感想:映画「GODZILLA ゴジラ」(2014年:アメリカ)(2015年9月25日(金)放送)

GODZILLA ゴジラ[2014] Blu-ray2枚組

(※以下、話の結末まで書いてあります。ネタバレにご注意ください)

■金曜ロードシネマクラブ|日本テレビ
http://www.ntv.co.jp/kinro/index.html

 地上波・日本テレビ系で視聴(2015年9月25日(金) 21:00〜22:54)。


■概要

https://kinro.jointv.jp/lineup/150925

1954年に誕生した、日本が世界に誇る最強にして最恐の怪獣=ゴジラ。映画史に輝く名作の誕生60周年を記念して、ハリウッドが本気で挑んだ新しい「ゴジラ」を早くも地上波初放送!昨年5月の世界公開時、全世界興行収入No.1※を記録した世界的大ヒット作だ。(※2014年5月16日〜18日 Box Office Mojoより)


今回の敵は、核燃料をエネルギー源とする巨大生物・ムートー。アメリカを破壊しつくす2頭のムートーを倒すために、アメリカ海兵隊のフォードと、生物学者の芹沢博士、そしてゴジラが壮絶なバトルに挑む! 物語の中核を担うのは、フォードの父や妻との家族愛。戦いの中で描かれる壮大な人間ドラマから目が離せない!渡辺謙の熱演にも注目だ。


モスラキングギドラの出演がウワサされる続編は2018年公開予定。さらに来年には庵野秀明総監督(脚本兼)と樋口真嗣監督(特技監督兼)による日本発の「ゴジラ」も12年ぶりに復活が決定した。日米ゴジラ映画の新たな伝説の始まりを見逃すな!



監督 ギャレス・エドワーズ


フォード・ブロディ アーロン・テイラー=ジョンソン(小松史法)
芹沢猪四郎博士 渡辺謙
ジョー・ブロディ ブライアン・クランストン(原康義)

■あらすじ

 1999年、芹沢猪四郎博士は、フィリピンで巨大な生物の骨と、その中にあった二個の繭状のものを発見する。直後日本の原子力発電所で大事故が発生した。


 15年後。原発の周辺は立ち入り禁止区域となっていた。実は区域の中の放射線はもう無害なレベルになっており、芹沢博士たちが奇怪な繭状の物を調べていた。やがて繭から巨大な怪物「ムートー」が生まれると、どこかに飛び去る。


 太古、地球の放射線レベルが現在の10倍だった頃に生きていた巨大生物は、放射線レベルが低下すると、地球の核の放射線を求め地中に潜った。しかし1954年、人類はその生物「ゴジラ」を目覚めさせてしまう。1950年代に行なわれていた米ソの核実験は、実は実験では無くゴジラを殺すための攻撃だった。やがてゴジラを研究するための国際的な秘密組織「モナーク」が設立された。芹沢博士はモナークの一員だった。


 一方、ゴジラに寄生する生物「ムートー」も存在していた。ムートーはフィリピンで目覚めると、日本まで掘り進み原発を破壊すると、その放射線を吸い取っていた。モナークはムートーも研究していたが、ついにムートーが目覚めてしまったのだった。


 ムートーは太平洋を東に向い、ムートーを追ってきたゴジラとハワイで一戦交えるが、両者はそのまま消える。実はフィリピンで見つかった繭のもう一個はアメリカに保存されていたが、そちらからもムートーが目覚めていた。芹沢たちは、日本のムートーはオス、アメリカのムートーはメス、で、繁殖のため呼び合っていたと推測する。


 ゴジラとムートー二体はサンフランシスコで激突する。アメリカ軍は核爆弾を使おうとするが、放射線に引き付けられたムートーに爆弾を持ち去られてしまう。アメリカ軍の決死隊は爆弾を奪回すると海上に持ち出して、そこで爆発させる。ゴジラはムートーニ体に勝利し、核爆発にも無傷で、そのまま海に消えた。




■感想

 イマイチ。


 放射線を好む巨大昆虫怪獣が出現し、宿敵を倒すためゴジラもやってくる、というストーリー。



 公開時に好意的な評価を受けていたが、完全に期待外れ。画面の構成は見事で、背ビレだけ見えているゴジラが空母の下を潜り抜けていくシーンや、サンフランシスコで霧の中から巨大なゴジラがぬっと姿を現すシーン、など、観客をゾクゾクさせる構図が次々と現われ、監督の実力を感じさせる。



 しかしその一方でストーリーは盛り上がりに乏しい。まず、日本でオスのムートーが誕生した後、日本を破壊することなくさっさと姿を消してしまうのは、拍子抜けもはなはだしい。続いてホノルルでゴジラとムートーが初対戦するも、戦闘の様子を殆ど描くことなく「戦いの後」の光景に移ってしまうため、バトルはどうなったのかと、心の中にもやもやしたものが残ってしまう。



 またアメリカでメスのムートーが誕生するが、繭から目覚めるシーンが無いため、爽快感に欠ける。観客としては、慌てふためく基地の兵士、繭に起きる異変、第二のムートー誕生、基地を大破壊して立ち去るメスのムートー、といったシーンを見てみたかった。



 終盤、サンフランシスコでようやく三大怪獣の大決戦が始まり、ここでようやく待望の怪獣同士のバトルが堪能できるようになるが、ここでも焦点は怪獣の戦いより、フォードたち決死隊が核爆弾を処理できるか、にあわせられており、怪獣たちはやはり主役とはなっていない。そして、ラストシーン、仕事を終えたゴジラは退場していくが、やはり何の感慨も残らなかった。



 この映画への不満は、つまるところ「ゴジラの存在の無意味さ」にある。CGで動き回るゴジラの映像は魅力的で、数々のシーンは心に残った。しかし、この映画のストーリーは、ハリウッドモンスターバトル映画の王道「アメリカ軍対ムートー」であり、ゴジラはそこに付け加えられた添え物に過ぎない。たとえゴジラがいなくても大半のシーンは成立していたし、ラストも「アメリカ軍の新兵器でムートーニ体を倒した」と改変しても違和感は無いだろうと思われる。要するにゴジラの映画ではないのだ。「恐怖のムートー」という映画に、ゴジラを絡ませてみたに過ぎない。



 対して、1954年の初代ゴジラ映画で、ゴジラ抜きのストーリーなど考えられない。この映画ではゴジラを「神秘的な何か」として描くことには成功しているが、その反面「ゴジラがいなくても話が成立してしまいそう」という点では失敗している。



 この映画は、いわゆる「平成ゴジラ」シリーズと比較すれば、まだマシというレベルでは有るし、絵については感激するくらいに綺麗だった。また悪夢の「1998年版ハリウッドゴジラ」とは違い、遥かに日本人のゴジラのイメージに寄り添った作品だったことも間違いない。しかし満足できる作品ではなかった。



 本作を見て、改めて「満足できる日本テイスト怪獣映画」を作ることがいかに難しいかを再実感することとなった。日本の映画人たちでは実現できていないし、ハリウッドの才能が挑んでも無理だった。初代「ゴジラ」(1954)に匹敵するような映画を作ることは、もう不可能なのかもしれない。


■一言

 序盤、幼い頃のフォードの部屋に怪獣映画のポスター「●ニラ対ハブラ」(●は写らず)というやつが貼ってあった場面だけは大ウケしました。当然日本語が解る観客オンリー向けのサービスなわけで、監督の心遣いだとしたら嬉しい。



■参考

https://kinro.jointv.jp/lineup/150925

1999年、生物化学者の芹沢博士(渡辺謙)はフィリピンの炭鉱崩落現場の調査に向かった。彼が発見したのは、巨大な生物の化石。化石に寄生していたらしい繭からは、巨大な生物が海へと這い出した後だった。同じ年、日本の原子力発電所で働くジョーブライアン・クランストン)は、地下で謎の振動を察知。妻で技師のサンドラ(ジュリエット・ビノシュ)は施設の点検に向かうが、その直後、巨大地震が発生。サンドラは混乱の中で命を落とし、壊滅状態になった町は立ち入り禁止となってしまう。


15年後。ジョーの息子でアメリカ海兵隊のフォード(アーロン・テイラー=ジョンソン)の元に、ジョー原発跡地に侵入して逮捕されたという連絡が入った。日本に向かったフォードは、ジョーと共に立ち入り禁止区域内の自宅へ。2人はかつての研究データを回収するが、謎の研究施設に連行されてしまう。その施設では、芹沢博士らが巨大な繭の研究を行っていた。ジョーは繭と地震の関連性を指摘するが、その直後、繭を破って巨大な生物が羽化。芹沢博士はその生物を殺そうとするが失敗し、巨大生物はアメリカ方面に飛び去った。
ムートーと名付けられた巨大生物の後を追ってハワイへ向かう芹沢博士とフォード。芹沢博士は、ムートーの暴走を止めるためにゴジラが復活するのではないかと予測する。そしてハワイに上陸したムートーを倒すため、芹沢博士の言葉通りにゴジラが姿を現した!!