感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン6」第4話「ドリームランド Part1」


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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン6 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】



※シーズン6の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン6」あらすじ・感想まとめ


第4話 ドリームランド Part1 DREAMLAND

あらすじ

http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
EP4 ドリームランド Part1
エリア51の職員という男から極秘情報提供の連絡を受け、モルダーとスカリーは基地へ向かう。しかし軍の飛行機実験場に近いという理由で止められ、その先へ進めずにいた。

 お題は「軍の極秘実験、時空の歪(ゆが)み」。

 モルダーは、ネバダ州の空軍基地・通称「エリア51」の職員から情報提供の連絡を受け、スカリーと共に会合地点に向かっていた。エリア51は、過去50年間にわたり宇宙人の技術で実験を行なっている、と噂の基地である。ところがモルダーたちは軍の兵士たちに車を止められ、尋問を受けている最中、空からまぶしい光に照らされ、次の瞬間モルダーの精神が尋問相手の「モリス・フレッチャー」の中に入ってしまう。モルダーはなんとかモリスのふりをして周囲を誤魔化し、翌日スカリーに連絡を取るが、精神が入れ替わった云々という話は信じてもらえず、いたずら電話扱いされて終わる。

 エリア51では、前夜「反重力エンジン」を搭載した実験機が墜落し、パイロットが生きたまま岩と融合しているのが見つかっていた。さらに、別のパイロットとポピ族の老婆の精神の交換、岩と融合したトカゲの発見、ガススタンドの主人の地面との融合、など、次々と奇怪な現象が確認される。軍は墜落機の反重力エンジンによる時空の歪みのせいだと考える。その発生点は、丁度昨日モルダーたちが尋問された場所だった。

 一方、モリスの精神はモルダーの肉体に入っており、モルダーのふりをして上手くやっていた。スカリーはモルダーが別人の様になり、X-ファイルの仕事とは手を切る、と言い出したのを聞き、唖然とする。スカリーは前日の電話がネバダ州からかかって来ていたと知り、情報提供者ではないかと考えて一人でモリスの家に行き、(モリスの姿の)モルダーと会う。モルダーはスカリーに状況を説明するが、やはり信じてもらえない。そして、それを(モルダーの姿の)モリスが見ており、モルダーを騙ってエリア51に密告の電話を入れる。

 モルダーは、基地から墜落した機体のフライトレコーダーを盗み、外で待っていたスカリーに届ける。ところがそこには軍の兵士が待ち構えており、(モリスの姿の)モルダーは裏切り者として逮捕される。続く。


監督 キム・マナーズ
脚本 ヴィンス・ギリガン&ジョン・シバン&フランク・スポトニッツ


感想

 評価は○。

 今回はX-ファイルの王道と言うべきUFO関係のエピソードだが、軍事機密に関わるシリアスなエピソードの合間に、ふざけたようなコミカルなシーンが挟み込まれており、どうにも評価の難しい回となった。


 今回のテーマは「エリア51/軍の作ったUFO」。エリア51は実在する基地だが、UFOビリーバーの間では「墜落したUFOの残骸や宇宙人の死体が回収され隠されている」「UFO技術を応用した新型機がテストされている」という事で有名な場所である(もっとも、軍事マニアの間では、単に最新型機のテストをしているので機密にされているだけ、というのが共通認識だそうだが……)。その基地での新型機のテスト中の事故により、時空の歪みが発生し、様々な怪現象が引き起こされる、というあらすじ自体はなかなかに魅力的である。生きたまま岩に融合したパイロットや、頭が石にめり込んでいるトカゲ、二枚のコインが重なって一つになっている場面、といった描写は結構ショッキングな物があった。


 しかし、このエピソードは何故かシリアスに徹しておらず、妙にコミカルなシーンを入れてしまっているため、どうにも微妙な雰囲気となっている。前提として、この回は、モルダーとモリスの精神が入れ替わったのを役者自身の入れ替わりで表現している。つまり視聴者視点では、エリア51にはモルダーが、FBIにはモリスが、それぞれ戻って行ったと見えるのだが、登場人物たちにはそう見えてない、というわけである。なかなかトリッキーな表現である。

 これが効いて来るのが、まずモルダーがモリス宅に戻ったシーン。モルダー/ドゥカブニーが、名前も知らないモリスの家族(妻&娘&息子)相手に必死で適当に話を合わせる展開が笑いを誘う。モリスはエリア51の機密保護を仕事とするかなり重要な人物らしいのだが、仕事内容を知らない家族からすると、仕事仕事と言って家庭を省みないダメな夫・父親でしかなく、皆から邪険に扱われるシーンは妙におかしい。

 さらに、明らかに笑いを取りに来ているのがモルダーの着替えシーン。モルダーが鏡の前に立つと向こう側にはモリスの姿が映っており、モルダーが様々なポーズを取ると当然向こうも同じ動きをする。さらに突然モルダーがノリノリで軽快なBGMに合わせて踊りだしたりするのである。当然、この場面は鏡は無くて素通しで、向こう側にモリス役の俳優マイケル・マッキーンが立っていて、ドゥカブニーと同じタイミングで鏡に映った風なポーズを取っているわけである。この辺りはもうコメディ番組のコントにしか見えない。マイケル・マッキーンはコメディアンでもあるそうなので、そういう事を意識したお笑いシーンだったのだろうか。

 今回は(モリスの体の)モルダーが、軍事機密を盗んだ罪で兵士に連行される、という危機一髪的なシーンで幕を閉じるが、全く危機感を感じなかったのはやはり多用されたお笑いシーンのせいだと思われる。今回は、ヴィンス・ギリガン/ジョン・シバン/フランク・スポトニッツというベテランライターが三人がかりで仕上げたシナリオの割に、イマイチ感が漂う残念な話となった。


一言メモ

 サブタイトルの「ドリームランド」とはエリア51のニックネームの事。そのほかに「ジ・ランチ」「パラダイスランチ」といった呼び方も有る。