感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン4」第12話「腫瘍」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン4」(全24話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン4
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s4/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第12話 腫瘍 LEONARD BETTS


■あらすじ

EP12 腫瘍
救急看護士レナード・ベッツが交通事故で頭部と胴体を切断されて死亡した。遺体は病院に安置されたがその晩、胴体が消失。さらに彼は6年前に死んだ男だったと判明する。

 お題は「特異体質(再生能力)」。


 救急隊員のレナード・ベッツは、救急車の事故で首が切断され死んでしまう。ところが、ベッツの死体が何者かに安置所から盗まれる。モルダーがベッツの家を調べると、本人が戻ってきたとしか思えない痕跡が残っていた。


 一方、スカリーは残されたベッツの頭を調べ、脳が重度のガンに犯され、本来なら生きていたはずが無い事を知る。その後ベッツが別人を名乗り五体満足で生きていることが判明し、モルダーはベッツがガンが普通の状態で、さらにミミズのように肉体の一部を失っても自由に再生できる、進化した人間ではと考える。


 ベッツは体全体がガンであるだけでなく、ガン患者のガン細胞を食料にしており、ガンに侵された人間を見分ける力があった。ベッツは今までは病院で廃棄されたガン組織を手に入れていたが、モルダーたちに追われ仕方なく、見つけたがん患者を殺して組織を奪い始める。やがてスカリーはベッツに襲われるが、心臓マッサージ用の電気ショックで撃退し、その後ベッツは死んだ。


 最後。夜中に就寝中のスカリーが酷い咳に襲われて目覚め、鼻血を出すシーンで〆。



監督 : キム・マナーズ
脚本 : ヴィンス・ギリガン&ジョン・シバン&フランク・スポトニッツ


■感想

 X-ファイルでは定番の突然変異した人間との対決エピソード。頭が吹き飛んだ人間が生きていた!?という衝撃的な出だしから真相にたどり着くまでの過程が、なかなか見ごたえが有った。


 今回のメインキャラ・ベッツは、全身がガン細胞で構成されており、例え頭を失っても問題なく歩き回り、すぐさま失った箇所を再生してしまう、という超人である。スカリーに言わせると、もうそこまでいくと人間ではないとのことだが、確かに脳も無いのに問題なく行動できるという時点で人間とは言えまい。脳が無いのにどこで考えて体をコントロールしていたのだろうか。


 今回のエピソードの面白いところは、少なくとも前半は「ベッツは犯罪者では無い」ところである。この種の突然変異者が主役のエピソードは、奇怪な事件が発生し、それがモルダーたちの捜査の結果、超常の力による犯罪と判明する、というのが定番である。


 ところが今回の場合は、モルダーたちはベッツの死体「盗難」事件を調べるうちに、ベッツの異常な能力に気が付くが、ベッツは異常なキャラではあったものの、反社会的な行為をしていたわけでもなく、それどころか救急隊員としての働き振りを表彰されたりしている。しかし、やがてベッツは死んだはずの自分が生きていることに気が付いた知り合いを殺さざるをえなくなり、官憲に追い回される身分に転落する。これはベッツ側からの視点に切り替えて「超人類が一般社会から排斥される物語」という物が描けそうな設定である。


 終盤、スカリーを襲ったベッツが「必要なんだ、許してくれ」と語りかけるシーンで、スカリーもまた手遅れのガンであることが暗示され、鼻血で証拠が追加される。一話完結が基本のX-ファイルとしては珍しい引きとなった。