感想:CGアニメ「サンダーバード ARE GO」第26話(最終回)「トレーシー・アイランドの危機」

サンダーバード ARE GO

NHKアニメワールド サンダーバード ARE GO http://www9.nhk.or.jp/anime/tag/
THUNDERBIRDS ARE GO http://thunderbirds-are-go.jp/
放送:NHK総合(毎週土曜日 17:05~17:30) 全26話。

【※以下ネタバレ】


※他のエピソードのあらすじ・感想
d.hatena.ne.jp
 

第26話(最終回) トレーシー・アイランドの危機 (2016年10月8日(土)放送)

 

あらすじ

ケーヨはトレーシー兄弟に、自分とフッドとの関係を話そうとするが、世界各地で同時多発的に緊急事態が発生し、インターナショナル・レスキュー全員出動となり、タイミングを失してしまう。救難信号の発せられた各地に急行するも、どこにも遭難者は見つからない。ケーヨは罠(わな)ではないかと疑い、ブレインズとおばあちゃんにシェルターに隠れるよう連絡し、トレーシー・アイランドへ急ぎ戻るが…。

 ケーヨはトレーシー家の五兄弟を集め、自分とフッドの関係を話そうとするが、その途端、世界各地と宇宙から同時に救難信号が舞い込み、各メカはそれぞれ単独で救助に向かった。ところがケーヨは砂漠の遭難者を救助に向かったものの、肝心の遭難者が見当たないことから罠と判断し、慌ててトレーシー・アイランドへと引き返す。しかし時既に遅く、フッド一味がトレーシー・アイランドに乗り込んできていた。しかも五兄弟が救助に向かった先には動くと爆発する爆弾が仕掛けられており、五人は身動きが取れなくなってしまう。フッドは通信で自分がケーヨの叔父であることをばらし、五兄弟は動揺する。

 フッドは基地のコンピューターを掌握し、サンダーバードメカを遠隔操縦で基地に戻そうとするが、ケーヨがコンピューターを初期化してそれを阻止した。激怒したフッドは設備を爆弾で破壊しようとするが、実はフッドが居たのはトレーシー・アイランドの隣のマテオ・アイランドだった(※ケーヨがコントロール施設に案内するといって隣の島の予備施設に連れて行っていた)。フッドが仰天しているところに、サンダバード1号・2号が現われ、フッドの飛行基地をバラバラに破壊してしまった。

 フッドは世界防衛軍GDFのケーシー大佐に逮捕され、ケーヨは自分の事を全てインターナショナル・レスキューの仲間に説明した。最後、フッドが牢屋の中からケーシー大佐に「自分(フッド)の事を悪だと思っているなら、まだまだ甘い」という謎の言葉を発する。<完>


感想

 評価は×。


 最終回ですが、こういう「インターナショナル・レスキュー対悪の組織」みたいな話は心底評価できないので、もうガッカリでした。オリジナルシリーズは「主人公たちが悪と戦う」のではなく、事故災害から人々を救う」というヒューマン要素がテーマだったからこそ、半世紀も評価されていたと思いますし、自分もそこが好きでした。それだけに、今回の様な『悪の親玉が本部に乗り込んできて、インターナショナル・レスキュー絶体絶命!』とかいう展開はねぇ……

 スコットが「GDFに島の位置を教えることになるが仕方ない」云々と言っていて、それを聞いて「えっ? 今まで隠していたの?」と驚いてしまいました。メンバーの顔も名前も、ジェフが行方不明なことまでGDFに把握されているのに、基地の場所だけは教えていなかった、ってどういう距離感なのか良く解らない……

 結局今回はトレーシー家の五兄弟がもう脇役になっていて、ケーヨが主人公化しているし、サンダーバードメカが悪党のメカとバトルして相手を破壊してしまう、とか、もうオリジナル版の精神(?)を踏みにじっているというかで失望MAXでした。オリジナル版を見ていたファンからすると「そうじゃないだろ!」と突っ込みたくなる気持ち一杯の回で……

 最後に「フッドがさらなる巨悪の存在を示唆しておしまい(第二期に続く)」とか、そういう引きいらないから。


総括

 評価は△(もっと頑張りましょう)。

 半世紀前の1960年代に放送され、未だに人気が衰えない「サンダーバード」のリメイク版。随所にオリジナル版をリスペクトしていることが見受けられ、これは行けると思ったのですが、終盤の展開でガクッと評価を落としました……


 2040年代。私設の救助組織「インターナショナル・レスキュー」は、「サンダーバード」と名付けられたメカに乗り込み、人々の命を救うため、世界各地や宇宙で発生する事故災害に果敢に立ち向かっていく!


 1960年代に放送されたオリジナル版「サンダーバード」は、その完成度で今なお人気が衰えませんが、この作品に影響を受けて「人命救助」をテーマにした作品がいくつか作られたものの、ことごとくが本家には及びませんでした(マイティジャック、ゼロテスター、テクノボイジャー、etc)。そんな中、50年ぶりに本家イギリスが正式なリメイク版を作ったのというので、出来栄えには不安半分・期待半分だったわけですが、初回を見たときにはこれは行けると小躍りしました。

 まず、例の「ファーイブ!」からカウントダウンしていくオープニングはそのままだったし、メカデザインはオリジナルシリーズの物をほぼそのまま踏襲しているし(5号は宇宙ステーションだから変化してもあんまり影響なし)、キャラクターたちもあの人形たちの雰囲気を出しているし、サンダーバードメカの発進シーケンスもそのままだし、キチンと人命救助するし、とにかくオリジナル版をリスペクトしつつ今風に作り変えてあるのがかなり好感触でした。

 初期のエピソードは、キャラクターがCGになって自由に動かせるようになったからか、救助メカを出さずにキャラクターがとにかく飛びまわって救助する話が多かったのですが、途中からはちゃんと救助メカを出すようになったのでそういう不満も消えていきました。またポッドモジュールというオリジナルメカを上手く使って話を進めるのも、なかなか上手いと思いましたしね。ファイアーフラッシュ号を、ポッドモジュールで作った高速エレベーターカーで着陸させようとするエピソードなんか、もうオリジナルファン感涙物でしたし。

 しかし、そんな幸せも長くは続かず、最後の最後、24話~26話の三部作で突き放されました……、それまで殆ど出番の無かったケーヨが突然大活躍するようになり、お話は人命救助というよりフッド対ケーヨのアクションバトル物みたいな話に変化……、キャラクターがしきりに「インターナショナル・レスキューは犯罪捜査には関わらない」と言いながら、実際は犯罪者との対決話に突入してしまい、オリジナル版の精神はどこへやらという感じに。

 そして、最後はインターナショナル・レスキューの本拠地トレーシー・アイランドを悪人フッドが襲撃してきて、それを撃退する話なのですから、サンダーバードのテーマはどこへやら……、そもそも話自体がトレーシー家五兄弟が脇役になってしまい、ケーヨが事件を解決する番組になってしまっていました。そういう番組じゃないと思うのですけど。

 うーんんん、サンダーバードにそういうバトル展開は求めてなかったのですけどねぇ。『一般の救助装備では対処できないような重大事故災害に、最後の切り札的にインターナショナル・レスキューが駆けつけ、危機一髪で人々を救ってそのまま立ち去る』という話が見たかったのに……


 まあ、そこそこは楽しめる作品では有りましたが、最後の最後で裏切られてしまった感が強くて、すこぶる残念でした。やはりオリジナルの精神を受け継ぐ作品を作るのは本当に難しいみたいですね。



※他のエピソードのあらすじ・感想
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http://www9.nhk.or.jp/anime/tag/
ジェリー・アンダーソンによる数々の革新的な技法により50年前にイギリスで誕生した『サンダーバード』。


人命救助をテーマに、災害や事故に勇敢に立ち向かう国際救助隊(インターナショナル・レスキュー)の姿を描き、社会現象になるほどの人気を博すのみならず、日本の特撮やアニメーションにも多大の影響を与えた。その後も根強い人気を誇り、世代を超えて支持される不朽の名作と言っても過言ではない。


2015年、50年の時を経て新シリーズが始動。お馴染みトレーシー家の5人兄弟の活躍を、CGアニメーションとミニチュアセットの融合というユニークな表現手法で新たに描く!生まれ変わった『サンダーバード』の新たな伝説が始まる…


サンダーバード ARE GO



キャスト
スコット・トレーシー(声:浪川大輔
ジョン・トレーシー(声:KENN)
バージル・トレーシー(声:花輪英司
ゴードン・トレーシー(声:柿原徹也
アラン・トレーシー(声:村瀬歩
ケーヨ(声:寿美菜子
プレインズ(声:上田燿司
レディ・ペネロープ(声:清水理沙
パーカー(声:岩崎ひろし)
フッド(声:石塚運昇