感想:映画「パシフィック・リム」(2013年:アメリカ)


パシフィック・リム [Blu-ray]

土曜プレミアム http://www.fujitv.co.jp/b_hp/160305premium/index.html
放送 フジテレビ 2016年3月5日(土)

【※以下ネタバレ】


あらすじ

 2013年、太平洋の底に異次元と通じる穴が開き、そこから怪物が侵入してきたが、軍に退治された。ところが以後も怪物は次々と出現し、人類に被害を与え続けた。人類は怪物を「KAIJU(カイジュウ)」と呼ぶようになり、一致団結して人型戦闘ロボット「イェーガー」を建造し、カイジュウと戦いを繰り広げた。2020年、イェーガーのパイロットのローリー・ベケットは、兄とのコンビでカイジュウを迎撃するが、その際に兄は戦死してしまう。

 5年後、カイジュウの出現頻度が上昇し、イェーガーの損害が大きくなりすぎたため、人類はイェーガーによる防衛を諦め、海岸線に巨大な壁を作って引きこもることを決めた。イェーガー部隊の司令官ペントコストは各国の支援に頼らずに、部隊を独自に運営する事を選ぶ。パイロットを辞め、壁の建築に携わっていたローリーは、ベントコストによってイェーガー部隊に呼び戻される。

 ベントコストはホンコンに基地を構え、イェーガーに爆弾を持たせて太平洋の穴を塞ぐ計画を立てていた。ローリーは日本人森マコをパートナーにイェーガーに乗り込む。激戦の末、ローリーとマコのイェーガーは太平洋の穴に爆弾を放り込んで破壊し、ついに人類はカイジュウの脅威から解放された。


感想

 評価は○。


 ギレルモ・デル・トロ監督のSF怪獣ロボット映画。ハリウッド資本で作った「巨大ロボットと怪獣のバトル物」という、日本のアニメか特撮のテレビ番組みたいな作品だが、そこそこには楽しめた。


 21世紀。太平洋の底に異次元への穴が開き、そこから次々と巨大怪獣が出現して都市を襲撃。人類は怪獣に対抗するために、人間が操縦する人型戦闘ロボット・イェーガーを建造し、怪獣を迎え撃った。しかしその後人類は怪獣と戦う意欲を無くし、巨大な壁の内側に引きこもる事を選んだ……

 というあらすじを聞くと、オタクならば「新世紀エヴァンゲリオン」と「進撃の巨人」を連想するところだが、さすがに作品の雰囲気自体は日本の漫画やアニメ作品とは違い、バリバリのハリウッド調となっている。主人公ローリーが、兄が戦死して戦意を喪失し負け犬状態となったあと、元上司の叱咤で復職する、という流れはまさしくハリウッド映画の王道という感じである。


 主人公たちが操る巨大ロボ・イェーガーだが、デザインがメッチャクチャダサく、21世紀の火星大王と呼んでもいいくらいで、映画に対する興味がややそがれたことは否めない。どうせならスタジオぬえ辺りに依頼すれば、有名な「宇宙の戦士」のパワードスーツ的なカッコイイ物をデザインしてもらえたと思うのだが、アメリカ人の感覚からすると、あのイェーガーのデザインこそが至高なのだろうか。

 そしてイェーガーの操縦は二人一組という設定だが、その操縦シーンが実に笑える。ジャンボーグA型というかで、パイロットが体を動かすとイェーガーがその動きをトレースして同じ動作をする、という物なのだが、足の部分がペダルみたいになっていて、オイッチニ、オイッチニと足を踏み込むとイェーガーが歩く、というシステムなのである。いやまあ、確かに理屈は分からなくもないが、敵と戦いながらエクササイズをしているようでかなり間が抜けた感じなのは否めない。それとイェーガーのパイロット二人が別々の動作をしたら、イェーガーはどう動くのか気になって仕方なかった。


 ベントコストが基地を構えているのがホンコンで、イェーガーのパイロットにも中国人がいる、という設定は、ハリウッドの中国への接近を感じさせる。今では中国市場はハリウッドの良いお得意さんらしいので、わざわざアメリカでは無く中国のホンコンに基地を構える事で、中国の観客のウケを狙おうとしたのでは、と考えてしまう。


 戦場に戻ってきたローリーに、現エースのチャック・ハンセンが「おいおいロートルが戻って来てんじゃないよ、せいぜい俺の足を引っ張らないようにしてくれよ」とイチャモンをつけて来るのが、もうハリウッド映画のお約束で笑ってしまった。ちなみにローリーがチャックとバトルになった際、柔術の技(オモブラッタかな?)で押さえ込むシーンはちょっとオオッと思わされた。


 イェーガーとカイジュウとのバトルシーンは、とにかく見づらくて仕方なかった。画面が暗すぎて何がなんだかさっぱりわからなかったのである。これは「トランスフォーマー」を見たときにも似たような分かり辛さを感じたのだが、アメリカ人は巨大ロボのバトルを演出するのに何かヘンな拘りが有るのだろうか。


 基本的に知らない俳優ばかり出てきて、多少知っているのが菊地凛子程度だったので、後半に怪優ロン・パールマンが出てきたのにはホッとした。それだけに、パールマン演じるハンニバルが怪獣に食われてしまった時にはあっけに取られたが、最後に怪獣の腹を切り裂いて出てくるのには笑った。


 最後はベントコストやチャックの犠牲を超えて、ローリー&マコが異次元の穴を吹き飛ばしてめでたしめでたし、だったが、ストーリーが単純な割には話が長ったらしく、こんな内容で上映時間が2時間以上というのは、はっきり言って長すぎると思う。映画館で見たらかなり疲れたのでなかろうか。


 まあ悪くは無かったが、本当に「悪くは無かった」程度であり、ハリウッドと日本の特撮文化が融合した大傑作!ではなかったというのが正直な感想である。


深海から突然、出現した巨大で凶暴なエイリアン“KAIJU”。それは何年にもわたって何百万もの人命を奪い、人類の資源を消耗していく戦いの始まりだった。巨大なKAIJUと戦うため、人類は特殊な兵器を開発。“イェーガー”と名づけられたその人型巨大兵器は2人のパイロットが同時に操縦する。
彼らは操縦前に、神経ブリッジを通して互いの脳を同調させる“ドリフト”というプロセスを経て戦闘態勢に入るのだ。最初は優勢だったイェーガーだが、KAIJUは出現のたびにパワーを増していき、その容赦ない襲撃の前に、人類は対抗できなくなっていく。
いよいよ滅亡の危機に瀕し、人類を必死に守っている者たちに残された選択肢はただ1つ。疲れきって一度はパイロットをやめた男(チャーリー・ハナム)と、実戦経験のない新人(菊地凛子)という、ふつうなら考えられない2人がコンビを組み、旧式のイェーガーで戦うことになった。彼らは、迫りくる滅亡を食い止める人類最後の希望としてKAIJUに立ち向かう。



スタッフ
【監督】
ギレルモ・デル・トロ

【脚本】
ギレルモ・デル・トロ
トラビス・ビーチャム


出演者
ローリー・ベケット …チャーリー・ハナム 杉田智和
スタッカー・ペントコスト …イドリス・エルバ 玄田哲章
森マコ …菊地凛子 林原めぐみ
ニュートン・ガイズラー博士 …チャーリー・デイ 古谷徹
チャック・ハンセン …ロブ・カジンスキー 浪川大輔
ハーク・ハンセン …マックス・マーティーニ 池田秀一
森マコ(幼少期 …芦田愛菜
ハンニバル・チャウ …ロン・パールマン ケンドーコバヤシ
ハーマン・ゴッドリーブ博士 …バーン・ゴーマン 三ツ矢雄二
テンドー・チョイ …クリフトン・コリンズ・Jr 千葉繁

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