感想:NHK番組「幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー」(BSプレミアム版)『File-12』(2015年3月25日(水)放送)

 NHK番組「幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー」(BSプレミアム版)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■幻解!超常ファイル ダークサイド・ミステリー - NHK
http://www4.nhk.or.jp/darkside/

 NHK BSプレミアムでの視聴です。(放送日:2015年3月25日(水) 22:00〜23:00)。


■概要

http://www4.nhk.or.jp/darkside/26/
>UFO、ネッシー、雪男、予言&占い、心霊現象、超古代文明、妖怪、吸血鬼、魔女…。闇の魅力がもつ妖しげな幻に対して、「今、何がどこまでわかっているのか?」を徹底検証!そこから浮かぶのは、自然の神秘、私たちの脳や心の不思議なメカニズム、社会のからくり、昔の人の驚くべき技術と想像力…。ダークサイドの向こうの“本物の不思議”をワクワクしながら楽しんでいただく、NHKならではの超常現象ガチンコ検証番組!


出演者 栗山千明 (くりやまちあき)

テーマ曲: 志方あきこ
オープニング曲“Arcadiaアルカディア)”
エンディング曲“Leyre(レイレ)”
アルバム名/ “Turaida(トゥライダ)”

語り: 中田譲治(声優、俳優、ナレーター)
代表作 『巌窟王』(モンテ・クリスト伯爵)、『ケロロ軍曹』(ギロロ伍長)、『HELLSING』(アーカード)、『Fate/Zero』(言峰綺礼)、『劇場版 空の境界』(荒耶宗蓮)など

『File-12』


■内容

あなたにも幽霊が見える!?&パワースポットの真実


幽霊はホントは「癒やし」?本物か偽物か?世界最初の「心霊写真裁判」の判決は?最新「幽霊の再現実験」とは?幽霊の正体に迫る!/東京パワースポットの知られざる裏話!


▽「幽霊は怖くてイヤ!」という人にオススメ。この番組を見れば幽霊が面白くなります!幽霊はもともと「癒やし」の対象だった?ホンモノかニセモノか?世界最初の「心霊写真裁判」の判決は?最新研究「幽霊の再現実験」とは?幽霊の正体に多角的に迫る! ▽某番組で「謎」とされた最新超常映像の正体を徹底検証! ▽東京パワースポットの知られざる裏話。悲劇の少女がなぜ「恋愛成就の神様」に?日本人の聖地ブームの謎に迫る!

1.幽霊テーマその一 心霊写真

 私たちは普通幽霊を怖いものと考えている。しかし11世紀頃のヨーロッパて描かれた、史上初の「幽霊画」を見てみると、描かれている幽霊は生きている人間と全く変わらない姿。当時の宗教観では、死んだ人はまず「煉獄」という場所に行き、天国・地獄行きまで待機する。幽霊は親しい人に「ミサを上げて私が天国にいけるようにしてください」とお願いするために出てくるので、生前と変わらない姿で描かれた。


 ところが15世紀頃から死者のイメージは一変、ドクロ姿で人に襲いかかる恐ろしい物に変わる。当時のヨーロッパでは、ペストの流行や百年戦争などですさまじい死者が発生し、死体はろくに埋葬もされず放置されていたという。死者は「次に死ぬのはお前だ」と語ってくる恐ろしい物になったのである。幽霊のイメージもこうして変化していった。


 日本でも平安時代の「今昔物語」に出てくる幽霊は、人の姿と全く変わらない。ところが江戸時代になると、恐ろしい顔つき・足が無い・人をたたる、など恐怖の存在に変化している。幽霊観は洋の東西で変わらないらしい。


 18世紀になると幽霊観はさらに変化した。18世紀末フランスでは、なんと幽霊を見世物にするイベント「ファンタスマゴリア」が大ヒットした。これは当時の最先端テクノロジーの幻灯機で霧などに幽霊の姿を映し出すもので、これがもう大流行り。


 さらに19世紀アメリカで登場したのが「心霊写真」。写真家ウィリアム・H・マムラーは1861年頃から「心霊写真撮影専門の写真家」として活動した。マムラーが撮影すると、死んだ母親や妻や夫の写真が写る、というので、通常の料金の5倍にも関わらず予約は三ヶ月待ちの大繁盛だったという(1871年には故リンカーン大統領の心霊写真を撮影している)。1869年、マムラーは『インチキ心霊写真で不当に儲けている』として詐欺罪で訴えられたが、裁判では無罪になった。裁判長は多分トリックだろうとしつつも、彼を擁護した顧客たちに配慮したらしい。もしマムラーが単なる詐欺師となれば、彼の心霊写真で癒された顧客たちが救われない、と判断した模様。


 [ゲストとの対談]このように、かつては心霊写真は恐ろしいものではなかった。それが変化したのはおそらく1960年代頃からのインスタントカメラの普及。別に親族と写りたいと思ったわけでも無いのに、何か変な物が写っていれば、得体が知れない、だから恐ろしい、となり、心霊写真=恐怖、となっていったのだろう。人が何故心霊写真に惹かれるのかと言えば、やはり未知の物を解明したいという気持ちからではないか。



2.幽霊テーマその二 幽霊の正体を科学的に調査

1)「幽霊を感じる実験!」〜脳の働きが原因?〜

 2014年11月。スイス工科大学は幽霊の「気配」について実験した。被験者が手でアームを前に押すと、それに対応して対象者の背中を後ろから押す、という装置を作る。そして目隠し・耳栓で感覚を遮断。まず「押すと即座に反応」と設定した場合は、被験者は『自分が押している』と感じる。しかし背中を押すタイミングを0.5秒遅らせるようにすると、機械が押していると解っていても『何か別物が背中を押している』『気配を感じる』と訴えたという。つまり幽霊とは脳の機能の不完全さで感じるものなのではないか。


2)幽霊環境を再現! 〜外部からの刺激が原因?〜

 幽霊屋敷には低周波が発生しているとか電磁波が流れているとか言われる。2006年にイギリスの心理学者が実験室の中に「白いカーテンに囲われた部屋に低周波や電磁波を流してある」という環境で幽霊を感じるかどうか調べてみたところ、幽霊を見たとか異常体験を訴える人が続出した。もっとも電磁波などを流していなくても同じ結果が出たので、何故人が異常体験をするのかについてはまだ研究中。


3)幽霊はあなたの頭の中にいる!? 〜暗示が原因?〜

 イギリスの心理学者は幽霊は人が暗示で作り出したものだと主張する。1970年代、オカルト雑誌の編集者が、「この場所には過去にこんな話が…」という全くでっち上げの幽霊話を流布させたところ、以後、「幽霊を見た」と訴える人が続出したという。つまり暗示によって見たと思ってしまったのであろう。



 [ゲストとの対談]人は何故幽霊を見るのか。それは「人間は顔に敏感」「恐怖にはすばやく過剰に反応する」の二点が原因だと思われる。まず有名な話だが、人は木の幹とかボウリングの玉とかコンセントの差込口とか、明らかに顔ではなくても、「なんとなく顔に見えてしまう」事がある。それは他者との生活の中で他人の表情を読むことが重要だったから、顔には敏感になっている。また、恐怖には即座に過剰に対応する。『何かがこっちに飛んで来た!』とかいう状況では危険だからすばやく対応しなくてはいけない。「未知の物」も恐怖の対象だから、過剰に対応したほうが生き残りやすい。ということで「人は顔に敏感→何かがなんとなく顔に見えてしまった→未知の物→恐怖→幽霊だ!」と流れで幽霊を見てしまうと思われる。



3.世界の怪奇映像

・動画。2015年1月。アメリカ・マサチューセッツ州。夜空に浮かぶ巨大な光の玉の中から、少し小さな光が次々と現われ一直線に横に並んだ。UFO母船と、そこから飛び出してきた小型UFOか!?

 おそらくフェイク映像。ズームしているのに背景の解像度が変わらないのは変。固定の写真を背景に作ったインチキ動画だろう。


・動画。2008年イギリス。父親がビデオカメラで子供たちを撮影していたところ、木に止まっていた「羽の生えた小型の虫のようなもの」が飛び立つシーンに遭遇。妖精か!? はたまた未知の人型昆虫か!?

 おそらくフェイク映像。コマ送りすると、羽が四枚とも止まって見えるシーンが有るが、家庭用のカメラには羽がぶれないように撮影するほどの性能は無い。また飛び立つ時の音がハッキリしすぎている。印象を強くするために音を強めに入れたのだろう。



4.パワースポット

 近年雑誌では「パワースポット」が大流行。しかし十数年前に出来た「柴又の寅さんの銅像の左足をなでると金運アップ」とか、ホントかよと思うようなものも多い。ということでパワースポットを調べてみました。


 大円寺。縁結びで有名。「お七地蔵」がある。有名な「火事のときにあった男性に再会したいので自宅に放火し、放火の罪で火あぶりになった」あの「八百屋お七」の地蔵である。言い伝えによれば、その男性はお七を弔うため僧侶になったが、やがてお七が「貴方のおかげで成仏できました」と伝えてきたという。つまり最終的にはハッピーエンドなので、縁結び、となったらしい。


 新田神社。新田義貞の息子・新田義興(よしおき)が怨霊となったため、鎮めるために作られた。ところがこの武士の守り神的な場所に、江戸時代庶民が大殺到。仕掛け人はあの平賀源内。神社で「矢のセット」を売るため、フィクションで「幽霊の義興がピンチになった自分の弟を矢で助ける」という劇を書いて宣伝したという。実のところ、江戸時代の昔からパワースポットと言われるものは、仕掛け人がこれ宣伝につとめていた。そういう人たちを「御師(おし)」という。つまり「最近のパワースポットはマスコミが宣伝しているから胡散臭いけど、江戸時代から伝わっているような場所なら大丈夫でしょ?」という考えは通用しません。


 ということで、パワースポットで効果が!とかいう宣伝文句を見たら、うかつに飛びつかずにちょっと考えてみましょうね。


5.有名人の名言

 アルバート・アインシュタイン(物理学者)

 謎に挑み続けることの素晴らしさを語った言葉。
「重要なことは、疑問をやめないこと。探究心は、それ自身に存在の意味を持っている」
 
 
■感想

 今回は派手なネタはなく、学術的(?)なテーマの回でしたが、これはこれで地味に面白いので良しとします。


★蛇足

>▽某番組で「謎」とされた最新超常映像の正体を徹底検証!

 某番組とは何で、話題になったのはどちらの映像か知りませんが、「あぁ、これ作り物ですね」ときっぱり断言させてしまうNHKも意地が悪い。