感想:ウォーゲーム雑誌「Game Journal(ゲームジャーナル) No.51」『それぞれの関ヶ原/武田遺領争奪戦争』(2014年6月1日発売)

ゲームジャーナル51号 それぞれの関ヶ原/武田遺領争奪戦争

 発売日:2014年6月1日(3,6,9,12月の1日発売)

ゲームジャーナル公式サイト
http://www.gamejournal.net/

■今号のページ
http://www.gamejournal.net/item_list/gj_051/index.html


■付録ゲーム

(1)それぞれの関ヶ原ゲームデザイン:遠藤祐美子)

>史上初!日和見大名たちの視点から関ヶ原合戦を再現!

>本作ではプレーヤーは従来のどのようなゲームとも異なり、小早川、吉川、長宗我部、島津の4大名のなかからいずれか一大名をランダムに選び、その勝敗が勝利条件となる。

>そして、両方のプレーヤーが交互に東軍と西軍をプレーするので、プレーヤーは相手の正体がどの大名であるかを推測しながら、相手プレーヤーを出し抜き勝利を目指さなければならない。

 最初は自分の正体を隠して交互に東西軍を動かし、そのうち例えば「小早川は東軍にお味方いたす」とかいって素性をバラせば以後東軍担当。最後に討ち取った敵武将数で勝ちを決める。その時島津が相手プレイヤーの正体で同じ東軍に属していても、討ち取った数が島津の方が多いので相手プレイヤーの勝ちになりました、云々。

 相手プレイヤーと殴りあうのでは無く、例え同じ陣営でもポイント数で勝ち負けを競う、とか、普通のウォーゲームとは異質な概念で作られたゲームだと言えましょう。「自分の正体を隠してプレイ」というのは既に過去の収録作品にも数点あるのですが、このゲームはなんとなく発想は「ユーロゲーム」で、それをへクスマップとかでウォーゲームっぽくしてみました、という感じがします(素性を隠して勝負とか、ユーロゲームでいくらでもありそうなシステムですし)。まあ今頃はウォーゲームにドミニオンのシステムを組み込むようなご時勢ですから、別にこういうのもアリだと思います。「もうウォーゲームじゃないよなぁ」とは思いますけど。



(2)武田遺領争奪戦争(ゲームデザイン:遠藤祐美子)

本能寺の変後の旧武田領を巡る、徳川、上杉、北条の三大名の争いを、2人のプレーヤーによる対戦型ゲームとして再現する。

>各プレーヤーは、徳川、上杉、北条の中から二大名を1個づつ受け持ち、残る一大名は「第三勢力」となる。
>各プレーヤーは相手がどの大名を担当しているのかが、わからない。

>プレーヤーは「第三勢力」の大名を上手く利用し、相手の正体がどの大名であるかを推測しながら、自分の担当大名を勝利に導かなければならない。

 「それぞれの関ヶ原」と目指すところは同じ模様。まあテーマは目新しくはあります。




□特集:それぞれの関ヶ原/武田遺領争奪戦争

 「関ヶ原」「天正壬午の乱ヒストリカルノート、松田大秀氏のリプレイ漫画、ゲームのプレイ指針、デザイナーズノート、など、いつも通りの内容。

 ゲームのルールが良く理解できないのでリプレイ漫画もちょっと解り辛い……

 それにしても女性のウォーゲームのデザイナーってもしかして世界にただ一人では?



□その他

[特別企画]日本史ウォーゲーム 20年前の 宿題の採点は?

 高梨俊一先生が、ウォーゲームブーム末期の1980年代後半に「日本史ゲーム」についてシミュレイターで語られていたのですが、大まかに言うとこんな感じ。

1)「WW2のゲームでドイツとソ連が淡々と(?)戦っても誰も文句は言わない。しかし関ヶ原ゲームでは、小早川の裏切りとか島津の奮戦とかの「エピソード」を求められる。しかしそれらを一つのゲームに全て入れるのは困難」

2)「戦国で武将の裏切りとかは普通にあるイベントだが、それをゲームにあらわすのは難しい」

 その課題が現在どのくらい解決できているか判定するという企画で、前者は「カードドリブンで再現できるようになったのでは」、後者は「まさに今号のゲームでそういう難しい裏切りとかがゲーム化されていますよ」的な結論になっています。ところで高梨先生の元発言が「旧シミュレイター14号からの引用」と書いていますが、1988年発行なら「《新》〜」の方だと思います。



[連載]絶版ゲーム再生Project RENEWAL(錦大帝)

 今回の御題はアドテクノスの「幻の八八艦隊」……、イヤホント、アドテクノスのデザイナーってやりたい放題やっていたよなぁ、と遠い目をしたくなるタイトルです。まあ、「北海道共和国」とか「ニイタカヤマノボレ」に比べればまだ大人しい方かもしれませんけど……



□次回予告

 No.52(2014年9月1日発売予定)の特集/付録ゲームは「信玄上洛」です。あの懐かしい戦国群雄伝シリーズ1作目です(まあ、このゲームの発売当時は武田信玄風林火山四部作の一作だったそうですが……)。

 「あれ、昔コマンドマガジンの付録ゲームに「信玄上洛」が無かった?」とかいぶかしんでいたのですが、調べてみたら、該当作品は「信玄最後の戦い」(http://commandmagazine.jp/com/036/index.html)で、「信玄上洛」のリメイクであって信玄上洛ではありませんでした。おっと勘違い。

 GJはアドテクノスの版権を持っているのだから、何かのついでに「戦国合戦絵巻」を出してくれたらいいのに。まあこういう初心者向け的ゲームの再販企画はGJはやらないか。