感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン5」第4話「迂回」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン5」(全20話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン5
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s5/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。


第4話 迂回 DETOUR

■あらすじ

 お題は「未知の生物」。


 フロリダ州の深い森の中で、測量技師やハンターが何かの生物に襲われ行方不明となる。モルダーとスカリーは、FBIの研修のため同僚の車でフロリダの研修施設に向かっていたが、途中で事件の事を聞きつけ、研修参加を嫌がっていたモルダーは事件の捜査に協力する事にした。やがて森の近くの民家の住民が、赤い目を持つ透明の怪物に襲われるという事件も発生する。事件現場には人間ともケモノとも判別のつかない足跡が残っていた。

 モルダーたちは地元警察と共に森に乗り込むが、先導していた警官も行方不明となり、モルダーも何かに襲われる。やがてスカリーも地面の下にある穴の中に転落し、その中に行方不明者たちが瀕死の状態で閉じ込められているのを発見する。スカリーは穴の中で何かに出会い射殺するが、それは異様な姿をしていたが、それでも人間だった。

 モルダーたちは探しに来た同僚たちに助けられ、行方不明者も救出された。モルダーは穴の中に有った杭にラテン語で「地獄へ」と刻まれていた事から、襲撃者が450年前にヨーロッパから不死の泉を求めて上陸してきたスペインの探検家「ポンセ・デ・レオン」たちの成れの果てだと推測する。ポンセ・デ・レオンたちは450年の間に森に適応して透明化の力を会得したらしい。襲撃者は他にも居たはずだが、行方知れずのままだった。

 最後。モルダーは襲撃者たちは森に侵入した自分たちの命を今後も付け狙うのではないか、と気がつき、一人でモーテルで荷物を片付けているスカリーを慌てて迎えに行く。スカリーは無事で、二人はモーテルを離れるが、部屋のベッドの下には赤い目の何かが潜んでいた、というシーンで〆。


監督 : ブレット・ドゥーラー
脚本 : フランク・スポトニッツ


■感想

 評価は○。


 X-ファイルでは少数派の「未知の生物」系エピソード。モルダーたちが、深い森の中で未知の生物を追跡しているうち、いつの間にか立場が逆転して襲撃される側となる、というパニックホラー系の異色回で、それなりに面白かった。

 今回の怪異の対象は、森の中に暮らし、眼は赤く、透明化能力があり、人とも獣ともつかない足跡を残す、という謎めいた生物である。透明化と言っても、画面を見る限り保護色の様な物のようだが、森の中を人の輪郭の様なものだけがチラチラしながら走り去っていく場面などは「プレデター」を連想させた。木の幹や地面に突然二つの眼が現れて、ようやくそこに生物が居ると解る、というシーンなどはなかかなの不気味さをかもし出していた。

 今回のエピソードは、いつもとは異なり、モルダーたちがFBI捜査官らしいことはほぼ何もせず、ただ森の中で未知生物に襲撃されるだけ、という展開なのがかなり変わっている。どちらかというと、昭和によく放送されていた『探検隊が未知生物を求め秘境に乗り込む類のオカルト系特番』に近いものが有った。特に、モルダーたちが、熱源センサーを使って森の中を調べていると、怪しい影がモニターに映り、すぐさま必死で追いかけるものの、ついに見失ってしまう、という展開など、ほぼそのままである。アメリカにもそういう類の番組は有るのだろうか。

 事件の最後で、モルダーは未知生物は「若返りの泉の力で450年前から生きていた人間」と説明をつけるが、このオチはガッカリというより受け入れがたいものがあった。いくら長生きしたからと言って、ただの人間が森に順応して透明化(保護色)能力を身につけた、という設定はムリがありすぎである。どうせなら、太古から森の中にひっそりと生きていた、未発見の人類、という設定の方がマシである。

 さて、モルダーは巨大な切り株年表を見ながら、スカリーが射殺した相手は「ポンセ・デ・レオン」だったと語るが、日本人視聴者にはほぼ意味不明ではなかろうか。調べてみると、「フアン・ポンセ・デ・レオン」(Juan Ponde De Leon)は、16世紀のスペイン人探検家で、ヨーロッパ人で初めてフロリダを発見した人物とのことである。一説には、ポンセ・デ・レオンは若返りの泉を探しているうちにフロリダに到達したとのことで、実際にフロリダでは『若返りの泉』の水を売っているらしい(参考)。もっとも、ポンセ・デ・レオンはキューバで死んだことになっているので、モルダーの説明は史実を無視しており、同僚の「ありえない」という言葉の方がよほど正しそうだ。

 あと、今回はシーズン3・第22話「ビッグブルー」同様に、「モルダーとスカリーが怪物探し開始→夜に二人きりとなる→二人でたわいも無い話を延々とする」というシーンが有り興ざめだった。スカリーが負傷したモルダーを抱きかかえたり、「フリントストーン(=原始家族フリントストーン)」の好きなキャラを語り合ったり、モルダーのリクエストに応じてスカリーが歌を歌うシーンが有ったりするのだが、二人の恋愛模様を気にするファン向けの媚びたサービスの様に見えた。純粋(?)X-ファイルファンとしては、このようなシーンは不要だと思う。

 今回はモルダーのユーモアがなかなか冴えていた。本当ならモルダーたちはFBIの研修でチームワークを学ぶ事になっていたのだが、スカリーはモルダーが事件の捜査に加わりたがっているのを察し、「彼ら(同僚)にチームワークの講習には出られないと伝えておくわ」と呆れ顔で言う。するとモルダーは得意げに「うん、僕らに講習なんて必要ないよ。何も言わなくたって、ちゃんと分かり合っているじゃないか」と言うのである。もっともそれを聞いたスカリーは「ハァァァァァ」とため息をつく。ここのやり取りは笑ってしまった。


■一言メモ

 サブタイトルの「DETOUR」とは「迂回路」などの意味。邦題の意味が良くわからないのだが、それは英語タイトルのせいだったわけである。