感想:映画「ワイルド・スピード EURO MISSION」(2013年:アメリカ)


ワイルド・スピード EURO MISSION [Blu-ray]
関連サイト→日曜洋画劇場テレビ朝日 http://www.tv-asahi.co.jp/nichiyou/
放送 テレビ朝日 2016年1月31日(日)
【※以下ネタバレ】

ワイルド・スピード EURO MISSION
世界的メガヒットシリーズ第6弾、地上波初放送
最強の敵から最愛の女性を救え!!

http://www.tv-asahi.co.jp/nichiyou/bk/data/01807.html

■あらすじ

 ドミニクやブライアンたちは、前作(ワイルド・スピード MEGA MAX http://d.hatena.ne.jp/Perry-R/20140702/p1)で盗んだ金で悠々自適の生活を送っていた。そこにかつてドミニクたちを追い回した宿敵ホブス捜査官が現われ、共闘を依頼してくる。

 ホブスはショウという元軍人が率いる犯罪組織を追っていたが、相手が精鋭のためどうしても捕らえられずにいたため、ドミニクたちの力を借りたいという。ショウの組織には、死んだはずのドミニクの恋人レティが参加していると知り、ドミニクはホブスに力を貸すことにした。

 ドミニクたちとショウたちはロンドンで激突し、互いの力を認識しあう。やがてショウたちが機密チップを盗むためスペインに向かったと知り、ドミニクたちも後を追った。そして壮絶なカーチェイスの末、ショウたちを一網打尽にするが、ショウはブライアンの妻ミアを人質にして逃走する。しかし巨大輸送機で逃げようとするショウたちをドミニクたちが追跡し、結局悪党一味は壊滅し、記憶喪失だったレティはドミニクの元に戻る。ドミニクたちは罪を全て許され、アメリカで幸せに暮らせるようになって、めでたしめでたし。

 最後、日本にいたハンの車が何者かに衝突され、その相手がドミニクに電話で挑戦を叩きつけるシーンで〆。


■感想

 カーアクション映画の一大ブランド「ワイルド・スピード」シリーズの6作目。

 前作のシリーズ5作目「ワイルド・スピード MEGA MAX」で、コンゲーム的に一億ドルの大金を手に入れ、悠々自適の暮らしをしているドミニクたちの元に、かつての宿敵ボブスが現われ、協力を依頼してくる。それは元エリート軍人ショウに率いられた犯罪組織の摘発だった……

 今回はおなじみドミニクとブライアンのダブル主人公に加えて、前作でドミニクたちを追い回した強敵ホブス捜査官(ドウェイン・ジョンソンザ・ロック)が味方になり、共通の敵と戦う、という少年ジャンプ的燃える展開に。少年漫画の場合は、かつての強敵も味方になると途端に弱くなる、というパターンが多いが、ホブスの場合は味方になってもメッチャ強く、きっちり三人目の主人公の地位を確立している。WWEで色々やっていたロックも、本当に凄いスターになったものである。

 カーアクションシーンは相変わらずの量と迫力で、ロンドンの街中・スペインの高速道路・軍基地の滑走路、、と、とにかく走って走って走りまくるため、何も考えずに楽しめる娯楽映画ではあるのだが……

 しかし、今までのシリーズ作品と比較すると、シナリオは随分雑になっているというか、質が落ちた感じがする。今までのシリーズ作品では、それなりに必然性があってカーチェイスシーンがあったが、この映画ではカーチェイスの為に無理やり状況を設定した、という感じが強い。

 まず、ロンドンでインターポールから資料を盗んだショウ一味をドミニクたちが追い回すカーアクションでは、「あんなに派手に逃げなくてもこっそり盗んでこっそり逃げればよくね?」という疑問が付きまとうし、また例えブライアンたちの車を振り切ったとしても、空からヘリで追跡されたらもうアウトではないか、という致命的問題がある。

 また第二の山場の、スペインの高速道路でのアクションは、「戦車が登場する」という時点で半ばギャグになってしまっている。チップを運んでいるはずの輸送車の中から戦車が飛び出してくるのは、客を驚かせる以外の、論理的な必然性は全く無い。確かに高速道路を戦車が逆送していくシーンは見た目は派手で迫力があったものの、もう純粋なカーチェイス映画の範疇を外れてしまっている。それにドミニクが道路から落ちかけたレティを大空中ジャンプで救出するシーンなど、もう人間では不可能なレベルのアクションである。ドミニクが超人的なドライビングテクニックの持ち主なのはいいとして、肉体まで超人化するのはどうなんだと。

 最後の輸送機にワイヤーを引っ掛けての疾走シーンも、派手なアクションを追求しすぎて非現実的世界に飛び込んだ感が強かった。

 さらに、今回の宿敵ショウの描写も不足しており、この男についての印象が殆ど残らない。元エリート軍人という設定だったが、特にそれらしい描写も無く、ただ東地宏樹声だったという事しか記憶に残らないほど影が薄かった。全然倒すべき強敵になっていなかったのは問題であろう。それにしてもこの手のクール系の悪党の声ってやたら東地宏樹である(笑)

 楽しめる映画だった事は間違いないが、どうも方向性が妙な方に行き始めた感がある。そのうち宇宙にでも飛び出すのではないかと心配になってくる映画ではあった。

■監督
ジャスティン・リン


■キャスト
ドミニク・トレット ヴィン・ディーゼル楠大典
ブライアン・オコナー ポール・ウォーカー高橋広樹
ルーク・ホブス ドウェイン・ジョンソン小山力也
レティ ミシェル・ロドリゲス甲斐田裕子
ミア ジョーダナ・ブリュースター園崎未恵
ローマン タイリース・ギブソン(松田健一郎)
テズ クリス・“リュダクリス”・ブリッジス(渡辺穣)
ハン サン・カン(川島得愛
ショウ ルーク・エヴァンス東地宏樹

http://www.tv-asahi.co.jp/nichiyou/bk/data/01807.html