感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン6」第17話「電界」


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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン6 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン6の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン6」あらすじ・感想まとめ

第17話 電界 TREVOR

あらすじ

http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s6/
EP17 電界
ミシシッピ州の囚人ロールズは、竜巻が迫っている時に問題を起こし、刑務所長の命令で仕置き小屋に入れられた。竜巻後、所長は遺体で発見され、ロールズは行方不明になる。

 お題は「超能力(壁抜け)」。


 ミシシッピ州立刑務所に竜巻が迫っていたが、囚人のピンカー・ロールズは問題を起こし、「営倉」と呼ばれるボロ小屋に押し込められ置き去りにされる。竜巻の通過後、営倉はバラバラに破壊されロールズは死んだと思われた。一方、所長が自室で死んでいるのが発見されたが、密室内で胴体が両断され、傷口は炭化していた。あまりに奇怪な状況にモルダーたちが呼び出され、捜査に当たる事になった。

 やがて死んだはずのロールズが生きており、固体を通り抜けたり、人間を焼き殺したりする奇怪な力を身につけていることが解る。モルダーは竜巻発生時の静電気の影響でロールズが超常の力を得たと考える。ロールズは昔一緒に暮していたジューンという女性を探し回っており、警察の警護を突破してジューンを誘拐する。しかし真にロールズが探していたのは、ロールズが刑務所に入った後にジューンが生んだロールズの子供だった。ロールズは、ジューンから子供「トレバー」の居場所を聞き出し、連れ去りに行くが、そこにモルダーたちが駆けつける。ロールズの超能力にモルダーたちは翻弄されるが、ジューンが車でロールズに突っ込み、ロールズは超能力でも通過できないフロントガラスにぶつかって死ぬ。モルダーはロールズが息子と共に人生をやり直したかったのだろうと思う。


監督 ロブ・ボウマン
脚本 ケン・ハウリウ&ジム・グッドリッジ


感想

 評価は△。


 超常の力を持つ犯罪者をモルダーとスカリーが追う、という今までにも何度か有ったパターンの話だが、犯人の復讐話かと思いきや、最後は人情話になってしまい、ガッカリなエピソードだった。


 竜巻との遭遇でロールズが得た超能力は「固体の透過」と(多分)「電撃」。前者は、電気を通す物質なら自由にすり抜けられ(つまりガラスやゴムなど電気を通さない物質は通過できない)、通過した物体はウエハースの様になって耐久性が無くなってしまう。後者は触れた物質を消し炭に変えてしまうことが出来る。考えてみると、ロールズは、銃弾は通じず、どこにでも侵入でき、電撃で人を簡単に殺害できる、という、とんでもない怪物である。もっとも劇中では全然そんな恐怖は感じ取れなかったが……

 竜巻のせいで静電気がどうにかなった結果、電気を武器に出来るようになるのはまだしも、壁をすり抜けることが出来るようになるというのは、一見無茶なように思える。ところがこの設定は、実はエセ科学的ながら、ごくごくわずかばかりの説得力はある。というのは、元々原子というのはスカスカだが、にもかかわらず固体同士がぶつかって重なり合わないのは、原子核の周りを回っている電子が反発しあって弾き飛ばすからである(電磁気力)。それが電気の力がどうにかなって、その電子の反発が無くなり重なり合うことが出来る、という説明は、針の先ほどだけは科学的な要素が無くもない。もっとも、この理論で行くと「電気を通さないガラスやゴムは通り抜けられない」という説明の理由にはならないし、また固体を透過できるなら、ロールズはその能力を使った途端重力に引かれて地球の中心に墜落する事になるだろう。まああまり深く考えてはいけない設定の模様である。

 ロールズが、昔の女や盗んだ金を求めてうろついているのかと思いきや、実は自分の子供を捜していて、最後は一緒に行こうとか言い出した段階で、危険な暴力的犯罪者+超能力者の物語が、我が子との新生活を求める父親の話に変化してしまい、ガッカリしてしまった。さらに、モルダーが「ロールズは人生をやり直したかったんだ……」とかしんみり語って、ロールズがいくらかは同情すべき人物だった、みたいな印象になるのはどうかと思った。こういう人情話をX-ファイルでやって欲しくなかった、というのが正直な感想である。


 モルダーたちが、ロールズとジューンの子供が養子に出された、と聞いて、何故ジューンの妹の事に気がつかないのか不思議だった。まあ視聴者の神の視点だからそんな風に思ってしまうのかもしれない。


 ところで日本語サブタイトルは、どう考えても本編の内容を反映していない。ミスリードのつもりだったのだろうか。