感想:NHK番組「シリーズ江戸川乱歩短編集Ⅱ 妖しい愛の物語」第2回「黒手組」

黒手組

シリーズ江戸川乱歩短編集Ⅱ 妖しい愛の物語 http://www4.nhk.or.jp/P3860/
放送 NHK BSプレミアム

【※以下ネタバレ】
 

エロスと幻想が交錯する独特の作風で、“日本ミステリーの父”とよばれる江戸川乱歩。初期の傑作短編を気鋭のクリエーターたちが映像化する第2シリーズ。第1回「何者」第2回「黒手組」第3回「人間椅子」。日本初といわれる“本格探偵小説”の中で、日常に潜む人間の本性が深く描き込まれている。悩める三角関係からの自演殺人、暗号から解き明かされる愛の逃避行、そして、背筋も凍る“歪んだ愛のカタチ”…シリーズを通して明智小五郎を演じてきた満島ひかりが、「人間椅子」では初めて妖艶な女流作家を演じる。

 
※第2シリーズ「妖しい愛の物語」の他のエピソードはこちら→ 第1回 何者 | 第3回 人間椅子
 

第2回 黒手組 (2016年12月27日(火)放送)

 

あらすじ

シリーズ江戸川乱歩短編集Ⅱ 妖しい愛の物語 第2回「黒手組」
12月27日火曜 午後11時15分~ 午後11時45分


満島ひかりが名探偵・明智小五郎を演じて話題となったシリーズ第2弾。黒手組と呼ばれる犯罪集団に令嬢が誘拐され身代金が奪われる。明智は令嬢に宛てたハガキに注目する。


江戸川乱歩の短編小説を気鋭のクリエーターたちが映像化する。演出は関和亮。私(田中圭)は、伯父(つのだ☆ひろ一家に起こった事件を新聞で知る。娘(仁村紗和)が「黒手組」と呼ばれる犯罪集団に誘拐され、身代金を奪われたのだ。しかし娘は戻ってこない。私は友人の明智小五郎満島ひかり)に捜査を依頼した。伯父たちから話を聞いた明智は、事件前日に娘に届いたハガキを手に姿を消す。明智の意外な推理とは?


【出演】満島ひかり,田中圭,つのだ☆ひろ,ミッツ・マングローブ,仁村紗和,矢部太郎

 明智小五郎の友人「私」は、新聞記事で伯父の娘が誘拐されたと知り、早速明智と共に伯父のもとを訪ねる。事件は、娘の笛美子(ふみこ)がある日外出から戻らず、さらに「黒手組」から身代金一万円を要求する手紙が届いたため、相手に渡したものの、なお娘が戻ってこない、という物だった。黒手組とは当時世間を騒がせていた犯罪者集団で、婦女子を誘拐しては身代金をせしめ、しかも全く警察に手がかりをつかませないという者たちだった。

 話を聞いた明智はすぐに姿を消してしまうが、数日後、笛美子を連れて戻ってくる。大喜びする両親に対し、明智は身代金の一万円も取り戻してきたと差し出す。明智の話によれば、彼は黒手組と取引を行い、黒手組は笛美子と一万円を返すこと、明智は黒手組に関する全てを口外せず、また今後黒手組に関する事件に関わらないこと、を取り決めたと言う。さらに明智は伯父夫婦に、自分の知り合いで笛美子と付き合いたいというものが来たら交際を認めてほしいと頼み、伯父夫婦は快諾する。


 一件落着の後、明智は「私」に事件の真相を語りだす。実は今回の事件に黒手組は一切関わっていなかった。実は笛美子はある若者との交際を親に禁止されていたが、ひそかに暗号を記したはがきで連絡を取り合っていた。そして失踪したのは誰かに誘拐されたのではなく、二人で手に手を取って駆け落ちしただけだった。

 ところが、それを伯父夫婦の家に住む書生の「牧田」が利用した。彼は笛美子から届く郵便物は全て握りつぶし、また黒手組からの脅迫状をねつ造し、主人から身代金の一万円をだまし取ったのだった。

 明智は笛美子に届いていたはがきが暗号であると見抜き、解読して駆け落ちの事実をつかんだ。そしてすぐに牧田が怪しいという事実にたどり着き、牧田を自白させたという訳だった。明智は牧田もある女性と付き合うために大金を欲していた事を知り、事を荒立てないように解決したのだった。


感想

 評価は〇。

 三部作の第二話。純粋に謎解きが面白いエピソード。凶悪犯罪集団による誘拐事件と思いきや、解きほぐしてみると全く違った真相が現れる、という展開がなかなか痛快だった。


 今回は演出が面白く、伯父が身代金を黒手組に渡した夜のことを回想していると、回想シーンなのにその場面に明智が割り込んできて「それからどうしました?」とか質問をする、という展開にちょっとニヤリとさせられた。

 また後半、明智が「私」に謎解きを開陳するシーンでは、原作は1925年(大正14年)に書かれた話なのに、いきなりオーバーヘッドプロジェクターを持ち出してはがきの暗号の内容を説明したり、唐突にカセットテープレコーダーをテーブルの上に置いて、自分がしゃべる代わりにテープの声を流したり、とシュールな展開が続くのもちょっと楽しかった。


※第2シリーズ「妖しい愛の物語」の他のエピソードはこちら→ 第1回 何者 | 第3回 人間椅子

※全エピソードの一覧はこちら→「シリーズ江戸川乱歩短編集」あらすじ・感想まとめ