NHK番組「ETV特集」の感想です。
（※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください）
■二十の顔を持つ男〜没後５０年 知られざる江戸川乱歩〜｜ETV特集
http://www.nhk.or.jp/etv21c/archive/150801.html
NHK Eテレでの視聴です(放送日：2015年8月1日(土) 23:00〜0:00)。
■番組内容
＞日本ミステリーの巨人、江戸川乱歩（１８９４−１９６５）が今年、没後５０年を迎えた。
＞１９２３（大正１２）年、緻密な暗号解読を軸とした『二銭銅貨』でデビュー。「日本初の本格探偵小説」と絶賛された。その後も怪奇幻想小説などが人気を集め、１９３６（昭和１１）年に執筆を始めた『怪人二十面相』シリーズは、子どもたちの間で大ブームとなった。戦後、新人ミステリー作家に贈る江戸川乱歩賞を創設するなど後進を支援し、「大乱歩」とたたえられた。しかし、そうした華やかな業績の陰で、乱歩の人生には常に秘められた苦悩と葛藤があった。
＞近年、乱歩が残した資料の整理分析と共に、新たな視点からの研究が進み、その知られざる姿が現れてきた。少年時代を過ごした名古屋は当時、急速な近代化が進み、孤独だった乱歩少年の心に複雑な陰影を刻み込んでいった。そして、今回初めて公開されたみずから撮影したフィルムには、乱歩の心情を映し出す映像が記録されていた。少年のころ『怪人二十面相』に出会い、ミステリー作家を志したという綾辻行人さんや、芥川賞や大江健三郎賞などを受賞した作家の中村文則さんらが、乱歩の苦悩の生涯を見つめ、作品世界を読み解いていく。
乱歩は1923年に暗号解読物「二銭銅貨」でデビュー。欧米の作品に匹敵する本格推理を書く新人として注目された。しかしその後アイデアが尽きて本格物が書けなくなり、1925年に「屋根裏の散歩者」で人間の内面を描き始める。そして1929年の「芋虫」以降『エログロ』と呼ばれる作風に転換し、以後エログロの第一人者となる。
1936年、2.26事件が発生。世の中の空気は急速に軍国化して行き、もうエログロを書ける時代では無くなっていった。そんな時乱歩は、今度は子供向け小説「怪人二十面相」を発表し、以後子供向け小説へと舵を切る。世の中が息苦しくなっていく中、せめて空想の中でも自由に、と「怪人二十面相」というアンチヒーローが活躍する物語を書いた。
しかし1939年、「芋虫」は戦争批判小説だと難癖を付けられ発禁に。さらにそもそも推理小説は欧米発のものだからけしからん、という理由で乱歩作品は総て絶版にされ、また編集者も上の顔色をうかがって乱歩に仕事を頼まなくなり、事実上作家としての仕事はなくなった。
1945年に太平洋戦争は終わり、乱歩は再び「怪人二十面相」シリーズを書き始めた。しかし戦後の世間の空気には自分の「本格物」のノリは合わないと感じており、作家としてよりプロデューサーとして活動するようになる。そして江戸川乱歩賞を設立し、俳句の世界に革命を起こした芭蕉になぞらえ、推理小説界の芭蕉を捜し求めた。そして松本清張に出会って、夢がかなったと語ったという。もっとも清張は、乱歩作品を「見世物小屋」の中の推理物だとして、自分は推理小説をリアリズムの世界に引っ張り出した云々と批判していた。
1965年乱歩没。
という乱歩の生涯を、当時の世相も含めて紹介しながら、その間に綾辻行人・中村文則、という二大作家に乱歩作品を語らせる、という構成。また「二銭銅貨」「屋根裏の散歩者」「芋虫」「怪人二十面相」「モルグ街の怪事件」などのあらすじを、影絵風のイラストとセットで渋い声の朗読で説明。時たまイメージシーンとして、仮面を被ったタキシード男（＝怪人二十面相）が街中を徘徊するシーンを挟み込んでいた。
■感想
7/30に放送した『「シリーズ・妖しい文学館」「あなたの知らない名探偵・明智小五郎と怪人二十面相の秘密」』(http://d.hatena.ne.jp/Perry-R/20150731/p6)と似た構成の作品。乱歩の生涯の紹介を軸に、イラスト付きの作品あらすじ説明、綾辻行人が乱歩の自宅「幻影城」を訪れる、など、構成がほぼ一緒で、どうみてもセットで作ってます。
ということで、目新しさは無かったのですが、中村文則が「自分も他人に対しては仮面を被って付き合うのに、作家としては隠していることを書いて表現してしまう、そのあたりが乱歩と同じ」とか熱く語るシーンがなかなか興味深いものが有りましたね。
