感想:アニメ「マクロスΔ(デルタ)」第26話(最終回)「永遠のワルキューレ」


TVアニメ「マクロスΔ」オリジナルサウンドトラック1

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放送 BS11

【※以下ネタバレ】

第26話(最終回) 『Mission 26 永遠のワルキューレ

 

あらすじ

 ケイオスはラグナへと突撃するが、既にラグナの「星の神殿」では、ロイドが美雲を使って「星の歌」を銀河に響かせ始めていた。「星の歌」の真の効力は、全人類の精神を変化させて一つの生命体に進化させる、という物だった。全銀河の人間が一つにまとまり、ウィンダミア人がその中心となれば、ウィンダミア人は短命に怯えることなく永遠に生き続けることができる。これこそがロイドの真の狙いだった。

 ハヤテたちも精神の変異に巻き込まれ、ハヤテ・フレイア・ミラージュの精神が繋がってしまう。ミラージュはここに至りついにハヤテに愛を告白し、負けずにフレイアも告白する。さらにフレイアの歌により、「星の歌」の威力が弱まり、ハインツもロイドを討つ為、あえて風の歌でワルキューレを援護する。そしてワルキューレの戦術ライブの歌が響く中、ハヤテたちは美雲を救出し、ロイドはキースと相討ちになって死んだ。ウィンダミア軍は、ラグナから撤退していった。ケイオスはラグナを奪回し、一応のけりがついたところで〆。


脚本:根元歳三/絵コンテ:河森正治/演出:ヤマトナオミチ/作画総監督:長田好弘、井上英紀、皆川一徳、まじろ、進藤優/作画監督伊藤亜矢子、牛屋琴乃、永川桃子、大橋幸子、酒井智史、杉本里菜、高田和典、中山竜、福島勇、福士真由美


感想

 評価は△。

 ロイドの真の目的は、まあそんなことだろうよ、とは解っていましたが、美雲が突然「愛・おぼえていますか」を歌いだしたのには、もう腹を抱えて笑いました。プロトカルチャーの最終兵器がこの曲ですか(笑い) また、皆の意識が繋がった局面で、ミラージュがとうとうハヤテに告白しますが、この「今更? もう最終回なんですけど……」という徒労感をどう表現して良いものやら……、13話くらい告白が遅すぎるんじゃありませんかねぇ。あと、ごっちゃごちゃの戦いの中で「とにかくワルキューレの持ち歌を歌わせておけば盛り上がるだろう」みたいな演出にもなんか失望しましたし。

 そして、最終的にラスボスのロイドは倒れましたが、新統合軍とウィンダミアとの戦争は別に終わったわけではないし、老化が始まったフレイアのその後もどうなるのか投げっぱなしだし、レディMとは誰だったのかは謎のまま放置されたし、とにかく〆方が雑すぎた。全2クール(26話)も有ったのに、途中で余計なことをしてばかりで無駄な時間を浪費してしまったばかりに、最終回が「とにかくそれらしいカタをつけるので精一杯」という情けないことに……、ダメじゃんこれ(まあ、「この続きは劇場映画で」と逃げなかっただけマシか?)

 うわーん、去年の大晦日に「先行放送第一話」を見たとき、こんなしょーもないアニメで終わるなんて想像もしていませんでしたよ……


総括

 評価は△(もっと頑張りましょう)。

 2008年放送の大傑作「マクロスF(フロンティア)」から8年ぶりのマクロスシリーズ。「F」があまりにもすばらしかったので、あの感激をもう一度、と期待して視聴したのですが、見事に裏切られました……

 西暦2067年。銀河系に拡散した人類は様々な異星人と遭遇しつつも共存し、一大文明圏を作り上げていた。しかし、銀河にはいつしか奇病「ヴァール・シンドローム」が蔓延するようになっていた。この病気は突然知性体が理性を失い暴徒化するというもので、人々は原因不明のヴァール・シンドロームの発生に怯えていた。だが、人類はヴァール・シンドロームから人々を救うため「戦術音楽ユニット・ワルキューレ」を結成する。そして、ワルキューレの新メンバーになることを夢見て、一人の少女がオーディションを受けようとしていた……

 第一話で、歌姫たちが戦場の中に立って激しいアクションをこなしながら歌い踊り、それを騎士的なバルキリーのチームが護衛する、という今までに無かった構図を見て、この新作は凄いモノを見せてくれそうだ、と心が躍ったのですが、結局最初だけのハッタリだったというか中身が伴っていなくて、その後どんどん視聴テンションが落ちてしまい、結局回復することは有りませんでした。


 この作品への不満は多々有りますが、ざっと思いつくだけでもこれだけ挙げられます。


・展開が遅い

 とにかく話の進み方が遅く、一話でさっさと済ませそうな話を2話も3話もかけてやっているので、かったるくて仕方が無かったです。だから、26話の長丁場なのに全体を俯瞰して見ると、大したストーリーが描かれないまま終わってしまいました。また謎についての答えの出し方がヘタで、美雲がクローンだったとか、ハヤテの父親が実はウィンダミアを救おうとしていたとか、もっと前の段階で明かしておくことを、最後の方でバタバタしつつ公開するあたり、全体の構成がまったくなっていないとしか言いようがありません。このアニメのシリーズ構成の人は、きちんと全体を見渡して話を作っていたのでしょうか。そして、拙い話の進め方のせいで、大事な最終回は時間が無くてキツキツな展開だったし、「最終決戦のその後……」といったシーンも無く、余韻もへったくれもありませんでした。監督とかシリーズ構成の人は猛省すべきで有りましょう。


・三角関係の不発

 マクロスと言えば「三角関係」ですが、このアニメではそれが全く機能していなかった。ハヤテとフレイアがどんどん仲を深めていくのに、ミラージュときたら何もしないまま、ただの同僚の地位のままずっと最後まで進んでしまったため、恋のさや当てといったエピソードが何も存在しないまま終わってしまいました。ミラージュが最終回Bパートでようやく告白しますが、遅すぎにもほどが有ります。


ワルキューレのキャラ立ての失敗

 歌姫が五人もいるだけに、テンポ良く話をこなしてそれぞれのキャラクターを紹介しなくてはならないのですが、前述の通り話の進め方が下手なため、各キャラの個性の掘り下げが全く上手くいかず、結局最後まで「見た目と話し方」以上のものが殆ど描かれませんでした。もったいない。


・美雲の存在感の無さ

 ワルキューレのエースボーカルということで、フレイアの師匠的な役割を期待していた美雲ですが、「私生活は全て謎」という設定を押し通しすぎた余り、「謎の人」というより「登場の機会がほとんど無い存在感の薄いキャラ」に成り果ててしまっていました。話の最終盤になって、「実はクローン人間で年齢三歳」とか「プロトカルチャーの巫女」とかいう設定を持ち出して来ましたが、もう全てが遅すぎた感しか無し。さらにウィンダミア人に呪文一つでホイホイとコントロールされる姿は、「何物にも影響されない孤高の美女」的なイメージを大暴落させました。小清水亜美をキャスティングしながら、このキャラを何一つ生かせていなかったのは大問題でしょう。


 と、すぐ思いつくだけでもこれだけあり、つまり褒めるところがほぼありませんでした……、うーん、ダメじゃん。

 結局、設定は凄く面白そうだったのですが、良かったのは最初の数回だけだったという……、歌姫五人組の戦術ライブという設定とか、上手く話を進めれば凄いことが出来たという気がしますのに、心底もったいなかった。ということで、このアニメの存在価値は、鈴木みのりという超大型新人を見出した、というその一点だけのような気がします。去年の大晦日、第一話を見たときの、あのトキメキを返して。


一度だけの恋なら/ルンがピカッと光ったら
いけないボーダーライン
絶対零度θノヴァティック

スタッフ情報
【原作】河森正治スタジオぬえ
【キャラクター原案】実田千聖CAPCOM
【総監督】河森正治
【監督】安田賢司
【シリーズ構成】根本歳三
【脚本】根本歳三
【キャラクターデザイン】まじろ、進藤優
【メインアニメーター】中山竜
【世界観デザイン】ロマン・トマ
バルキリーデザイン】河森正治
メカニックデザイン】プリュネ・スタニスラス
【美術設定】ニエム・ヴィンセント
【デザインワークス】大橋幸子
マクロスビジュアルアーティスト】天神英貴
色彩設計】林可奈子
美術監督池田繁美アトリエ・ムサ)、丸山由紀子(アトリエ・ムサ
【撮影監督】岩崎敦(T2studio)
【CGディレクター】森野浩典
【CGスーパーバイザー】加島裕幸(unknownCASE)
CGアニメーションディレクター】崎山敦嗣(unknownCASE)
【メインバルキリーモデリング】池田幸雄、坂本圭司
【モニターグラフィックス】HIBIKI、鈴木陽太(flapper3)、加藤千恵(T2studio)
【特殊効果】飯田彩佳
【編集】坪根健太郎(REAL-T)
【音楽】鈴木さえ子、TOMISIRO、窪田ミナ
【音楽制作】フライングドッグ
【音響監督】三間雅文
【音響制作】テクノサウンド
【アニメーション制作】サテライト



音楽
前半
【OP】ワルキューレ一度だけの恋なら
【ED】ワルキューレルンがピカッと光ったら
後半
【OP】ワルキューレ絶対零度θノヴァティック」
【ED】ワルキューレ「破滅の純情」



キャスト
ハヤテ・インメルマン内田雄馬
フレイア・ヴィオン鈴木みのり
ミラージュ・ファリーナ・ジーナス瀬戸麻沙美
美雲・ギンヌメール小清水亜美
カナメ・バッカニア安野希世乃
レイナ・プラウラー東山奈央
マキナ・中島西田望見
アラド・メルダース:森川智之
メッサー・イーレフェルト:内山昂輝
チャック・マスタング川田紳司
アーネスト・ジョンソン:石塚運昇
ロイド・ブレーム石川界人
キース・エアロ・ウィンダミア木村良平
ボーグ・コンファールト:KENN
ヘルマン・クロース:遠藤大智
カシム・エーベルハルト:拝真之介
テオ・ユッシラ/ザオ・ユッシラ:峰岸佳
グラミア6世:てらそままさき
ハインツ2世:寺崎裕香