感想:NHK番組:推理系番組「謎解きLIVE 忍びの里殺人事件」第二夜(2014年9月14日(日)放送)


 NHK番組:推理系番組「謎解きLIVE 忍びの里殺人事件」(全2回)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

NHK 謎解きLIVE 忍びの里殺人事件
http://www.nhk.or.jp/nazo/index.html

 NHK BSプレミアムでの視聴です(放送日:2014年9月14日(日) 23:00〜23:59)。


※こちらもどうぞ→ 「謎解きLIVE」シリーズ内容・感想まとめ

■概要

>M県伊加市…忍者の里として知られる町で起きた不可解な殺人事件。いったい犯人は?ミステリー界の鬼才、麻耶雄嵩が仕掛けたトリックに小島慶子マキタスポーツそして人気ミステリー作家の綾辻行人が挑む。二夜連続!真剣勝負の推理バトル。データ放送でTVの前のあなたもご参加ください。昨夜の放送を見逃しても謎解き可能。見事トリックを見破れば放送の最後にニックネームが表示されるかも。今夜、全ての謎が明らかになる!

>【出演】綾辻行人小島慶子マキタスポーツ金澤美穂,椎名琴音,森岡龍,宮川浩明,小野麻亜矢,夛留見啓助,小川武倫,清水葉月,中村邦晃,眼鏡太郎,日栄洋祐,工藤時子,しのへけい子,よしのよしこ,麻耶雄嵩

>ミステリーを愛してやまない諸君に送る極上の2日間、謎解きLIVE。

>2013年12月の『英国式ウイークエンド殺人事件』は楽しんでいただけただろうか。事件後、当推理倶楽部CATSには全国の探偵諸君から、お叱りや励ましとともに日本の事件も取り上げてほしいとの声が大量に届けられた。しかし、ことミステリーについては目が高い諸君のこと、満足いただける事件を探すのは大変だった。
>喜んでほしい。諸君向きの事件が近々起こりそうだとCATSが誇る優秀な調査員から報告があったのだ。
>事件が起こりそうなのはM県伊加市。歴史的に“忍者”と“俳句”に縁がある街だ。事件発生確率が最大となるのが、9月13日と14日の土日。観光イベント中に何かが起こるに違いないという。
>諸君の推理力をいかんなく発揮してもらえるよう、当ホームページで捜査情報の随時公開を行う。事件の分析に役立ててほしい。
>また自説を披露したいという熱心な方向けに投稿機能も準備した。もっとも投稿は誰でもできるわけではない。プレミアムメンバー試験を受けてパスする必要がある。優秀な諸君には容易いはずだ。是非チャレンジしてほしい。
>もちろん放送を楽しむのに試験は必要ない。データ放送を使って簡単な操作で推理の結果を送信することができる。前回同様、成績優秀者は14日の放送の最後にニックネームを紹介させていただく予定だ。
>また、スタジオにCATSが誇る名探偵にお集まりいただき、推理のお手本を披露していただくつもりだ。ひとの推理に耳を傾けるのもまた名探偵への一歩である。
>諸君の健闘を祈る。

 視聴者参加型推理番組。去年(2013年)12月7日・8日に放送した「謎解きLIVE 英国式ウイークエンド殺人事件」に続く第二弾。推理作家「麻耶雄嵩」の書き下ろしストーリー。

 番組は、推理ドラマの内容を一定の区切りごとに放送して、その度にゲスト三人に推理をさせるというもの。また同様に視聴者もデータ放送で推理を送信できる。また番組終了後も公式サイト上で番組中に放送されなかった新しい手がかりが随時表示される。

第二夜

■あらすじ

 第二の殺人が発生。広小路愛希が絞殺されて池に放り込まれ、手にはカエルの置物が括りつけられていた。明らかに芭蕉の句「古池や蛙飛びこむ水の音」に見立てた殺人。


 以下事件の真相・犯人を書いてあります。


■犯人

 犯人は「西大手晴清」。

 晴清は「茅町一郎」と一人二役で参加していた。目的は広小路愛希を殺す事。愛希が実権を握っている建設会社に自分の親の会社が潰されたことを恨んでいた。

 第一の殺人は「人違い殺人」。晴清は公園内で黒忍者服に着替え、愛希を犯行現場で待ちぶせていて殺すつもりだった。イベントで黒忍者は自分(茅町一郎)と広小路愛希しかいないので、黒忍者を殺せばよい。ところが、現場に現われたのは、やはり黒忍者服の「丸山佐助」だったが、背後から絞殺したので人違いに気がつかなかった。その際「蓑が落ち、被害者のあだ名がサルトビ、そして犯行後雨が降った」ことで、偶然にも芭蕉の句に見立てた殺人のように見えてしまった。

 第二の殺人では、本命の愛希を間違いなく殺したが、その際、第一の殺人が「芭蕉の句に見立てた殺人」と誤解されていることを利用し、わざと今回もそう見えるようにした。


■推理の流れ

 公園の犯行現場に広小路愛希のタバコ3本が落ちていたのは、『愛希を犯人と思わせるため』にしては底が浅すぎる。これは、愛希がそこで長時間過ごしたように偽装するためと考えた方がよい。つまり殺人犯の真のターゲットは広小路愛希で、「イベント開始後すぐに殺し、アリバイ工作のため、愛希がその後も生きていたと偽装するつもりだった」と考えるべき。

 犯人は黒忍者服の愛希を殺すつもりだったが、間違えて(イベントにもぐりこんでいた)丸山佐助を殺した。それは犯人が「自分以外の黒忍者服を殺す=愛希を殺すこと」と思っていたから。つまり犯人はもう一人の黒忍者「茅町一郎」である。

★犯人は黒忍者服の謎の人物「茅町一郎」で確定。



 では「茅町一郎」とは誰か? 「茅町一郎」は人違いで殺したのだから、丸山佐助がサルトビというあだ名だったことを知るわけも無い。つまり第一の犯行が芭蕉の句に見立てた殺人、というのは間違い。単なる偶然だった。ところが、第二の殺人は明らかに見立て殺人。それは犯人が、第一・第二とも見立て殺人だと捜査陣に思わせたほうが都合が良かったから。

 第一の犯行が見立て殺人ならば、雨の降った後、蓑を置いていく、などの工作が必要だから、『犯行は雨が降った後』と思え、雨の後にアリバイが無い人が怪しい、と考えてしまう。つまり犯人がそう思わせたかった、ということは、逆に雨の後にアリバイがない人は容疑者から外れる。

★雨の後のアリバイが無い「広小路正樹」と「上林佑希」は犯人ではない。



 映像には9:11に黒忍者服が走っている姿が映っている。状況からしてこれは被害者丸山では無く「茅町一郎」。同じ時刻に別のカメラに黄色忍者服が映っている。これは場所から考えて「猪田才蔵」。

★猪田才蔵は「茅町一郎」(犯人)ではない。



 映像の黒忍者は立て看板と比較して身長が170センチ以上あると解る。つまり156センチの上林絵梨子ではない。

★上林絵梨子は「茅町一郎」(犯人)ではない。



 9/12 16:58のホテルの映像で、「茅町一郎」と広小路陽太が同時に映っている。

★広小路陽太は「茅町一郎」(犯人)ではない。



 消去法で「西大手晴清」しか残らない。つまり「茅町一郎」は「西大手晴清」。


■感想

 いやー、面白かったなぁ。

 去年放送の「英国式ウイークエンド殺人事件」(感想→ 第一夜 http://d.hatena.ne.jp/Perry-R/20131207/p5、第二夜 http://d.hatena.ne.jp/Perry-R/20131209/p1)は、「これから真相を解明します」と言い出した後に、「実はこれこれの事実がありまして」とか新証拠を出し始めたため、「こらぁぁ、証拠を後出しするなぁ」と激怒しましたが、今回は有名作家(らしい)が書いているのでフェアの一言。映像作品らしくカメラ映像(時刻表示つき)も推理の手がかりとしてフル活用させて、キチンと論理的に犯人が割り出せる作りになっていたのですんごく良かった。そうだよ、こういうのを求めていたんだよ!!、と興奮してしまった。2010年代に蘇った「安楽椅子探偵シリーズ」という趣のこの企画、NHKは年一回でいいので、ずーっと続けてほしいです。