感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン6」第11話「ファイト・ザ・フューチャー Part1」


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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン6 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン6の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン6」あらすじ・感想まとめ

第11話 ファイト・ザ・フューチャー Part1 TWO FATHERS

あらすじ

http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
EP11 ファイト・ザ・フューチャー Part1
ヴァージニア州ポトマック操車場で複数の医師が焼死体で発見される。また、同じ現場で遺伝学の権威オープンショー博士が重傷のやけどを負い、保護された。さらに・・・。

 お題は「エイリアンの地球侵略、政府の陰謀」。


 シーズン5・第13話「ペイシェントX」、第14話「赤と黒」の続き。


 秘密組織の医師たちが人体実験を行なっているところに、「エイリアン反乱軍」の兵士が現われ、医師たちを焼き殺す。人体実験の対象になっていたのは、かつてUFOに誘拐され行方不明になっていたカサンドラ・スペンダー(ジェフリー・スペンダーの母親)だった。

 カサンドラは、モルダーたちを呼び、自分の知る情報を伝える。それは、エイリアン(別名:コロニスト)は人類滅亡を企んでおり、最終目標は宇宙制覇であること、エイリアンは黒い物質「ピュリティ」(いわゆるブラックオイル)を他の生物に感染させることを目論んでおり、それは同時にエイリアンの命の源であること、モルダーが出会ったサマンサは偽者であること、エイリアンに協力する地球人側の組織のボスは、自分の元夫でありジェフリーの父親である事、等だった。

 モルダーは、FBIのデータベースを調べる事にするが、自分たちのPCは監視されているため、こっそりスペンダーのPCを借用し、スペンダーの父親「C.G.B.スペンダー」こそスモーキング・マンだと知る。しかしすぐにスペンダーに見つかり、二人はついに懲戒解雇を待つだけの状態となる。それでもスカリーはさらに情報を集め、スモーキング・マンとモルダーの父ビルが国務省で25年間ある計画を進めていた事、カサンドラが最初に宇宙人に誘拐された日付は、サマンサが消えたのと同じ1973年11月27日である事、を突き止める。

 一方、エイリアン反乱軍は、地球人に化けた兵士を使い秘密組織の基地を襲撃したため、秘密組織側は大混乱に陥っていた。さらに既に組織の幹部の一人も変装した兵士がすり替わった偽者だった。カサンドラは、組織が25年間研究してきた、エイリアンと人間の交配種「ハイブリッド」の最初の成功例であり、ハイブリッドはエイリアンの地球侵略の際に手助けをする予定だった。もしカサンドラの事が世間にばれれば、秘密組織の計画は全て明らかになってしまう。

 スモーキング・マンは、クライチェックとジェフリーに、幹部に化けた反乱軍兵士を始末させた。ジェフリーは宇宙人が存在することを知って衝撃を受けるが、さらにクライチェックからは父スモーキング・マンが、母カサンドラを人体実験に差し出した事を知る。

 同じ頃、カサンドラはモルダーのアパートを訪問し、エイリアンの侵略を止めるため自分を殺すようにと頼む。モルダーがカサンドラに銃をつきつける中、部屋のドアを誰かが叩く。続く。


監督 キム・マナーズ
脚本 クリス・カーター&フランク・スポトニッツ


感想

 評価は◎。


 久々のX-ファイルの王道である宇宙人話。今シリーズ第1話「ビギニング」では、エイリアンが人間の体内で成長した後、最後に腹の中から飛び出してくるケダモノ生物と描写され、あまりの荒唐無稽ぶりに言葉を失ったが、このエピソードでは軌道修正して重厚な展開に戻ったため、一転見ごたえのある話となった。秘密組織とエイリアン反乱軍の暗闘が実に興味深い回となっている。


 今回はゲストキャラとして、シーズン5・第13話「ペイシェントX」、第14話「赤と黒」に登場した狂信的UFOビリーバーのカサンドラ・スペンダーが再登場してきて懐かしかった。「赤と黒」でUFOに拉致されたあと音沙汰が無かったため、どうしているのかと思ったが、スタッフも忘れてはいなかったようである。

 本エピソードは、薄暗い部屋で、スモーキング・マンによる「なんて事だ! こんな結末を迎える事になるとは……、それに息子が裏切る事になるなんて……」といった思わせぶりな独白を挟み込みながらドラマが展開する。秘密組織の計画の壊滅とかジェフリー・スペンダーの父親との決別などを匂わせて、これがまた実に良い味を出していた。

 さて、カサンドラの説明で、ついに「ブラックオイル」の正体(らしきもの)が明かされる。今までは、そもそも呼び名が「ブラックオイル」「ブラックキャンサー」と用語が一定せず、またこれ自身が一種の知的生物なのかどうかも判断が分かれるところで、侵略エイリアン(コロニスト)との関係が全く見えなかったのだが、要するにエイリアンの侵略用生物兵器的なものだったようである。しかし同時にエイリアンの「命の源」とはどういう意味なのか、またまた謎が増えてしまった。

 途中、モルダーたちがPCでFBIのデータベースでスペンダーの家族を調べると、父親欄にあのスモーキング・マンの顔が現われてビックリ、という展開があるが、これはおかしくないだろうか。そもそもFBIのデータベースにあるならスペンダー自身が検索して、自分の父親はこいつか!? ととっくに確認していそうだが、スペンダー本人はスモーキング・マンが名乗りを上げるまで知らなかったのだから。

 エイリアン反乱軍は、シーズン5ではチップを埋め込まれた人間を集めてまとめて焼き殺すくらいしか芸が無かったのに、今シーズンは地球人に変装して秘密組織の基地を潰して回るなど、すっかり地球に慣れた様子である。それどころか、例の目も口もふさがった顔の上に、地球人の顔を模したマスクを貼り付けて、秘密組織の最高幹部たちの集まりに入り込み、「コロニストを裏切って、エイリアン反乱軍に寝返ったほうが良い」とか発言するのだから、防諜体制に問題のありそうな秘密組織よりよほど狡猾である。

 最後、スモーキング・マンが延々独り言を喋っているのかと思いきや、実は反対側にダイアナ・ファウリーが座っていて、「頼れるのは君だけだ」とか締めくくる演出は実に上手かった。やっぱりダイアナは敵だったという事で、マリタ・コバルービアスといい、ダイアナといい、モルダーが頼る女性は敵ばっかりである。ついでにいうとシーズン5・第2話「帰還 PartII」で出会ったサマンサも、カサンドラによればニセモノとのこと。モルダーの周りにいる女性は本当に嘘と裏切りとで彩られているとしか言いようがない。


 さて、反乱軍兵士は「スパイ大作戦」の様な変装用マスクをかぶって地球人に化けるが、そもそも目も口も塞いでいるのに、マスクをつけた後の、目や口の部分はどうなっているのだろうか。気になって仕方が無い。