感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン4」第24話(最終回)「ゲッセマネ」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン4」(全24話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン4
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s4/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第24話(最終回) ゲッセマネ GETHSEMANE

■あらすじ

EP24 ゲッセマネ
カナダで地形の測量をしていたチームが、山中で氷結している地球外生命体らしき物を確認した。モルダーはこの標本を本物と証明し、その存在を世間に公表しようと奔走する。

 お題は「地球外生命体、政府の陰謀」。


 スカリーの回想形式で物語は進む。


 スカリーのガンは既に血液に転移し、余命幾許も無いところまで進行していた。一方、モルダーはカナダの高山の氷の中から地球外生物の死体が見つかった、という情報を得る。200年前の氷河の中に「グレイ」の様な生物が閉じ込められているらしい。モルダーは現地に飛び、採掘に当たっていたメンバーは何者かに襲撃され壊滅状態となっていることを知るが、地球外生命体の死体は隠されていて無事だった。モルダーは死体をワシントンに持ち帰って解剖を行い、ついに地球外生命体の確実な証拠を掴んだと確信する。


 一方、スカリーは、科学者に生物の死体周辺の氷の分析を依頼していたが、その氷が謎の男に持ち去られる。スカリーは、その犯人が国防総省の人間クリッチュガウだと突き止め逮捕する。観念したクリッチュガウは、モルダーたちに「UFO」「地球外生命体」云々は、総て国防総省が作り上げたウソだと告白する。


 軍産複合体は、自分たちが行なっている悪辣な行為から国民の目をそらせるため、より派手な「宇宙人」云々の話題を過去何十年もでっち上げてきたという。そして、今回モルダーが見つけた死体も、もちろん彼らが捏造したものだと説明する。政府はモルダーに、サマンサのことや父親の陰謀への加担など、ニセ情報を巧みに信じ込ませてきたという。クリッチュガウは、長い間軍の宣伝部門でニセ情報を発信し続けてきたが、息子が湾岸戦争(1991年)(※このエピソードは1997年放映)で病気にかかったことで、ついに軍のやり方についていけなくなったらしい。


 クリッチュガウは「宇宙人」の死体がニセモノだとばれないように、今頃軍が持ち去っているはずだと予言し、モルダーが調べてみると、その通り死体は消えうせていた。


 最後、スカリーが「モルダーは真実を知って、絶望した末に自殺した」と口にするところで終了。シーズン5へと続く。



監督 : R.W.グッドウィン
脚本 : クリス・カーター


■感想

 評価は◎。


 X-ファイルの王道の「宇宙人+政府の陰謀」エピソードで、シーズン4の最後を飾る物だけに、充実した内容で、面白さも格別だった。


 今回は、スモーキング・マンたちの秘密組織やその陰謀は登場せず、宇宙人関係の情報を追い求めるモルダーが、苦労の末ついに証拠(宇宙人の死体)を手に入れる、という、シーズン1の頃を思わせる「UFO特番」ノリとなっている。どことなく、シーズン1最終回「終章<三角フラスコ>」を髣髴とさせる展開は、オカルト物好きにはたまらないものがあった。


 前半のクライマックスの宇宙人解剖シーンでは、1990年代に真偽が話題になった「異星人解剖フィルム」とそっくり同じ構図になっているのにニヤリとさせられた。具体的には、グレイ型宇宙人を医者が解剖していくのを、カメラが死体の左手から映している、というあたりがそのままである。スタッフはこのビデオがお気に入りらしく、シーズン3・第9話「二世」、同20話「執筆」に続いてのネタ元としている。


 しかし、UFO特番ノリが後半は一転、「宇宙人云々は全て政府の流したウソ」という、「政府が国民に何かを隠蔽している」型の都市伝説系の話に移行してしまうのには意表を付かれる想いだった。クリッチュガウは、氷河内の宇宙人死体の捏造の証拠として、氷に小さな穴を空けて細工した云々という説明をする。モルダー自身はその穴を確認してはいないものの、採掘チームのメンバーが氷を切り出す際に穴を見つけて首をひねるシーンが有り、このあたりの細かい描写が後から効いてきて感心させられた。


 スカリーは、クリッチュガウの話を信じる根拠として、「モルダーを信用させるために私はガンを発病させられた」と言うのだが、モルダーはそれを聞いて居たたまれなかったのではあるまいか。あそこでモルダーを非難しなかったスカリーはどこまでも人間が出来ている、と思わずにはいられない。


 冒頭、1972年11月20日にボストン大学で開催されたという「NASAシンポジウム」の映像が流される。これはフィクションでは無く、実際に行なわれた討論会の記録映像である。「Life Beyond Earth and the Mind of Man(地球と人間の心を超えた生命)」というタイトルで、本当に地球外生命体の存在に関して議論が行なわれた。参加者は、

カール・セーガン 天文学者
フィリップ・モリソン(原爆開発計画『マンハッタン計画』に参加した物理学者)
アシュレイ・モンターギュ(人類学者)

といった面々。「コスモス」で有名になったカール・セーガンの若き日の姿が確認できる。


■一言メモ

 サブタイトル「ゲッセマネ」とは、イスラエルの地名で、キリスト教で、イエス・キリストがユダの裏切にあったとされる場所。モルダーが今まで信じてきた全てに裏切られた、という意味を込めているのだと思われる。