感想:アニメ「翠星のガルガンティア」第13話(最終回)「翠の星の伝説」


 アニメ「翠星(すいせい)のガルガンティア」(全13話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■「翠星のガルガンティア」アニメ公式サイト
http://gargantia.jp/

 BSデジタル放送BS11での視聴です。

第13話(最終回) 翠の星の伝説


■あらすじ

 レドはストライカー(のAI)と対話し、ストライカーはクーゲルの死後もクーゲルの構想した社会システムの構築を進めていたことを知る。今やストライカーは自分が統治する人間たちから見て「神」だと言い、レドにも自分に従うように命じる。レドはストライカーが人間を奴隷にしているだけだと怒り、戦いを挑む。

 ガルガンティアでは、リジットがガルガンティアに残されていた旧文明の遺産「天のはしご」ことマスドライバーシステムを起動させた。リジットはマスドライバーを大砲として使用してクーゲル船団に大損害を与え、ピニオンたちが確保していた旧文明の海上プラントも破壊した。

 レドは自分と機体を一体化させて、死を前提にストライカーと戦おうとするが、チェインバーはレドはもうまともな人間になったので死ぬ必要はないと言い出し、レドの軍籍を剥奪すると機体から放り出してしまう。そしてストライカーと相打ちになって爆発した。

 その後。レドはガルガンティアでサルベージ屋として働き、旧文明の記憶メディアなどの遺産を引き上げていた。ベベル(エイミーの弟)はそこから得た知識を船団の人々にレクチャーしていた。レドは何時の日かクジライカとコンタクトできる日が来るかもと思う。終わり。


■感想

 しょっぱなのストライカーのセリフ「クーゲルの遺志をついで全体主義国家をやってます」というセリフに吹いた。あーあ、「もしかしたら、クーゲルはふつうの軍人だったが、サポート役の人工頭脳が暴走して妙な社会を作ってしまったのでは?」とか淡い期待をかけていたのに、思いっきり外されました。だからぁ、もう銀河同盟に帰れないのにこの原始人惑星を啓蒙して全体主事国家にしてどーしようというんですか?


 レドVSストライカーの最中に、エイミーが乱入してきて「側にいたい」とか唐突に言い出したのも苦笑物。スタッフが「やっぺ、エイミーってヒロインらしいことなにもしてなくね? 最後にレドが好きみたいなことを言わせないと…」とか慌てて繕った感じがしてもう、ね。


 「天のはしご」も…、今までガルガンティアの人たちは過去文明のことなんか全て忘れました的スタンスだったのに、最後の最後になって「実はこんなこともあろうかと」と、旧文明の施設を隠しもっていたとか言い出すし。そして出てきたのがマスドライバーシステムなのに、使い道は「大砲」…、しょぼっ。もっと劇的な演出はなかったのでしょうか。


 ラストバトルでチェインバーが突然カッコよく「レド、お前は死ぬな」的なことを言い出して特攻していくのにもなんだかなぁ感が。今までに伏線を張ってもうレドはチェインバーが必要ないような描写を散りばめていたのならともかく、ラストで突然これではねぇ。


 クジライカって絶滅させたとか言ってなかった? それでレドが慟哭していた気がするのですが、実は生きていてそのうちコンタクトできるかもね、と言われましても、なにそれ感が…


 うーむむむ。何から何までうーむむむな最終回でした。


■総括

 虚淵玄ブランドの名声を毀損しまくったような気がする作品でした。第一話で何かものすごいものが始まる予感がしたのに、実はただの思い過ごしだったという…


 最初に遠未来の全体主義国家の人類対異形の宇宙怪獣という結構魅力的な設定を叩きつけてきて、おおっと思わせたのに以後全ては無意味に。「宇宙ヒディアーズ」も「銀河同盟」も「アヴァロン」も何もかもどこかに消えたまま二度と出てこなかったという、設定厨と言われても仕方のないような話の進め方でした。あと、意味ありげだったレドの笛とか過去の記憶も実はなんでもなかったという、悪いほうに意表をつく展開でしたしね。


 またキャラ立ても大失敗。レド&チェインバーのコンビはまずまずでしたが、ガルガンティアの船団員には殆ど出てきた意味がありませんでした。唯一ピニオンがそれなりに話に絡んできたぐらいで、正ヒロインのはずのエイミーの存在感は空気だし、それ以外の女性キャラ・リジット・ベローズ・サーヤ・メルティたちなんか、いてもいなくてもよいという有様。エロ漫画家・鳴子ハナハル氏にキャラデザを頼んだのにこの惨状はなんなのかと。この娘たちが6話で唐突に水着姿になったのも、今となっては理由が良く解る。あそこ以外に見せ場がなかったもんね。


 中盤「実はヒディアーズは元人間だったのだぁ」という衝撃設定を公開して以後話にかつを入れるのかと思ったら、その後も「だから何か?」的な通常運転のまま進行するのでもう呆然。最後は「人類を支配しようとする狂気の人工頭脳との戦い」とかいう古臭い話に持ち込んで、最後は「ガルガンティアに馴染んでみんなと幸せに暮らしましたとさ」というひねりも何も無いところに着地…、


 なんというか、今振り返ると、こんなちんまりしたアニメに最初あんなにワクワクしていたのかと苦笑したくなります。いやー、スカとは言わないにしても、予想をはるかに下回るローテンションな作品でありました。