感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン3」第19話「賭博」

X-ファイル シーズン3 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]

 ドラマ「X-ファイル シーズン3」(全24話)の感想です。
(※以下、今回の話の結末まで書いてあります。ネタバレにご注意ください)

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン3
http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s3/

 BSデジタル放送「Dlife」での視聴です。


第19話 賭博 HELL MONEY

■あらすじ

http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s3/
EP19 賭博
中国人が焼死する事件が続出。捜査していくうちに、不正に埋葬された遺体には手術の痕があり、その遺体からは心臓だけでなく、腎臓と角膜も摘出されていたことがわかる。

 お題は「命懸けの賭博」(※超常現象要素無し)。


 サンフランシスコの葬儀場で、中国系の男が生きたまま焼かれて殺される事件が発生する。同様の事件が既に10件も発生しており、全てが中国系の移民だった。モルダーたちは、中国系アメリカ人の刑事グレン・チャオの協力を得ながら、捜査を開始した。


 やがて墓地で中国系の男の死体が見つかるが、心臓・腎臓・角膜等が摘出されており、生前に何度も臓器摘出手術を受けた挙句に心臓を抜かれて殺されたらしい。実は中国系移民たちは、命懸けの賭博に参加しており、当たりくじを引けば200万ドルが手に入るが、それ以外のハズレを引くと角膜や心臓などを摘出されてしまう。しかもこの賭博は途中で抜けることは許されず、ルールに違反したものは生きたまま焼き殺される、という恐るべきものだった。そしてチャオは、賭博の主催者から金を受け取り、警察から賭博を隠蔽していた。


 チャオは知り合いが賭博に負けて殺されそうになったのに耐えられず、賭場に乱入し、賭けが当たりくじの入っていないイカサマであることを見抜く。そこにモルダーたちが現われ、賭博の主催者やチャオ、賭けの参加者たちを逮捕した。しかし参加者たちは全員賭博行為を否定する。最後、裏切り者のチャオが火葬場で生きたまま焼かれて悲鳴を上げているシーンで〆。



監督 : タッカー・ゲイツ
脚本 : ジェフリー・ブラミング



■感想

 評価は○。


 モルダーたちが中国人街で連続殺人の謎を追う、という、超常現象が全く絡まないエピソードだが、なかなかの秀作。登場人物が殆ど全て中国系で、舞台も中国人街、と、いつもとは全く異なる雰囲気で展開する、サスペンス感覚に満ち溢れた好エピソード。


 今回の話の核となるのが、200万ドルを賭けた狂気の賭博。参加者は、まず自分の名前の書かれた名札を容器に入れ、主催者がその中から一枚を引く。名札の主は、続いて別の容器の中から漢字の書かれたタイルを引く。もしそれが当たりならば200万ドルを手に入れることが出来るが、外れのタイルの場合、「木」なら眼球を、「火」なら心臓を、それぞれ摘出されてしまう。「カイジ」にでも出てきそうな恐ろしいギャンブルで、負けて片目を取られた男が、片目の部分にガーゼを当てたまま歩き回っている光景は、心をざわつかせるのに十分である。


 冒頭の、葬儀場の守衛が炉の中を覗いてみると、炎の中で火ダルマの人間が転げまわっている、というシーンは強烈だったが、結末も最悪だった。背広姿のチャオが眼を覚ますと、炉の中に横たわっており、次の瞬間火が付けられて、チャオのすさまじい悲鳴のシーンで幕切れ、とは、X-ファイルのエピソードでも屈指の後味の悪さだろう。


 今回の事件関係者たちは中国からの移民たち。移民の急増の理由として、1997年の香港の中国返還について語られたが、このエピソードの放送は1996年で、まさに旬のテーマだった訳である。


 賭博に負けて片目を失った上に心臓まで摘出されそうになるシンには病気の娘が居たが、演じたのは、この後「チャーリーズ・エンジェル」その他に出演したルーシー・リューである。


 ところで、今回モルダーたちは何故この事件を担当したのだろうか? 明らかに超常現象が関係していないのに、わざわざ西海岸のサンプランシスコまで出張してきているのが、今回最大の突っ込みどころだろう。


■一言メモ

 サブタイトルの「HELL MONEY」とは、中国のお盆の際に使われる「地獄の金」のこと。劇中、この金の燃えかすが手がかりとなった。