感想:海外ドラマ「X-ファイル 2016」第2話「変異」


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X-ファイル 2016|FOX|FOX ネットワークス http://tv.foxjapan.com/fox/program/index/prgm_id/20683
放送 FOXチャンネル。全6話。

【※以下ネタバレ】
 
X-ファイル 2016(ニーゼロイチロク)の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら
perry-r.hatenablog.com
 

第2話 変異 FOUNDER'S MUTATION

 

あらすじ

遺伝子研究施設に勤める博士が、他の人には聞こえない異常な音を聞き、直後に自殺した。その手のひらには、“創始者の変異”と文字が書かれていた。モルダーとスカリーは博士の部屋へ捜査に行き、遺伝子疾患による形態異常の子供たちの写真を発見。しかしその時、モルダーの耳に突然、突き刺すような高音が聞こえてくる。

 お題は「遺伝子操作/超能力」。


 遺伝子関係の研究所に勤務するサンジェイ博士は、突然他の人に聞こえない謎の高音に苛まれ始める。そして半狂乱になって施設のコンピューターで何かデータを検索した直後、耳にペーパーナイフを突き刺して自殺する。

 モルダーとスカリーはスキナーに呼び戻されてFBIに復職し、再びX-ファイル課に配属され、この事件の捜査を行うことになった。スカリーはサンジェイの検死解剖の際、彼が手のひらに「創始者の変異(FOUNDER'S MUTATION)」と書き残しているのを見つける。サンジェイの部屋では、彼が遺伝子異常の子供のデータを集めていたことがわかるが、その際モルダーは他の人に聞こえない高音に襲われ、苦痛で倒れてしまう。

 モルダーとスカリーは、サンジェイの勤務先の研究所の創始者で、遺伝子研究の権威ゴールドマン博士を訪問する。モルダーの推測では、ゴールドマンは政府・国防総省とつながっており、子供を対象にした非人道的な遺伝子実験を行っているようだった。モルダーたちは、精神病棟に入っているサンジェイの妻ジャッキーを訪ね、ゴールドマンが自分の娘モリーすらも実験対象にしていたことを知る。ジャッキーはモリーが水中で呼吸できる人外の何かだと気が付き、恐ろしくなって息子を身ごもったまま逃走するが、結局息子と離れ離れになったという。

 モルダーたちは、ジャッキーの息子が無事に成長し、カイル・ギリガンという名前で暮らしていることを知る。カイルは、特定の人間に、その人物にしか聞こえない音を聞かせる超能力を持ち、また生き別れの姉モリーの行方を捜していた。モルダーたちは、モリーの行方を知っているはずのゴールドマンの元にカイルを連れていく。カイルは閉じ込められていたモリーを見つけ、二人は触れ合うことで超能力を暴走させた。モルダーたちは巻き込まれて失神し、気が付くとゴールドマンは殺され、カイルとモリーは失踪していた。事件後、現場は国防総省に封鎖されるが、モルダーはカイルの血を手に入れていた。


監督 ジェームズ・ウォン
脚本 ジェームズ・ウォン


感想

 評価は△。

 モルダーとスカリーが十数年ぶりにX-ファイル課員としてのコンビを復活させ怪事件に挑む、というファン待望のエピソードだったが、終わってみればシナリオの質が低く、評価はもう一つだった。


 今回の事件は、視聴者を謎で振り回そうと、「サンジェイを襲った謎の音と直後の自殺」「謎めいたダイイングメッセージ」「政府とつながった怪しい遺伝子関係の学者」「子供を使った人体実験」「事件現場に居合わせた謎の青年」といろいろな要素が詰め込まれており、物語の着地点が全く見いだせず困惑したが、結局は「半端な超能力を持つ青年の姉探しの物語だった」というオチだと解って、あまりのつまらなさに脱力した。

 冒頭、思わせぶりにサンジェイを襲った謎の音は、単にカイルの出来損ないのテレパシーもどきでしかなかった訳で、真相がわかってしまうと馬鹿らしくなった。カイルはサンジェイを殺すつもりはなかったと弁解していたが、コントロール不能の超能力のせいで自殺に追い込まれたサンジェイにしてみれば、とんだ迷惑だとしか言いようが無かろう。

 また、サンジェイが死ぬ間際に手のひらに「創始者の変異(FOUNDER'S MUTATION)」と書き残したが、これは結局一体何だったんだ、と言いたくなった。まあこのメッセージのおかげで、モルダーたちはゴールドマンに接触することになったわけだが、サンジェイは何を考えてこんなメッセージを残したというのだろうか。このメッセージも、重要な意味があるようなふりをして、実は物語上意味がなかった。

 さらに、検死の際、サンジェイはナイフをまっすぐ頭に突っ込んだのに、60度曲がって脳に達していておかしい、という事実が判明するが、これも特に謎解きされることもなく終わってしまった。

 と謎だらけのサンジェイの死に、政府とつながりがあって胡散臭いゴールドマンが関わっているのか、と思わせておいて、終盤に実はゴールドマンの息子カイルが犯人でした、という意外な(?)真相が明かされるが、正直言って話が凝りすぎてさっぱり面白みを感じなかった。視聴者を徹底的に謎で混乱させようと技巧を凝らしすぎで、ごたついているだけのつまらないエピソードだった、としか言いようがなかった。

 とは言え、ちょっと気になる点もあり、ゴールドマンの娘モリーが水中で呼吸できる、という設定は、シーズン1の最終回「三角フラスコ」に登場した、宇宙人のDNAを組み込んだ人間のことを想起させた。またスカリーがゴールドマンに「エイリアンのDNA」云々と問い詰めるシーンがあり、今後またあの緑の血を持つ人々が現れる、という事の予告なのかもしれない。


 さて、ファンとしては、十数年前にFBIを離れたモルダーとスカリーがどうやってX-ファイルの仕事に戻るのか? というところが気になっていたが、結局、視聴者に特に説明も無いまま、しれっとFBIに復職しているのには笑ってしまった。スカリーはともかく、モルダーは色々問題を引き起こした挙句、FBIにいられなくなって事実上のクビになったはずなのに、こんなに簡単に戻って来てしまって良いのだろうか。しかも、悪名高いX-ファイル課も簡単に復活しているし……、ちょっと都合がよすぎるという気がしなくもない。

 しかもモルダーは、十年以上たっても相変わらずの規則破りぶりで、サンジェイのスマホを勝手に持ち出して、「サンジェイは容疑者ではなく被害者だから令状なしで中を調べても問題なし」とか涼しい顔で言い訳したり、サンジェイのアパートにあった資料を国防総省に返す前にコピーしていたり、と、やっていることが昔と一緒なのにはちょっと嬉しくなった。しかし長い間にラフな格好に慣れてしまったのか、背広の着こなしがやたらイマイチなのには苦笑させられた。

 ところで、モルダーとスカリーは、カイルの自宅に押し掛ける前に、既に二度カイルと出会っている。一度は、スカリーの車でサンジェイの隠しアパートに行くときに、轢きそうになってしまう若者がカイルで、これはわかりやすい。もう一度は、一瞬のためかなり見づらいが、モルダーたちがサンジェイの自殺現場からスマホをいじりながら歩いて出てくる際、掃除用具を入れた車を押している人物とぶつかりそうになる。その相手がカイルである。


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