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感想:NHK番組(新番組)「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」第1回『死ねない細胞 世界を救った黒人女性の悲劇』

フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿 http://www4.nhk.or.jp/P3442/
放送 NHK BSプレミアム(毎月最終木曜日 21:00〜22:00 放送)。

【※以下ネタバレ】

科学は、人間に夢を見せる一方で、ときに残酷な結果をつきつける。
理想の人間を作ろうとした科学者フランケンシュタインが、怪物を生み出してしまったように…。


ナビゲーター/ナレーション 吉川晃司
司会 武内陶子アナウンサー

 2015年に3回特番として放送された番組が、月一回放送のレギュラー番組として放送開始。


※他の回の内容・感想はこちら→ 「フランケンシュタインの誘惑 科学史 闇の事件簿」内容・感想まとめ

第1回 『Case 01 死ねない細胞 世界を救った黒人女性の悲劇』 (2016年4月28日(木)放送)

内容

人類に功も罪ももたらす「科学」。そんな科学の知られざる姿に迫る新番組。今回は、ある黒人女性の細胞「ヒーラ」の物語。世界で初めて培養に成功した人間の細胞ヒーラは、医学・生物学・生命科学の扉を一気に開け放った。ポリオワクチンの開発、がんの研究、さらにはiPS細胞の発見…。世界を救うほどの成果をもたらし、本人の死後65年にわたって、今なお生き続け世界中の研究室で増え続けるヒーラ。その栄光と、悲劇とは?


http://www2.nhk.or.jp/hensei/program/p.cgi?area=001&date=2016-04-28&ch=10&eid=21142&f=3442
科学史に埋もれた闇の事件に光を当てる、新しい知的エンターテインメント。第1回は世界を救った黒人女性の細胞がたどった、数奇な運命。ナビゲーター・吉川晃司

【ゲスト】黒木登志夫,高橋政代,【ナビゲーター】吉川晃司,【司会】武内陶子

 世界の医療の現場では、培養された人間の細胞「ヒーラ細胞」が活用され、ワクチンの開発やガンの研究などに活用されている。今の生命科学の分野ではヒーラ細胞のない研究は考えられない状態である。

 ヒーラ細胞は、アメリカの「ヘンリエッタ・ラックス」という女性から採取された細胞である。1951年、ヘンリエッタは子宮頸がんの手術を受けたが、その時摘出されたガン細胞は破棄されず、科学者ジョージ・ガイの手に渡った。ガイはその当時20年以上人間の細胞の培養に取り組んでいた。当時マウスの細胞の培養などには成功していたが、人の細胞培養は未だ誰も成功していなかった。ガイは手に入れた細胞を「ヘンリエッタ・ラックス」の名前の頭文字をとり「ヒーラ」と名付けて培養した。すると驚くべき事にこれが増殖していたのである。人類が人の細胞の培養に成功した初めての例だった。

 ガイはこの成果を発表すると同時に、細胞培養のテクニック、通称「ヒーラ・テクニック」を公開した。培養する試験管を常に動かし続ける「ローラー・チューブ法」、培養液のレシピ、培養するときの手法、などを余さず公開し他の研究者にレクチャーしたのである。これで他の研究者たちもヒト細胞の培養が可能になった。またガイは1954年にはバイオ企業に依頼してヒーラ細胞を培養させ、それを売りさばき始めた。

 ヒーラ細胞は医療の分野に革命をもたらした。例えばワクチン開発では、今までは効果の確認のためには人体実験をしなければならなかったが、ヒーラ細胞を使う事で試験管の中で確認が可能になった。その成果第一号がポリオ(小児マヒ)のワクチンの開発だった。それ以降も、人間のDNAの解析やガンの研究など、様々な分野でヒーラ細胞が活用された。ES細胞やiPS細胞の開発もヒーラ細胞なくしては出来なかったと言って良い。

 しかし、当のヘンリエッタ・ラックスは1951年にガンが全身に転移して死亡した。そして残された遺族はヒーラの細胞が活用されて勝手に売りさばかれている事を知らなかったし、誰一人使用に許可を求めようともしなかった。「インフォームドコンセント」(医者が患者に説明し同意を求める)という概念は1990年頃まで存在せず、1950年代には医者が患者に同意を求めたりするという概念はまるで無かった。要するに医者が好き勝手やっていたのである。

 さらに2013年、ドイツの研究チームがヒーラ細胞のDNAを解析し、ネットで公開した。DNA情報は究極の個人情報と言える。ヘンリエッタの遺族はこれに抗議し、情報公開は中止された。さらにこれを受け、アメリカ国立衛生研究所は遺族と協議し、ヒーラ細胞を使う研究では遺族が内容を審査する事、また論文にはヘンリエッタの名前を記載する事、を取り決めた。またヒーラ細胞で発見を行なった学者が発表を行なう「ヒーラ会議」では、今まで忘れられていたヘンリエッタ個人に感謝する場となっている。

感想

 2015年に3回放送された番組が、ついに月一番組としてレギュラーに昇格。過去放送分が凄く面白かったのでレギュラー化は嬉しい限りです。

 ただ、肝心の一回目はちょっとイマイチの出来栄え。過去放送回は、偉大な業績を上げた学者が輝かしい成果の影でダークな事をやらかしていた、という二面性を描くものでしたが、今回は特定の学者を取り上げたのではないので、ちょっとピントがぼやけた話だったなぁ、という感じ。まあ今後に期待しましょう。