感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン4」第22話「哀歌」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン4」(全24話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン4
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s4/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第22話 哀歌 ELEGY


■あらすじ

EP22 哀歌
同じ手口の殺人事件が3件発生した。モルダーは、事件の直前に何かを訴えようとしている被害者の姿を幻視した人々がいることを知る。スカリーは第4の被害者を幻視する。

 お題は「霊視」。


 ボーリング場の主人が、深夜レーンの機械の中で首を切られた女性の死体を見つける。慌てて外に飛び出すと、その女性が道端で死んでおり、レーンの死体の方は消えうせていた。


 近辺で既に同様の殺人が2件発生しており、被害者がいずれも似ていることから、警察は同一犯による連続殺人だと見当をつける。モルダーはレーンの床に「She is Me(彼女は私)」と書かれた跡を発見する。さらに同じ内容の電話が精神系の治療施設からかかってきたことを知り、施設を訪ね、ハロルドという自閉症患者に行き着く。直後、スカリーも首を切られた女性の姿と「She is Me」という文字の幻を見るが、一瞬で消える。スカリーが見た女性は連続殺人の四番目の犠牲者だった。


 モルダーたちはハロルドを一連の殺人の容疑者と考え始める。やがてボーリング場の主人が心臓発作で死に、ハロルドがそれを予期していたらしいことがわかる。モルダーは「死が近づいている人間は、死の世界に近いために、霊が見えるようになるのではないか」という仮説を立てる。ボーリング場の主人がレーンで見たのは被害者の生霊で、それは彼が発作による死が迫っていたからだった。そしてハロルドが主人の死を予期していたのは、彼の生霊を見たからに違いない。つまりハロルドにも何らかの形で死が迫っているはずである。


 やがて、スカリーは施設の女性看護師イネスが連続殺人の犯人だったと突き止め逮捕する。直後ハロルドも原因不明のまま急死する。スカリーはモルダーに、自分も犠牲者の生霊を目撃したことを告白し、モルダーは絶句する。スカリーは一人で立ち去ろうとするが、車のバックミラーにはハロルドの生霊が写り込んでいた。



監督 : ジェームズ・チャールストン
脚本 : ジョン・シバン


■感想

 評価は×。


 連続猟奇殺人に心霊系の要素を絡めたエピソードだが、今回の主題は事件の真相解明や犯人逮捕ではなく、不治の病に侵されたスカリーの不安がメインテーマとなっている。スカリーのガンを正面から描いた話としては、14話「メメント・モリ」以来である。


 本エピソードの超常現象は「死期が迫った人間は、死の世界に近いために心霊現象を体験する」というもので、安直極まりないが、そのソンプルさ故に却ってそれらしさも感じられ、本当にありそうという、という気もしてくる。実際に起きた超常的エピソードをテーマにした番組「 世にも不思議な物語」で扱われていそうな雰囲気がある。


 本エピソードでは、この設定を使うことで、死病に侵されたスカリーに繰り返し幽霊などの心霊現象を体験させ、気丈なスカリーの死への不安を巧みに描写してみせた。鏡に青白い顔の人間が映りこみ、慌てて振り返ると誰もいない、というのは恐怖モノの定番演出だが、このエピソードでは効果的に使われていたといえる。


 しかし、その反面、今回モルダーたちが担当した連続殺人事件については、シナリオが上手く練りこまれておらず、そのため全体の評価を引き下げてしまっていた。まず、冒頭から何回も使われた「She is Me」という言葉は、実に思わせぶりだが、何の意味が有ったのかは結局最後まで説明されないままで終わってしまった。またハロルドが、事件の手がかりとして、この言葉を警察に電話で伝えたという行動にも同様に意味は無かった。


 そもそも、ハロルドが自閉症患者であるという設定に必然性が無く、何故このような人物を今回のキーパーソンにしたのか首をひねらざるを得ない。同じ様なキャラクターが登場したシーズン1・第23話「ローランド」では、ゲストキャラのローランドの設定が、事件の真相と密接に関係していたのとは対照的である。


 真犯人のイネスが何故連続殺人に走ったのか、何故被害者の指輪を左手から右手に移したのか、という点も放置されたままで終わっていた。今回は事件解決はあくまでサブの要素だとはいえ、いい加減に作りすぎという感が否めない。さらに言えば、ハロルドに対するイネスの虐待の描写も見ていて不愉快極まりなかった。


 今回は、スカリーの病気がメインテーマゆえに、モルダーのスカリーへの気遣いが目立った。特に最後の「君が恐れているものは……、僕にとっても怖いんだよ」と搾り出すように言うシーンが印象的だった。