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感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン6」第10話「ティトノス」


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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン6 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン6の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン6」あらすじ・感想まとめ

第10話 ティトノス TITHONUS

あらすじ

http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
EP10 ティトノス
報道カメラマン、フェリッグは人が死ぬ現場に真っ先に駆けつけるという風変わりな特技を持っていた。彼に疑いを持つFBIの捜査官リッターは、スカリーに協力を依頼する。

 お題は「不死」。


 モルダーとスカリーは今度は政府機関への就職希望者の身元調査という閑職にまわされていた。やがてスカリーはカーシュ副長官から呼び出され、最後のチャンスだとしてニューヨーク支局のリッター捜査官との仕事を与えられる。

 ニューヨークに住むカメラマンのアルフレッド・フェリッグは、警察と契約し殺人現場などの写真を撮る仕事をしていたが、フェリッグは事件が警察に通報される前にそれをかぎつけ、死体写真を撮影しているらしかった。リッターは、事件の中にはフェリッグによる殺しもあると考え、殺人容疑で捜査を始めていた。スカリーはフェリッグから死期の迫った人間がわかると聞かされ、実際にフェリッグが示した売春婦はすぐに事故で死んでしまう。一方、モルダーは頼まれもしないのにスカリーの捜査の手伝いを始め、古い書類を調べてフェリッグが1849年生まれで、今年149歳になるはずだと言い出す。

 やがてリッターは、証言をでっち上げてフェリッグの逮捕状を取ってしまい、フェリッグが無実だと確信するスカリーはフェリッグの元へ知らせにいく。そしてスカリーはフェリッグが死体写真を撮るのは「死神」の顔を見るためだと知る。フェリッグはその昔病気で死にかけたが、近づいてきた死神の顔を見ることを拒んだため、その時以来死ねない体になったと嘆く。フェリッグは今までにも何度も自殺を試みたが失敗し、死神を見ることで死ぬ事を望んでいた。さらにスカリーにも死期が迫っていると予告する。

 一方モルダーは、フェリッグが70年前に殺人を犯して終身刑になった後、脱走して指名手配されていることを知り、スカリーの元に急ぐ。踏み込んできたリッターはフェリッグを撃つが、貫通した弾がスカリーにも命中してしまう。フェリッグはスカリーに死神を見ないように目を閉じるように指示する。そしてフェリッグは出血で死亡し、スカリーは命を取り留めた。


監督 マイケル・ワトキンス
脚本 ヴィンス・ギリガン


感想

 評価は○。

 不死を手に入れながら人生に疲れ果て死を求める男と、スカリーの交流を描くエピソード。派手なシーンは無いものの、巧みな展開で引き付けられる秀作回。

 サブタイトルの「ティトノス」については、劇中では全く触れられなかったが、ギリシャ神話に登場する「不死の男」のこと。若くてハンサムな王子ティトノスは、女神エオスに気に入られ、彼女と結婚する。エオスはティトノスが死なないように、ゼウス神に頼んで不死にしてもらうが、「不老」にしてもらう事を忘れていたため、ティトノスはだんだんと老いていき、やがて老人となってしまう。ところがゼウスが与えた不死の為、ティトノスは肉体が衰弱し果ててもなお死ねず……、つまり死から見放された男、アルフレッド・フェリッグを表している。

 序盤は、数十年外見に変化が無く、また人死にが出る場所をかぎつけては無表情に死体写真を撮るフェリッグは、周囲の人間に死を振り撒く死神かと思わせる。しかしやがてフェリッグの口から、その数奇な生涯が明らかにされていくのだが、その過程が実に上手い。フェリッグ役の声優は恐らく故・納谷悟朗氏だと思われるが、もう他人の生死に全く心を動かされない老人の、疲れきった演技は絶品だった。

 フェリッグが死神を見たのは、ニューヨークに黄熱病が流行した時だと語っていた。ニューヨークは1700年代後半から1820年頃まで何度も黄熱病の流行に見舞われているが、フェリッグが死にかけたのが1820年の話だとしても、フェリッグが生まれたのは1760年頃ということになる。つまりフェリッグはアメリカが独立する前からずっと生き続けていたという事で、気が遠くなるような話である。フェリッグはスカリーに自分の妻の名前ももう思い出せないと語っていたが、200年以上生きれば、例え脳が衰えなくても、記憶した事が多すぎてそうなってしまうのかもしれない。

 今回のエピソードは「死神」が重要なキーワードだが、その姿を正面切っては描かず、古い白黒写真でホコリとしか見えないような微かな形で描写するのみだった。この辺りの抑制の利かせ方が実に気に入っている。これが、例え半透明の影の様なものでも、劇中に登場していたら物語の雰囲気はかなり損なわれていただろう。

 スカリーは、いくら人生が長くても学ぶ事はいくらでも有ると主張したが、フェリッグは人生は限りがあるから有難味があるのであって、いつまでも終わらなければただ苦痛なだけだと切り返していた。果たしてどちらが正しいのだろうか。


 ところで、今回FBI本部に置いて行かれたモルダーが、スカリーに電話した時に、限りなくマヌケっぽい声で「どーも、モルダーってもんです。以前FBIであなたとご一緒に仕事を〜」とかとぼけた感じで喋りだすシーンが実におかしかった。モルダーのユーモア感覚もなかなかなものである。