感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン5」第3話「アンユージュアル・サスペクツ」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン5」(全20話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン5
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s5/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第3話 アンユージュアル・サスペクツ UNUSUAL SUSPECTS

■あらすじ

 お題は「政府の陰謀」。


 1989年5月。警察がとある倉庫に踏み込むと、素っ裸で意識不明で倒れているモルダーと、三人の男(ローン・ガンメン)が居た。捕まったうちの一人、バイヤースは警察の取調べで経緯を語る。


 バイヤースは連邦通信委員会の役人で、仕事で来ていたコンピューター見本市で美女と出会い、声をかける。彼女は「ホリー・モデスキー」という名で、昔付き合っていた男に3歳の娘スザンヌを誘拐されたため、探しに来たという。男の手がかりがアーパネット(国防総省のネットワーク)にあるというので、バイヤースがアクセスしてみると、なんと国防総省の機密データベースに繋がってしまい、「スザンヌ」という名前で暗号化されたファイルがあった。しかも会場にホリーが付き合っていた男(実はモルダー)が現われる。


 バイヤースは解読のため、店を出していたフロハイキーという男に協力を求める。やがてモルダーはFBI捜査官と判明し、さらにホリーは姿を消す。フロハイキーはハッカーのラングリーに声をかけFBIのデータベースに侵入させる。その結果、ホリーは本名「スザンヌ・モデスキー」という指名手配犯で、勤めていた軍の研究所を破壊し兵士を殺した後、逃走中だと解る。さらにスザンヌは精神を病んでいるとも記されていた。


 ところが、そこに当のスザンヌが現われ、全ては政府の陰謀だと主張した。政府は新開発の毒ガスを薬と偽ってばらまき、国民相手に人体実験を計画しているのだという。さらに、どこのホテルにでもある聖書は政府の監視装置で、ケネディを暗殺したのも政府だという。暗号化ファイルを解読すると、それを裏付けるような内容が確認できた。しかもスザンヌの歯には小型の発信機が仕込まれていた。


 スザンヌと三人は、解読内容を元に、毒ガスが隠されているという倉庫に忍び込むが、そこで追ってきたモルダーと政府のエージェントの撃ち合いになり、モルダーはガスを吸って昏倒してしまう。スザンヌはエージェントを撃ち殺すが、さらにそこに謎の一団が現れ(リーダーはミスターX)、証拠を総て持ち去ってしまう。その直後警察が踏み込んできたのだった。


 警察は当然バイヤースの言う事を信じないが、モルダーの証言があって三人は無罪放免となる。三人はスザンヌと再会するが、その目の前でスザンヌは謎の男たち(ミスターXの一味)に拉致され、そのまま姿を消した。モルダーは、スザンヌが行方不明のままなのに、指名手配が取り消されたことに困惑していた。三人はモルダー相手に、総ての真相(政府の陰謀云々)をこんこんと語り始める。おしまい。



監督 : キム・マナーズ
脚本 : ヴィンス・ギリガン


■感想

 評価は○。


 モルダーのオタク仲間である「ローン・ガンメン」の三人を主役にした異色エピソードで、スカリーは全く登場しない。基本的には、X-ファイルでおなじみの「政府が国民を実験台にしている」型の都市伝説系エピソードだが、深刻な暗さは無く、どことなくユーモラスで、『三人組の大冒険』とでも言いたくなる展開となっているのが楽しい。


 「現在」では、笑えるくらいに「政府の陰謀」を信じ込んでいる三人が、どうやって誕生したかのルーツを明かす愉快な話で、三人が、最初はスザンヌの言う事を「そんなバカな(笑)」という冷ややかな目でみていたのに、暗号ファイル、スザンヌの歯の発信機、毒ガス、ミスターX登場、スザンヌ拉致、という怒涛の体験で、すっかり洗脳(?)されてしまう様が楽しく描かれている。陰謀自体は、政府の毒ガス実験だの濡れ衣での指名手配だのと結構ダークなのだが、「ホテルに備え付けの聖書は実は政府の監視装置だ」というトンデモ主張や、ガスにやられて「宇宙人が〜」とうなされるモルダーの姿などを挟み込んできているため、全くシリアス感が無い。愉快な三人が主役の話なら、このくらいのノリがピッタリである。


 サブタイトル「UNUSUAL SUSPECTS」は、UNのない「USUAL SUSPECT」が『容疑者としていつも名前が挙がる人』という意味なので、強引に訳するなら「前科の無い、素人の容疑者」といったところだろうか。これが無実の罪で警察に捕まってしまった三人組の事を表しているのは間違い無い。もっとも、真の意味合いは、1995年のヒット映画「ユージュアル・サスペクツ(USUAL SUSPECTS)」のパロディ、ということだと思われる(このエピソードの放送は1997年11月)。警察に捕まった容疑者が、過去の事を回想形式で語りだす、という辺りがパロディのつもりなのではなかろうか。


 途中、ラングリーが、薄暗い部屋で、数人を相手とギャンブルをしていると思わせるシーンがある。最初はラングリーが意外なワルだと錯覚させるが、カメラがひいて見ると机の上にドラゴンなどの人形が置いてあるのが解る。つまり、これはファンタジー系TRPGのプレイ中で、架空世界の中のギャンブルを開催中だった、というオチだったわけである。この落差が、いかにも三人組のエピソードらしくて楽しい。


 モルダーが携帯電話を使うシーンがあるが、1989年という事でまだ電話が進歩しておらず、長さが25センチくらいあって、さらに10センチくらいのアンテナが飛び出している電話なのが今からみると(というか放送された1997年時点でも)滑稽に見える。これも細かいギャグだろうか。


 バイヤースの同僚が見本市の際にパソコンでゲームを遊んでいる。これは、ナムコの「ディグダグ」である。


 シーズン4の最初で死んだミスターXが、それより過去のエピソードという事で再登場してくれているのが、サプライズで嬉しい。ところでミスターXが三人組に「JFKを暗殺したのはローン・ガンメンだ」と言い残して立ち去っていくのだが、どういう意味なのだろうか。これが三人組が「ローン・ガンメン」と名乗るきっかけになったらしいのだが、そもそもの「ローン・ガンメン」の意味が解らない……