感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン5」第15話「旅人」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン5」(全20話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン5
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s5/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第15話 旅人 TRAVELERS

あらすじ

 お題は「人体実験、政府の陰謀」。


 過去、1990年11月。廃屋に立てこもっていたエドワード・スカーという男が保安官に射殺される事件が発生。スカーは死ぬ間際にモルダーの名前を呼ぶ。廃屋には内臓を抜き取られた奇怪な死体が有った。スカーは38年前の1952年に連続殺人犯として手配されていた。モルダーは当時スカーの捜査を担当した元FBI捜査官アーサー・デールズに会い、強引に当時の話を聞きだす。


 デールズの回想。1952年、アメリカでは赤狩り旋風が吹き荒れていた。デールズは国務省に勤めるスカーを共産党員として逮捕するが、その夜、スカーは留置所で自殺したと連絡を受けショックを受ける。ところが直後デールズはスカーが自宅近くまで戻ってきているのを目撃し、追いかけるものの取り逃がす。混乱するデールズだったが、やがて司法長官特別補佐のコーンから、事実を隠蔽するように命令される。


 直後デールズは若い頃のビル・モルダー(フォックスの父)に密かに呼び出され、真相を聞かされる。スカーや国務省の同僚の計三人は、政府に人体実験の対象にされ、二人は絶望して自殺していた。そして政府は口封じのため残ったスカーを共産主義者という汚名を着せ抹殺しようとしていた。スカーは自分を勝手に実験台にした政府に復讐しようと、次々と関係者を殺していく。デールズはスカーを助けようとするが、結局力及ばず、スカーは政府に捕らえられた。


 その後スカーがどうやって政府の手から逃げ出し、今まで生きていたのか、何故最後にビル・モルダーの名前を呼んだのか、デールズには知る由も無かった。政府内の、まだ良心が残っていた誰かが、政府の悪行の証拠としてスカーを逃がしたのかもしれない、と推測するのみだった。


 最後。過去の光景。ビル・モルダーがスカーに自動車を与えて逃がすシーンで〆。



監督 ビル・グラハム
脚本 ジョン・シバン&フランク・スポトニッツ


感想

 評価は○。


 過去回想の形で1950年代のX-ファイル事件が描かれるという異色編。モルダーの出番は数分、スカリーにいたっては出演シーンゼロ、という変化球のストーリーだったが、にもかかわらず面白さは抜群だった。


 政府に改造人間にされてしまったスカーが、どのような手術をされたのかは明確には描写されないが、どうやら食道にクモ的な生物を埋め込まれ、それが相手の口の中に入って、酸で内臓を溶かしてしまう、という物のようである。スカーが相手を押さえつけると、口の中からクモの様なものが這い出してきて人を襲うシーンは結構気持ち悪い。


 舞台が1950年代ということで、FBIの捜査官も司法省の役人もみなコート+ソフト帽で、デールズが何かというと強い酒をあおるなど、普段とは雰囲気がまるで違うが、これはこれで味があった。パソコンもネットも無い世界での怪奇物、というのは結構良い着眼点で、この設定で別シリーズを作れば良いと思ったくらいである。


 ところで、劇中でFBI長官エドガー・フーバー(とてつもない悪人面)は、デールズを呼び出し、共産主義の脅威に対抗する武器として、ナチスドイツの技術でも利用しなければならない、と力説していたのだが、スカーに施したような訳の解らない改造手術でどうやって共産主義に勝とうというのだろうか。アメリカ政府の考えは全く理解できない……


 この異色編の中で(資料の)X-ファイルの誕生秘話が描かれているのが興味深い。「未解決事件」のファイルをXに分類したのが始まりなのだが、何故Xかというと「Xが一番空いていたから」というわりと身も蓋もない理由だったりするのが、それはそれで面白い。


 若いデールズを演じたフレデリック・レーンが精悍な面構えで格好良く、この人の後にモルダーが出てくると間の抜けた顔に見えてしまった……、老デールズを演じたのはダレン・マクギャビン。この人は「事件記者コルチャック」という番組の主役で有名なのだが、このコルチャックも「新聞記者が吸血鬼やらゾンビに遭遇する」というタイプの番組で、アメリカではX-ファイルの先輩的位置づけとして有名。制作のクリス・カーターがラブコールして出てもらったという事らしい。

訂正(2017/04/22)

 以前に「ラストシーン。デールズに散々圧力をかけた横柄なコーンが、最後に何故か捕まえたスカーを逃がす、というオチがやたらと印象的だった。」などと書いていましたが、スカーを逃がしたのは若いころのモルダー父ビルでした。とんでもない勘違いでラストを誤解していました……、あらすじ・感想とも訂正いたしました。