、意味の有るところだけ抽出して仕立て直すと、ほら、ホックのいつもの短編小説に早変わり。これが短編だったらそこそこ評価できたのでしょうけど、長編分の価値は無いと思います。

 発表当時は、ミステリとしての価値はともかく「推理小説業界の内輪受け小説」として楽しまれたのかもしれませんが、今となってはもう小説としての価値は微妙です。ホックの本格推理物を期待して読んだのに、大ハズレでした。うーむ。

■評価

(5段階評価の)2点。