【プロレス】ビジネスジャーナルの新日本プロレス批判は見当外れも良いところだ

 「ビジネスジャーナル」が10月18日に、新日本プロレスに対して強烈な批判を行なっている。


甘ったれるな新日本プロレス!サーカス化&世界進出を目指せ!選手を海外貸出すべし | ビジネスジャーナル


底の浅い内容

 一通り目を通してみたが、内容の薄さは失笑を通り越して哀れを催すものだった。3ページも使っているが、殆どの内容は一般誌でも読めるような情報をひたすら水増ししているだけのもの。冒頭に試合の内容を書いているあたりなどは、「エッセイの書き出し」という本を参考に読者をひきつけようとでも試みたのだろうが、大失敗で、文章力の無さは噴飯物



見当外れの提言

 そのような内容なので、当然、僅かな独自部分である提言部分も見当外れ。

日本という狭いマーケットにおいて、新日本プロレスでは71人もの選手が登録している(選手名鑑より)。私の意見では、常時半分以上を海外の団体に貸し出してブッキング料を計上する。一方、日本というホームマーケットでは飢餓感を演出できる。現在は過剰感しかない。

http://biz-journal.jp/2015/10/post_11984.html

 この執筆者氏、自称「半世紀以上に亘るプロレスファン」とのことだが、海外のプロレスのことはほぼ何も知らないようだ。多少でも海外のプロレスを知っている人間ならば、このアイデアがいかに非現実的なことを言っているかが解る。海外には新日本以上の規模を持つ団体はWWEしかない。あとは、好意的に見て新日本と対等の団体がアメリカとメキシコに2つ、3つ、という程度。残りは事実上雑草レベルのマイナー団体だけだ。「海外に貸し出す」その先が存在しないのである。



 執筆者氏はおそらく、サッカーか何かのように海外にプロレスの一大市場が存在していると誤解している。極端に言えば、プロレス団体は日本以外にはアメリカのWWEしか無い。ではWWEに選手を貸し出すなどいうことが出来るかと言えば、それも無理な話。向こうは世界的大企業で、WWEと比較すれば新日本は日本でささやかに商売をしている個人商店の様なものに過ぎない。



 そもそも選手を貸し出して金が稼げるというのならば、数年で新日本を立て直した切れ者の木谷氏が実行しないわけが無いではないか。



複数ブランド制は成立するか

あるいはWWEのように、興業のブランドを複数立ち上げる。プロ野球でいえば、セ・リーグパ・リーグを創るようなものだ。サーカスのシルク・ドゥ・ソレイユでは常時世界中で複数の公演を行っている。プロレスのビジネス形態もサーカスに似ている。

http://biz-journal.jp/2015/10/post_11984.html

 先の提案に比べれば多少はまともだが、こんなことは既に新日本自身が理解している。


 これを読んでもらいたい。

これが新日本プロレス、闘魂の復活劇だ! 東洋経済オンライン

上り調子に見える新日本だが、課題もある。過剰ともいえる所属選手の数だ。現在、新日本の地方大会では1日5〜7試合が組まれるが、メインイベントになるとトップ選手が5対5でぶつかる10人タッグマッチも珍しくない。


大勢のトップレスラーが1つのリングに居並ぶのは圧巻だが、選手1人ずつの試合時間は短くなる。観客からすれば、消化不良を起こしている可能性もある。


「これ以上、試合数を増やすのは、選手の負担を考えると無理。その中でお客さんに見てもらう機会を増やすのであれば、以前やっていたように選手を(グループに)わけて興行するのも、選択肢の1つかもしれない」(手塚社長)

http://toyokeizai.net/articles/-/56770?page=4

 既に何年も前からこの「複数グループ制」は噂になっているが、実現はしていない。理由は容易に想像がつくが、「チケットを買っても、一部の選手しか見られなくなる」からである。現状ならば、会場に行けば棚橋、中邑、オカダ、飯伏、といったスター選手を全員見ることが出来るが、複数グループに分けるとそれが不可能になる。客の不満を抑えられるだろうか。単純に、所属レスラーが多いから分ければいい、というものではない。



間違っているのは……

間違いだらけのビジネス戦略

間違いだらけのビジネス戦略

 間違いだらけなのは、執筆者氏の戦略の方じゃないの? と言いたくなりますなぁ。多分、ちょっとプロレスを知っているだけの人間が、「いっちょかみ」してみたかったのだと思いますが、単なるプロレスファンにも間違いがわかるようなことしか書けないのでは恥ずかしいですよ。