感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン2」第20話「サーカス」

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 ドラマ「X-ファイル シーズン2」(全25話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてありますのでご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン2
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s2/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。

第20話 サーカス HUMBUG

■あらすじ

EP20 サーカス
連続殺人事件の新たな犠牲者はサーカスのワニ男。容疑者は全員サーカス芸人、全身入れ墨男やシャム双生児たちだった。 この事態にモルダーとスカリーのふたりは・・・。

 お題は「シャム双子」。


 フロリダのある町で、男が腹部の奇怪な傷が原因で死んでいた。モルダーたちは、同様の事件が過去28年間に全米各地で48件も発生していて、しかも全て未解決だと知り、捜査に向かう。その町はサーカス芸人が引退後に暮らしたり、シーズンオフをすごしたりするところだった。モルダーは、過去の殺人現場に類人猿の足跡の様なものが残っていたことから、サーカスの見世物として有名だった『上半身がサルで下半身が魚』というインチキの作り物で有名な「フィージー人魚」が実は現実に存在し、殺人を行なっているのでは、と考える。

 モルダーたちが町で過ごす間に、同じ手口の殺人が次々と発生し、モルダーたちは芸人たちを取り調べるが手がかりは得られない。実は、シャム双子で体を見世物にしていた元芸人ラニーの腹部に融合している弟レナードが犯人だった。レナードは、一定時間なら兄から離れて動き回ることが可能で、兄の体を嫌がり、別の人間にくっつこうとして狙うものの、当然無理でその度に失敗して相手を殺していた、というのが真相だった。

 モルダーたちはレナードを追うが、見失い、それ以降レナードは行方不明となる。また直後に兄のラニーも肝硬変で死んでしまう。実はレナードは、どんなものでも食べることがウリの芸人コナンドラムに食われたらしく、モルダーたちが必死でレナードたちを探している間に、コナンドラムは町から出て行く、というシーンで〆。

監督 : キム・マナーズ
脚本 : ダリン・モーガン


■感想

 評価は○。


 1990年代のテレビ朝日の地上波放送ではカットされたストーリー。

 『過去数十年も犯人不明の殺人事件が連続しており、モルダーたちの捜査の間にも次々と犠牲者が増えていく……』と、あらすじだけを見ると猟奇ホラーの様だが、実のところは暗さ皆無の「ブラック・コメディ」という異色なエピソード。モルダーたちは真面目に捜査しているものの、雰囲気は妙にゆるく、全編にコミカルさが漂う。


 登場するキャラクターは全員どこかしら普通では無く、
魚鱗癬で「ワニ男」だった最初の犠牲者ジェリー
・ホテルのオーナーで小人症のダット
・荷物運びでシャム双子のラニ
・脱出王で痛みを感じない芸人ドクター・ブロックヘッド
・ほぼ裸で暮らし、生で魚や虫を食べる「人間ピラニア」コナンドラム
・実は昔は「犬男ジムジム」だった多毛症の保安官ハミルトン
・醜い顔(らしい)珍品博物館の主人
と妙なキャラぞろいで、誰も彼も怪しいというより、モルダーたちとの会話などだけで一つのドラマになっている。


 また妙にとぼけたシーンが多く
・ジェリーの葬儀にドクター・ブロックヘッドが乱入して大騒ぎになり、椅子にモルダーとスカリーのみ取り残されて、モルダーがぽつりと「次の出し物は?」

・スカリーがドクター・ブロックヘッドを逮捕しようと対決したシーンで、ブロックヘッド「何の権限でそこまでするんだ!?」、スカリー「忘れたの? わたしたちはFBIなのよ」(手錠をかける)、ブロックヘッド(スカリーの口真似で)「忘れたの? 私は脱出のプロなのよ」(手錠をあっさり外して逃げる)

コナンドラムが夜中に犬を追いかけ回しているシーン、と思いきや、ダットの部屋に小切手を渡しにきただけだった
etc。


 このエピソードではモルダーは、馬鹿の役回りで、ちょっとしたことで「犯人はフィージー人魚だ!」と言い出してスカリーを呆れ返らせたり、ダットを何かと小馬鹿にするようなシーンがあったり。逆に、ダットからは「あんたみたいな顔つきでセンスの無いネクタイを締めているような人間はどうせFBIなんだろ?」と逆襲されたり、ブロックヘッドから「一生あんな顔で過ごすなんてゾッとするね」と言われたり。

 そして、モルダーたちが必死に探している殺人犯が、実は既にコナンドラムに食べられているのにそれに気がつかないまま、というトホホオチも楽しい。かなり変な話でしたが、にもかかわらず結構出来の良い話でした。

 ちなみに、劇中に登場した
・痛みを感じない男 ドクター・ブロックヘッド(ジム・ローズ)
・何でも食べてしまう入れ墨男 コナンドラムエニグマ
は、本物のサーカス芸人が出演していたとのこと。


■一言メモ

 サブタイトル「HUMBUG」とは「ペテン師」のこと。作中で語られるサーカス王バーナムは実在の人物で、その別名が「Humbug Barnum」だったことから来ている。


■さらに一言

 この話が日本の地上波で放送できなかったのは何故だったのですかね。なんとなくダメな気はするのですが、はっきりとは指摘できない……

・小さい人が出てくるから?
・シャム双子とか多毛症とかを見世物にしていた、という設定がアウトだから?
・自分の体に釘を打って耐える、という芸がグロいから?
・人間ピラニア芸人が虫を食べるシーンがキモいから?
・シャム双子の片割れが犯人という設定が生々しくてマズいから?