感想:映画「ワールド・ウォーZ」(2013年:アメリカ)


ワールド・ウォーZ Blu-ray

関連サイト→金曜ロードシネマクラブ https://kinro.jointv.jp/
放送 日本テレビ 2016年2月19日(金)

【※以下ネタバレ】

https://kinro.jointv.jp/lineup/160219/
ワールド・ウォーZ
2016.2.19 21:00〜22:54
謎のウィルスによって大混乱に陥った世界
果たして人類に生き延びる道はあるのか!?

あらすじ

 元国連職員ジェリー・レインは、家族と車に乗っている最中、街中で大混乱に巻き込まれる。それは、凶暴化した人間が他人を襲って噛み付き、噛まれたほうもすぐに凶暴化していく、という恐ろしい事態だった。この未知の伝染病は猛烈な速度で拡散し、世界中が大混乱に陥り、文明は崩壊しつつあった。ジェリーは治療法を探すため感染源を求め、韓国・イスラエルと移動するが、何の手がかりも得られない。しかし感染者「Z」が、病気を持っているらしい人間は無視していたことに気が付き、健康な人間にある種の病気を感染させれば、Zたちから手出しされない事を身をもって証明した。WHOはZが健常者を病気だと誤解する「カモフラージュワクチン」を量産し、各地に配布した。人類はZとの戦いに勝機を見出した。しかし戦いはまだまだ続く。おしまい。


感想

 評価は○。

 プラッド・ピット主演のゾンビ映画で、ほどほどには楽しめる内容だった。タイトルはスーパーヒーロー物か何かのような語感だが、実際のところは直球のゾンビ映画である。ちなみにブラピは主演だけでは無く制作者も担当しており、何故プラピ級の知名度とキャリアを持つ俳優が今更ゾンビ物などに関わるのか、と思ったのだが、実際にはプラピ主演映画の中で一番利益が出た作品だという。製作者としての嗅覚が見事だったということだろう。

 ブラピ演じるジェリーは元国連職員で、世界各地の紛争地帯などの修羅場を見てきたらしく、心身が疲れ果てて国連を辞め、今は主夫をしながら妻&二人の娘と暮らしていた。ところがある日、家族で車に乗っていたところ、テロの現場的状況に巻き込まれる。しかも爆発の方向からやって来た人間が、突然別の人間に喰らい付いた……

 と、家族の平凡な日常の描写や、ゾンビ渦がジワジワ拡大していくような過程はすっとばし、すぐにゾンビ大暴れ状態に移行してしまうので退屈せずにすんだ。この映画に出てくるゾンビは、人を襲うときには常に全力疾走という元気な連中で、ゾンビ軍団がわーっと道路を走ってくる描写は異様な迫力がある。またゾンビに噛まれるとゾンビになる、という定番設定も押さえているが、感染速度が異常に早く、噛まれると地面で10秒間痙攣→すくっと立ち上がるとゾンビ一丁あがり!、というスピーディーさである。いくらなんでも10秒で感染する病原菌とか無いだろうと思うのだが、そのあたりの突っ込みは無粋なのだろうか。

 ジェリーは国連時代の知人のコネで、一家ごと大西洋上の空母に疎開することが出来たが、元上司からは船から追い出されたくなかったら働けといわれ、イヤイヤ仕事に復帰する羽目になる。しかし、この時のジュリーの拒否も、仕事復帰を聞いた妻の嘆きも、儀礼的というか全く心がこもっていなかった。まあここで妙に愁嘆場とかを演じられても面倒くさいだけでは有るので、軽く流すのが正解なのだろう。

 ジェリーは、感染者「Z」(ゾンビの頭文字)を生み出した感染源の手がかりを求め、科学者と共に韓国に行くが、ここでいきなり笑いを取ってくるのに意表を突かれた。人類の希望とまで言われていた科学者が、ゾンビの襲撃に怯えて転び、持っていた銃を自分の頭に向けて暴発させ、そのまま即死してしまうのである(笑) 希望がいきなり潰えるという展開は爆笑ものだった。またジェリーは安否確認のため妻に携帯電話を渡していたのだが、音を立てればゾンビに見つかってしまう、という丁度良いタイミング(?)で妻が電話をかけてくる展開には正直イラついた。どうもこの妻は夫の仕事にまるで理解が無い様である。まあ、娘共々名前を覚える必要も無いくらい出番が無かったのだが(笑)

 そのあとブラピはイスラエルの首都エルサレムに向かうが、ここでもお笑いシーンが用意されており、エルサレムの周囲を覆う巨大な壁の近くをゾンビたちがウロウロしているのだが、市内からの物音に反応して一致団結して人間(ゾンビ)はしごを作って乗り越えてくるのである。ここでもうゾンビは怖い存在では無く、「そんなバカな!?」と突っこみを入れてしまう何かになってしまっており、心底バカ負けしてしまった。

 と、アメリカ→韓国→イスラエル→飛行機の中、といずれもブラピ対ゾンビ軍団の対決を描き(バカ負けしつつも)手に汗握る展開の映画だったのだが、終盤いきなり展開がしょぼくなる。ウェールズにあるWHOの研究所内部で、ブラピとゾンビの鬼ごっこがクライマックスなのだが、今までが派手すぎるほどに派手な展開だったため、落差が激しくて違和感が物凄かった。調べてみたところ、どうも当初制作したストーリーに映画会社からNGが出てしまい、仕方なく作り直したのだがお金が足りず、ああいうみみっちい展開になってしまったらしい。まさに尻すぼみの一言だったが、全くの失敗というほどでも無かったとは思う。「突然退屈になったなぁ」と思ったくらいで。

 結末も、まあこんなもんだろうというところに着地しており、破綻したというほどでも無かった。ということで、再度見直したいとは思わないが、軽く楽しむには悪くない映画だった、とは思う。しかしこれがブラピ史上一番売れた映画というのは、本人としてはどういう気持ちなのだろうか。


 ちなみに、吹き替え声優は、ブラピを洋画の主演でおなじみ堀内賢雄、その他の名もないキャラたちに、大塚芳忠井上和彦若本規夫玄田哲章浪川大輔たちが揃っており、豪華さ満点だった。さらにアニメヒロインでおなじみの釘宮理恵大原さやかも参加しているが、くぎみーはちょい役、大原さやかに至っては顔も出てこないアナウンサー役、と、扱いがえらく低かった。アニメで有名な声優でも、洋画の吹き替えではその威光?は通じないらしい。何か別の評価基準があるのだろうか。


スタッフ
<監督> マーク・フォースター
<原作> マックス・ブルックス


出演
<ジェリー・レイン>ブラッド・ピット堀内賢雄
<カリン・レイン>ミレイユ・イーノス(篠原涼子
<スピーク>ジェームズ・バッジ・デール(大塚芳忠
セガン>ダニエラ・ケルテス(坂本真綾
空挺部隊員>マシュー・フォックス井上和彦
バート・レイノルズデヴィッド・モース若本規夫
<ティエリー>ファナ・モコエナ玄田哲章
<レイチェル・レイン>アビゲイル・ハーグローヴ(鈴木梨央
<コニー・レイン>スターリング・ジェリンズ(佐藤 芽)
<ヴァルムブルン>ルディ・ボーケン(磯部 勉)
<トーマス>ファブリツィオ・ザッカリー・グイド(釘宮理恵


すべての希望はこの男に託された…
ブラッド・ピット史上最高ヒット作が登場!

愛する家族、そして人類を守るため
ひとりの男が未知の敵との戦いに挑む!


ハリウッドスターの中でもトップクラスの人気を誇る「ブラピ」こと、ブラッド・ピット
数あるブラピの主演作の中で、史上最高のヒットを記録した超大作が地上波初登場!!
俳優だけでなく、プロデューサー業もこなすマルチなブラピが主演に加えて自ら製作も担当したのが本作だ。それだけ力が入った超大作は、いったん見始めるとあっという間に引き込まれる魅力と迫力がいっぱい! 彼が演じるのは、家族を愛する元国連調査員。世界各地で突如として発生した未曽有の危機に対応するため元の職場に呼び戻され、家族、そして人類を救うための戦いに挑む! 一体世界で何が起きているのか、人類に生き延びる道は存在するのか…。物語は先を読ませない怒涛の展開をみせ、衝撃のラストまで一気にかけ抜ける。ハラハラ・ドキドキしたい人は特に必見!感動の人間ドラマとしても見ごたえ抜群のパニック・エンターテインメントだ!

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