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感想:NHK番組「シリーズ・江戸川乱歩短編集 1925年の明智小五郎 」第2話「心理試験」

推理

心理試験 (江戸川乱歩文庫)

シリーズ・江戸川乱歩短編集 1925年の明智小五郎 http://www4.nhk.or.jp/P3860
放送 BSプレミアム

【※以下ネタバレ】


※第1シリーズ「1925年の明智小五郎」の他のエピソードはこちら→ 第1話 D坂の殺人事件 | 第3話 屋根裏の散歩者

ミステリーの父ともいわれる江戸川乱歩。日本ならではの独特な世界を描き出し、後のミステリー作家たちに大きな影響を与えた。今回、乱歩の黄金時代ともいわれる1925年の短編の傑作3作品を、一流のクリエーターたちが斬新な演出で映像化する。


第1回は、鍵のかからない日本家屋で起きた密室殺人を描いた「D坂の殺人事件」、名探偵・明智小五郎の初登場作品。第2回は、練りに練った完全犯罪が明智の見事な推理によって暴かれる心理ミステリーの傑作「心理試験」。そして、第3回は犯人の視点で殺人事件が語られていく“倒叙ミステリー”の傑作「屋根裏の散歩者」。3回に渡って、名探偵・明智小五郎満島ひかりが熱演する。

第2話 心理試験

■あらすじ

「心理試験」 1月23日(土)午後10時30分〜11時


江戸川乱歩の短編小説を気鋭のクリエーターたちが映像化するシリーズ。演出は佐藤佐吉。貧しい大学生・蕗谷(ふきや)清一郎(菅田将暉)は、友人の斎藤勇(大水洋介)から下宿先の老婆(嶋田久作)が金を貯め込んでいると聞きつける。蕗谷は綿密に計画をたてて老婆を殺し、斎藤が犯人として疑われる。蕗谷は、警察による心理試験(うそ発見器)をクリアするが、明智小五郎満島ひかり)はその完璧すぎる結果に疑いの目を向ける…

【出演】満島ひかり,菅田将暉,嶋田久作,田中要次,大水洋介,水間ロン,佐藤佐吉

 頭脳明晰な大学生「蕗谷清一郎(ふきや・せいいちろう)」は、友人「斎藤勇」の下宿先の老婆が、金貸しで作った財産を居間の植木鉢の下に隠している、ということを知る。蕗谷は、老い先短い老婆が大金を持っていても意味が無いと考え、自分がそれを頂いて学費として有効活用することを決意した。

 蕗谷は白昼堂々老婆の家に向かい老婆を殺害すると、金を半分だけ奪い残りは元に戻す。その犯行の際に、居間に有った六歌仙の屏風に傷をつけるが、何の手がかりにもならないと判断してそのまま放置する。その後、盗んだ金を財布に入れ、落し物だといって警察に持ち込んだ。もちろん引き取り手は現われないから、一年後には大金は蕗谷の手に入るという訳である。

 その後、死体を発見した斎藤がドサクサまぎれに老婆の金を盗んでいたことが判明し、斎藤は殺人の容疑者として捕まる。しかし事件を取り調べる「笠森判事」は、斉藤が犯人という決定的な何かが欠けていると感じていた。さらに事件の日、蕗谷が大金の入った財布を届けたという話を知り、蕗谷を召還すると「心理試験」を受けさせる事にした。

 心理試験とは、対象者に様々な単語を聞かせ、その際の肉体的な反応を見てウソをついているかどうかを判断する、というものである。ところが蕗谷はあらかじめ「『犯罪』と聞かれれば『人殺し』と答える」といった風に試験の内容を想定して準備していたため、何の手がかりもつかませないまま試験を切り抜ける。笠森は斎藤も蕗谷も犯人とは断言しきれないと困っていたが、そこに明智小五郎が現われ、蕗谷に疑いの目を向けると、ある事を提案する。

 笠森は蕗谷に「斎藤が犯人と決まったので疑った事をお詫びしたい」という名目で自宅に呼ぶが、そこに殺された老婆の遺産管理関係の弁護士が現われる。弁護士は、蕗谷に「老婆が借金のカタに取り立てていた六歌仙の屏風に傷がついていたが、知らないか」と質問し、蕗谷は事件の二日前に老婆の家で屏風を見たが傷は無かったと答える。しかし実は屏風は事件の前日の夕方にあの家に届いたのであり、二日前に蕗谷が屏風を見たはずが無かった。弁護士はもちろん明智の変装で、蕗谷が質問に答える際に妙な小細工を弄したりしない、という性格を見抜いて罠を仕掛けたのだった。蕗谷は有ったはずの無い屏風を見たと答えた理由を突っ込まれ、犯行を認めざるを得なかった。


■感想

 三部作の第二話。前回「D坂の殺人事件」が非常に面白かったため、今回も期待していたが、それに違わぬクオリティで大満足。

 ただし、かなりエキセントリック/風変わりな作品だった。冒頭に「ほぼ原作に忠実に映像化した」という字幕が出て、多分あらすじ自体はそうなのだろうが、演出自体は奇抜である。まず手始めに、登場人物たちが画面のこちら側の視聴者に向かって自分の考えている内容を語る、というシーンが随所にあったりする。

 こういった手法自体は前例が無くもないが、続く明智小五郎満島ひかり)の登場シーンが奇妙奇天烈で、笠森判事が事件の真相が分からず部屋で『うわぁぁぁぁん、犯人が分から〜ん』と悶えながら転げまわっていると、いきなり顔に丸めた紙くずが顔にぶつけられ、それを開いてみると「私立探偵 明智小五郎」と書いてあり、そのあと明智が入室してくる、という具合である。こんな登場の仕方をする明智が今まであったら教えてもらいたい(笑) さらに明智が笠森判事に事件の話を聞く際、妙に色っぽい仕草でしなだれかかったりするのである(笑)

 終盤のクライマックスシーンもお笑い含みで、「謎の中国人」といった体の弁護士が、屏風の話で蕗谷を追い込んでいき、逃げられないところまで追い詰めたところで変装を解いていくと実は明智でした〜、という具合である。とどめで、逃げられなくなった蕗谷が精神の平衡を失い、いきなりウワァァァァと叫びだすと、それを見ていた明智も合わせて突然叫びだし、最後に笠森が二人を見て「うるさ〜い、ウワァァァ」と叫んで、三人で叫びながら終わり、という、とんでもない結末なのである(笑) なんなんだこれは(笑)

 女性の演じる明智とか、随所の奇妙な演出とか、一歩間違えると「タチの悪いおふざけドラマ」となってしまうところだが、しかし、ギリギリで踏みとどまっている、というイメージで、個人的には今回も結構面白かった、と評価している。

 キャストは、蕗谷清一郎役が菅田将暉。特撮好きには「仮面ライダーW」のフィリップ役が印象深いが、最近は「ちゃんぽん食べたか」とかNHKドラマとの縁も深いので今回の起用となったのだろうか。良心の呵責といった人らしい感情を欠いた蕗谷役ははまり役だった。また殺される金貸しの老婆役は、何故か嶋田久作である。何故女装させてこんな役をさせますか。

 次回は「屋根裏の散歩者」。満島ひかりの演じる妙な明智が、どうやって犯人を追い込んでいくのか、興味が尽きない。



※第1シリーズ「1925年の明智小五郎」の他のエピソードはこちら→ 第1話 D坂の殺人事件 | 第3話 屋根裏の散歩者
 
※全エピソードの一覧はこちら→ 「シリーズ江戸川乱歩短編集」あらすじ・感想まとめ