感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン5」第7話「エミリー」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン5」(全20話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン5
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s5/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第7話 エミリー EMILY

■あらすじ


 お題は「異星人の地球侵略、政府の陰謀」。


 第6話「クリスマス・キャロル」の続編。モルダーはサンディエゴのスカリーの元に駆けつけた。モルダーは過去の体験(シーズン4の14話「メメント・モリ」)から、エミリーはスカリーが3年前にアブダクションされた際に取り出された卵子から作られた子供だと推測する。スカリーはエミリーを養子にしようとするが、手続きはなかなか進まななかった。


 やがてエミリーが高熱を出したため、スカリーたちは病院に連れて行くが、体が特異な腫瘍に犯されていて、医者も有効な手が打てない。モルダーは、今までのエミリーの持病(自己免疫性溶血性貧血)を治療していた医師コルドロンに助けを求めるが、コルドロンは新薬のデータを外には出せないと言って拒絶する。実はコルドロンやその仲間は異星人(自由に顔を変えられる緑の血の連中)だった。彼らはエミリーをモルモット扱いにして経過を見ているらしい。


 スカリーがエミリーの治療を続ける一方、モルダーはエミリーを生んだ女性を突き止めるが、なんと老人ホームの住人だった。コルドロンたちは、ホームに住む老女たちを若返らせては、本人の知らないうちに子供を出産させていた様だった。


 結局エミリーは助からず、コルドロンの研究データも、老人ホームの住人も消えてしまっていた。スカリーは葬式でエミリーの棺を開くと、中に入っていたのは砂だった。



監督 ヒーター・マークル
脚本 ヴィンス・ギリガン&ジョン・シバン&フランク・スポトニッツ


■感想

 評価は○。


 前回「クリスマス・キャロル」は、スカリーの死んだ姉からの電話から始まるスピリチュアル系のエピソードだったが、今回は一転しておなじみの「宇宙人の地球植民計画」に関連するエピソードとなっており、前後編で話の方向性が全く違う事に驚かされた。


 前回はスカリーが一人で事件の捜査にまい進しており、まるで普通の刑事ドラマのようだったが、今回はモルダーが合流して、周囲の人に「スカリーは誘拐されて卵子を採取されて云々」と真顔でまくしたてるなど、いつものX-ファイルの雰囲気が戻ってきて安心した。やはり、こういうモルダーのトンデモ発言がないとX-ファイルは成立しない、ということをしみじみと実感させられた。


 前述の通り、前回と今回の前後編は前半と後半でまるで雰囲気が違うが、そのおかげでストーリーに深刻な矛盾が発生している。前回スカリーにメリッサの声でかかってきた不可思議な電話について、後編では完全に無かった事にされており、何の謎解きも行なわれないのである。その結果「前後編のきっかけとなった出来事」が宙に浮いたままで放置されるという異常事態となってしまった。シナリオライターたちは、脱稿前に話の見直しをしなかったのだろうか。


 さらに、謎の電話というなら、今回もやはり変な描写がある。深夜にスカリーの下に無言電話がかかり、その発進元を辿るとエミリーが保護されていた施設で、電話のおかげでエミリーの発熱に気が付く、という下りがある。ところが、この電話をかけたのは誰だったのかについてもやはり明らかにならないまま終わる。この前後編は謎の電話を濫用しすぎである。


 とは言え、全体的には「異星人関連話に外れ無し」という事で、それなりには楽しめた。スカリーが『我が子』のエミリーの治療に尽くす一方、モルダーが別行動でコルドロンを追い回したり、老人ホームに潜入して瓶詰めの胎児(地球人と異星人のハイブリッド)を見つける、といった展開はなかなかの面白さだった。バリバリのキャリアウーマン的なキャラが、実は子供が欲しくて仕方なかった、というのは意外な一面を見せられた思いだった。


 前回スカリーと名コンビを組んだクレスギ刑事は、モルダーが到着してお役御免になったのかと思いきや、今回も登場してくれて嬉しかった。もっとも、うっかり異星人を撃ってしまい、血液中のレトロウイルスを浴びて昏倒する、という酷いことになってしまったが……、結構ハンサムだったのでゲストキャラで終わるには惜しい人物だったと思う。


 冒頭、モルダーがエミリーと打ち解けるために、頬を膨らませて「ミスター・ポテトヘッド」の顔まねをするのですが、モルダーの意外な一面を見せてもらった気がしました。