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感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン2」第19話「歪み」

X-ファイル シーズン2 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]

 ドラマ「X-ファイル シーズン2」(全25話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン2
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s2/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第19話 歪み DOD KALM

■あらすじ

EP19 歪み
駆逐艦の救命艇が発見された。乗組員はみな90歳以上の老人になっていた。捜査に向かったモルダーとスカリーだが、ふたりも老化していく事態となってしまい・・・。

 お題は「老化現象」。


 ノルウェー沖でアメリカの駆逐艦が消息不明となり、直後にその艦の救命ボートが発見されるが、乗員はみな90歳以上の老人のように老化しており、次々と死んでしまう。モルダーは、X-ファイルから、ノルウェー沖北緯65度の海域は、過去にも船の遭難が多発していることを知り、この場所に時空の歪(ひず)みが発生していると推測する。また海軍は駆逐艦で時空を歪める「フィラデルフィア実験」を行なっていたのかもしれない。モルダーはスキナーに報告する前に調査に向かうと言い出し、スカリーも異常な老化現象を解明するため同行する事にした。

 地元の漁師の間では、遭難場所は「空から巨大な石が落ちてくる」という伝説のある海域と恐れられ、近づくことも拒否していた。モルダーたちは何とか漁船を雇い、問題の駆逐艦にたどり着くが、船は何十年も経過したかのようにさび付き、乗員はミイラ化していた。しかも誰かが漁船を乗り逃げしたため、モルダーたちは置き去りになってしまう。やがてモルダーたちにも老化の兆候が現われる。

 スカリーの推理では、この海域のどこかに隕石が有り、金属製の船と反応して強力な磁気を発生させた結果、酸化反応が発生して体内に塩がたまり、それが細胞を破壊して老化のような現象を引き起こしているという。やがて海水を処理した水は汚染されていて老化を引き起こすが、下水処理施設の水は海水を使っていないので飲めば生きながらえると解る。しかし漁船の船長が下水施設に立てこもり、水を独占してしまった。モルダーたちは水も飲めないままどんどん老化してしまい、とうとう二人とも意識不明となる。最後、アメリカ軍が助けに来て、モルダーとスカリーが救出されなんとか助かる。問題の駆逐艦はさび付いて既に沈没していた。


監督 : ロブ・ボウマン
脚本 : ハワード・ゴードン&アレックス・ガンザ(原案 ハワード・ゴードン)


■感想

 評価は○。


 未知の原因で急速な老化が発生し、モルダーとスカリーもそれに巻き込まれるというSFホラーエピソードで、なかなか面白い。二人が閉鎖空間に閉じ込められ、外部からの助けが得られないまま危機に陥る、という展開は、シーズン1・第8話「」や第20話「」でもあったが、今回は具体的に戦う対象が無く、またじっとしているだけでどんどん死に近づいていく、というところに違いがある。二人が超常現象に対して、何も手を打てないまま助けを待つだけ、という展開は珍しいといえる。


 ノルウェー版のバミューダトライアングルとでも言うべき場所で、幽霊船と化した軍艦に閉じ込められ、時間の加速の様な現象に遭遇する、という展開は実に魅力的なのだが……、実はゆっくり考えると、結構つじつまの合わない話なのが解ってくる。


 スカリーは、当初老化現象の原因として「海に落ちた金属性の隕石と船が電極となり、海が巨大な電池と化した結果、放電が発生し、体内の遊離基の酸化反応が活発になり、その結果老いていく」という仮説を立てる。遊離基(別名:フリーラジカル)は、通常より電子が少ない原子であり、他の原子を酸化させる性質がある。そして現実にフリーラジカルが老化の原因という説が存在する。また金属が酸化される=錆びる、なので、船が急速に錆びていた事も説明が付く。つまりこの時点までは、結構理屈に有った説明をしている。


 ところが、途中でこの説は放り投げられ、実は飲料水に含まれている未知物質が触媒となって体内に塩化ナトリウム(=塩)が増え、その結果細胞が破壊されて老いたように見える、という話にすり替わってしまう。ここから「未知物質の入っていない水を確保しないと死ぬ」という展開につながるわけだが、おかげで「船が何故急速に錆びたのか」という点で説明がつかなくなってしまっているのが致命的な矛盾である。


 また、冒頭、モルダーは「ノルウェー沖に時空の歪みが有るらしい」とスカリーに説明しながら、そのあと唐突に話題を変え「軍がフィラデルフィア実験を継続してワームホールを作ろうとしていたらしい。この事件はワームホール実験の失敗かも」云々と言い出す。はっきり言って話の前半と後半が全くつながっていないのだが、シナリオライターはこの部分を読み返したのだろうか。


 さらに言えば、船内に潜んでいた密猟者オラフセンは、捕まった後にトロンハイム船長にに「話をしたいから縄を解け」と持ちかけた後、画面から消えてしまって二度と帰ってこない。トロンハイムと何か取引をしたのか、はたまたトロンハイムに殺されて海に放り込まれたのか、そのあたりの説明が無いまま、トロンハイムも死んでしまうのである。オラフセンはどこに行ったのか。


 そして、そもそもの話として、モルダーはノルウェーに出かける前に「スキナーに報告する前に一人で調べておきたい」と口にするのだが、つまりこれはFBIの仕事の一環だという事になる。FBIが大西洋の彼方のノルウェー沖の事件を捜査する、というのはあまりに無茶な話であろう。


 と、かように今回のエピソードは「雰囲気は素晴らしいが、細部は穴だらけ」の話であった。しかし頭を空っぽにして視聴すればそれなりに楽しい話なのも事実である。


■一言メモ:「DOD KALM」とは?

 今回のサブタイトル「DOD KALM」。これはファンサイトでも意味を書いている所がないので調べまくったのですが、どうやら『オランダ語』みたい。「DOD=死」「KALM=穏やかな」。なるほど、徐々に老いて死んでいく有様を示している、とすれば意味が通ります。いやー、ドイツ語とかノルウェー語とかラテン語とか調べまくって大変だった。

DODの意味
http://mymemory.translated.net/ja/%E3%82%AA%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%80%E8%AA%9E/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E/DOD

KALMの意味
http://mymemory.translated.net/ja/%E3%82%AA%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%80%E8%AA%9E/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E/KALM

■さらに一言

 このエピソード、1990年代のテレビ朝日での放送では、なぜかシーズン3の方に組み入れられて放送されました。何故?