感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン6」第5話「ドリームランド Part2」


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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン6 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】



※シーズン6の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン6」あらすじ・感想まとめ


第5話 ドリームランド Part2 DREAMLAND II

あらすじ

http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
EP5 ドリームランド Part2
モリスと入れ替わったモルダーは、密告者として逮捕される。だがFBIに渡そうとしていたフライトレコーダーが、なぜか別の機体の物であったため、かろうじて釈放される。

 お題は「軍の極秘実験、時空の歪(ゆが)み」。


 第4話「ドリームランド Part1」の続き。モリス(中身はモルダー)は、基地の兵士に捕まるが、フライトレコーダーが墜落機のものでなかった事から改めて説明を求められる。モルダーは事情は解らないながらも、全てはエリア51内にいる密告者をあぶりだすための芝居だったと主張して、どうにか罪を免れた。

 同じ頃モルダーの体に宿ったモリスは新生活を満喫していた。しかしとうとうスカリーに正体を見抜かれ、事情を洗いざらい説明させられる。そこにまたもエリア51の密告者から連絡が入り、モリスが会いに行くが、なんと密告者は基地司令官のウェルマン将軍だった。ウェルマンはモルダーに「UFO」を見せるため、わざと新型機のステルス装置を破壊しておいたという。そこにモリスの体のモルダーも現われ、色々あったものの、三人は事情を把握しあい、モリスは将軍から預かった本物のフライトレコーダーを持って帰る。

 その後、モルダーはウェルマンと話すが、ウェルマンはただ新型機をテストしているだけで、宇宙人の事など詳しい事は全く知らず、逆にモルダーから宇宙人関係の話を聞きたくて呼び出したと知り、唖然となる。

 スカリーはフライトレコーダーをローン・ガンメンの三人に調べてもらうが、モルダーが元に戻るためには事故のときと全く同じ条件を再現するしかなく、事実上不可能と判明する。ところが時空の歪みの影響で破壊されたはずのガソリンスタンドが元に戻っているなど、全ての異常が逆戻りをし始めていた。モルダーとモリスは体が入れ替わった場所に戻ると時間が逆転し、全てはなかったことになった。モルダーもモリスも何の異常もないままそれぞれのいる場所へと戻った。


監督 マイケル・ワトキンス
脚本 ヴィンス・ギリガン&ジョン・シバン&フランク・スポトニッツ


感想

 評価は○。


 前回の第4話「ドリームランド Part1」に続いてのエリア51&UFO話で、X-ファイルが大得意とするタイプのエピソードかと思われたのだが、最後まで見て気がついたのだが、実はこのドリームランド二部作はまさかの「コメディ回」だった。


 『軍の新型機の事故により時空の歪みが発生。その影響で人間の精神交換や建物の破壊など恐ろしい現象が発生し、それがどんどん拡大していき……』という恐怖を描いたエピソードかと思っていたが、どっこい実は「若い男モルダーの体を手に入れた中年男モリスが、新しい人生を満喫する様を描くお笑いエピソード」だったのである。前編では人間と石の融合シーンなどシリアスな要素も見られ、方向性をつかみかねていたが、後編の今回ではお笑い要素を前面に押し出してきていて、ようやくスタッフが何を目指していたのか理解できた次第だった。


 とにかく今回はコミカルなシーンの連続で、

・冒頭の、モリスの語りで、モルダーがX-ファイル事件なんぞにうつつを抜かしている事を揶揄する場面

・モリス(中身はモルダー)が妻から浮気したと誤解されて、妻や子供たちから白眼視される場面

・モルダー(中身がモリス)がスカリーに「口うるさい妻も金をせびるだけの子供もつまらないメンインブラックの仕事もうんざりだ!」云々と愚痴る場面

・モルダーとモリスが酒場のトイレから一緒に顔を出して覗いている場面

・モルダー(中身がモリス)がローン・ガンメンに会い、三人が自分の偽装工作に引っかかっているのをヘラヘラ笑う場面。

・さらにローン・ガンメンに、サダム・フセインはアメリカが無名俳優を使って作り上げた架空の人物だとか、モニカ(・ルインスキー。クリントン大統領の不倫相手)も自分たちが仕掛けた、とか得意げに語る場面。

・ウェルマン将軍が実は機密事項など何も知らなくて、逆にモルダーに「宇宙人は本当にいるのか?」と尋ねてくる場面

 など、とにかく面白おかしい場面のオンパレードだった。


 終盤、モルダーの体のモリスが、あれほど嫌っていた妻に久々に会って、結婚式のエピソードとかを口にして体が交換されていることを明かす場面は、「心と体が入れ替わりモノ」にありがちな展開だったが、これで今回の二部作が「モリスがうるさい家族や嫌な仕事から解放されて新しい人生を生き直すつもりだったが、やはり妻が大事だったことに気がつく」という、中年男モリスの物語であった事を明々白々に物語っていた。要するにUFOとか時空の歪みとかいうのは重要では無く、モリスに一時的に新しい生活を始めさせるための背景設定に過ぎなかったわけである。


 最後の解決策が、モルダーたちがなにをするわけでもなく、「勝手に時空の歪みが戻ってしまい、何も起きなかった事になる」というデウス・エクス・マキナ的結末になったのには心底脱力したが、今回の二部作が真面目なSF話では無く、「中年男が主人公のおとぎ話」だったと考えれば納得が行かなくもない。モリス役の俳優マイケル・マッキーンはコメディアンとしても有名な人物だそうで、日本の視聴者にはわかりづらかったが、本場アメリカの視聴者からすると、「この人がゲストだから今回はギャグ話だな」とかは容易にわかることだったのかもしれない。それでも、わざわざ前後編でこんなコミカル話をやってしまうとは、X-ファイルも初期からえらく遠いところに来たものだ、と思ってしまった。

一言メモ

 サブタイトルの「ドリームランド」とはエリア51のニックネームの事。そのほかに「ジ・ランチ」「パラダイスランチ」といった呼び方も有る。


もう一言

 劇中で無名キャラ三人が「黒い郵便箱だ!」と大騒ぎするシーンが有ります。これはオカルト好きで無いと意味が解りませんが、この「黒い郵便箱/ブラックメールボックス」は、エリア51に通じる道に唐突に立っている、エリア51好きには聖地みたいな有名なモノだからです。