感想:アニメ「アクティヴレイド -機動強襲室第八係-」第11話「ジャパンスタイル」


Golden Life/OVERNIGHT REVOLUTION

TVアニメ「アクティヴレイド -機動強襲室第八係-」公式サイト http://activeraid.net/
放送 BS日テレ。全12話。

【※以下ネタバレ】

第11話 『File11 ジャパンスタイル』

あらすじ

 日本の公共機関の情報は「国家公共統合情報基盤」というシステムで一元管理されており、三重に作られたシステムの拠点はまとめて「オロチ」と呼ばれていた。ミュトスは三箇所のうち「オ」と「チ」をハッキングでコントロール下においてしまう。唯一の残った「ロ」も、緊急事態を検知し、保存していたデータを自動的に全て消去したため、事実上日本の情報システムはミュトスの支配下に置かれていた。ミュトスは必要最低限のインフラ以外は停止させ、ネット・電話などの機能は使用不可能になったため、政府は非常事態を宣言する。

 幸運にも第八の機材は、ミュトスが騒ぎを起こす直前に解体準備で封印されていたため、影響は最小限に留められていた。バード/八条司稀(はちじょう・ともき)は、自身の楽しみのため、あさみにわざわざ事態打開のヒントを与える。それは、実は「ロ」のデータは総務省が政府にも内密にバックアップを保存しており、ミュトスは現在それを狙っている、という事実だった。

 第八は、吉祥寺の周辺で、深夜にフリーソフト「Liko」のイメージキャラクターの幽霊が出るという噂を知り、調査に赴く。調べてみると信号機にLikoのホログラムを投影する仕掛けが見つかり、機器はどこからか遠隔操作されていた。操作元を辿ると、何故か陽の私物のパソコンにたどり着き、その中には以前司稀が仕込んだプログラムと、暗号ファイルが見つかる。第八は暗号のキーが陽の声だと突き止め、内容を確認すると、井の頭公園近くにあるビルのデータが表示される。

 第八はここに「ロ」のバックアップがあると確信し、データを守るために出動した。ビルは既に自衛隊が守りを固めていたが、ミュトスに情報を操作され、第八のウイルウェアをテロリストだと誤解して攻撃してくる。第八は自衛隊の指揮車両を破壊してミュトスの妨害を止めるが、既にミュトスは「ロ」のデータにアクセスした後だった。そして唐突にLikoをインストールしたコンピュータから、ミュトスのものになったというメッセージが発せられる。

脚本:荒川稔久


感想

 評価は◎。


 国家の基盤システムを乗っ取った情報テロリストと警察組織の対決、という第一期終盤を飾るに相応しい展開。第八メンバー・陽・司稀・ミュトス・本庁、等の人間のドラマが上手く描かれ、群像劇としても申し分の無い出来栄え。クールの序盤から中盤までは実にかったるい出来だったため(これでもマイルドな表現)、こうして尻上がりに話のクオリティが上がってくると、今まで見捨てずについてきたかいが有ったと嬉しくなる。しかながら、本気を出せばこれだけ出来るなら、最初から出し惜しみせずに見せてきて欲しかった、というのが正直な気持ちではある。


 冒頭に国家の情報システムを乗っ取られたため、電話もネットもテレビも新聞の発行さえも出来なくなる、という描写が有るのだが、未来とはいえそこまで官民一体のシステムが存在するものなのか、という疑問が湧いた。現実に2016年時点で官公庁関係のシステムは、マイナンバー絡みの不具合とかが多発しているが、それと民間のネット使用とかは全く別の話である。もしかして、この作品世界の日本政府は現実の独裁国家並にネットインフラなどを全て管理下に置いて検閲でもしているのだろうか。まあ、都知事が犯罪者とツーカーで繋がっていて政敵暗殺を気楽に実施するバイオレンスな世界観のようなので、今まで視聴していて気が付かなかっただけで、意外にこのアクティヴレイド世界の日本は暗黒時代なのかもしれない。


 途中、陽の声で暗号ファイルの音声パスワードを解読するくだりがあるが、正直何を言っているのかサッパリ分からなかった。ラテン語とかRIPとか、公務員の皆さんは頭が切れるのですいすい理解できたようだが、視聴しているこっちは理解が追いつかなかった。まあ「八条司稀がヒントを残していました」という要点が分かったので良しとしたい。


 地味っ子・天野円(元覆面ギャンブラー)が、ネットが使えなくてストレスで「ヴァァァァ」と叫びだすシーンは、これは心底納得できた。端末は有るのに無線LANの調子が悪くて接続できないと、ただ端末が無いより余計ストレスが溜まるものである。


 終盤、第八のウェルウェア搭乗者が揃って出撃する様が描かれたが、あのシーンは高揚するというよりは、「指揮官まで前線に出るのはどうか」という考えの方が先にたった。戦隊物でも無いのだし、メンバー全員が現場に出向く必要も無いのではないか。全体を俯瞰して指示を出すべき凛や、参謀役の舩坂まで一緒に出動して、銃火に身をさらすのはいささか問題の様に思える。指揮官は指揮官で後方でやることがあるはずであろう。


 最後、ミュトスがついに全システムを乗っ取ったことが暗示されたが、次回の第一部完結編はどうなるのか見当もつかない。もう警察の一部署が力技でどうこう出来る事態を超えている。こうなると、「蒼き流星SPTレイズナー」パターンを持ち出してくるのでは、と思えてくる。レイズナーは二部構成アニメで、第一部最終回で主人公たちが敗北し絶望的な状況で幕を閉じる、という斬新な展開だった。アクティヴレイドも第一部でミュトスが日本を征服してしまう、というところで〆となり、第二クールは変わり果てた日本で第八のメンバーがあれこれする、とかいう話になるのではなかろうか……、まあ、そこまでやれば凄いとは思うが、実際のところは第八メンバーが、ミュトスの乗り込むウィルウェアと大決戦を繰り広げてオロチを取り戻す、というところだろう。まあ何にせよ次回が楽しみでたまらない。