感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン6」第9話「S.R.819」


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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン6 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン6の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン6」あらすじ・感想まとめ

第9話 S.R.819 S.R.819

あらすじ

http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
EP9 S.R.819
スキナーはボクシングのトレーニング中、目がかすみ、パンチを受けた弾みに倒れ病院に運ばれる。やがて退院するが、目のかすみは取れず、肋骨あたりの痣がますます広がる。

 お題は「ナノテクノロジー」。


 冒頭、スキナーが病院で死亡するシーンから始まる。

 その24時間前。スキナーはボクシング中に不調で倒れ、病院に運ばれた。そこに何者からか電話がかかり、スキナーの命はあと24時間だと告げる。スキナーの体調はさらに悪化し、心配したモルダーとスカリーは、毒を盛られた可能性を考え調査を始める。

 モルダーは僅かな手がかりを追い、旧知のマディソン上院議員が提出した法案「S.R.819」をスキナーが審査していることを掴む。その法案は、表向きは平凡な基金の設立案だったが、実際はナノテクノロジー兵器の輸出に関わるもので、法案を通そうとする何者かが邪魔なスキナーの暗殺を目論んだらしい。マディソンはモルダーに何をしてもムダだと警告する。

 一方、スカリーはスキナーの血液内に炭素が存在し、それが異常増殖して血管を塞ぎ血行障害を引き起こしている事を知る。しかし医学的に打つ手が無く、24時間目にスキナーは死亡する。ところが直後スキナーは蘇生し、血行障害は綺麗に消えうせていた。

 三週間後。S.R.819法案の提出は中止された。モルダーは今回の事件は、本当にS.R.819法案を通すための陰謀だったのかと疑い、犯人には何か別の目的が有ったのではと考えるが、スキナーはモルダーたちに事件の調査をやめるように命じる。その一方でスキナーは今回の事件の犯人から、いつでもスイッチを入れて殺せると脅されていた。その脅迫者とはクライチェックだった。


監督 ダニエル・サックハイム
脚本 ジョン・シバン


感想

 評価は○。

 毒を盛られ残り24時間の命となったスキナーを救うため、モルダーとスカリーが奔走する、というサスペンスストーリー。超常現象要素は薄いが、その代わりクライムサスペンスとして視聴者をひきつける、なかなかの好エピソードだった。

 スキナーが盛られたのは、毒ではなく、正確にはナノテクノロジーを利用した暗殺用武器の様なものであったらしい。詳しい事は不明で、スカリーたちの検査で、スキナーの血液中に「じゅうすい炭素」(?)(multiplying carbon)が増殖している云々という台詞が手がかりとなる程度だが、「炭素で出来ている、自己増殖可能な超小型の機械」という設定だと推測される。そして遠隔操作で、活動レベルを最高にして血液を止めて感染者を即死させたり、逆に非活性化して病状を回復させたり、と自由に出来る様である。このエピソードの放送は1999年1月だが、15年以上前のアイデアにもかかわらず全く古びていない。

 今回は、普段はデスクワークばかりのスキナーが自ら銃を取りアクションに挑むなど、スキナー大活躍の回となった。また、今は部下ではないモルダーとスカリーが、元上司のスキナーの為に尽力する様は、二人が今でもスキナーを慕っている事を示していて、なんとなく嬉しくなる話だった。

 とはいえ、ストーリーに粗が無くも無く、一番の問題は「スキナーがどこで『毒』を盛られたのか結局明らかにならなかった事」である。スキナーとモルダーは最大の容疑者オゲール博士を追いかけてみたものの、博士はスキナーに話をしにきただけだったと判明し、結局この疑問はウヤムヤになってしまった。また、サブタイトルの「S.R.819」は、最終的には本筋では無かったと判明するのだが、そう解ってしまうとこのサブタイトルはどうか、というモヤモヤした物が残った。

 しかし、ラストのクライチェック再登場は衝撃だったので、概ねの不満は吹き飛んでしまった。劇中に出てくる長髪の男は、クライチェック役ニコラス・レアがかつらをかぶって演技していたそうだが、全然解らなかった。

 さて、管理職にもかかわらず余暇には健康的にボクシングで汗を流すスキナー、さすが以前にミスターXと取っ組みあって勝利しただけは有る。休日になると、不健康にもUFO探しや幽霊屋敷探検に出かけてしまうモルダーとは大違いと言えよう。

一言メモ

 序盤にボクシングでKOされたスキナーが病院で目覚めた後、医師とナースが二人とも「耳は大丈夫だから(笑)」と声をかけます。これは意味が解りにくいのですが、実は放送当時(1999年1月)の時事ネタです。1997年6月、プロボクサーのマイク・タイソンが試合の最中に対戦相手のイベンター・ホリフィールドの耳に噛み付いて、その挙句に反則負けを取られるという前代未聞の事件が発生、ボクシングに興味のない人にも伝わるくらいの社会的事件になりました。この「耳は大丈夫ですから」ジョークは、この事件にかけているんですね。