感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン7」第4話「ミレニアム」

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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン7 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s7/
放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン7の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン7」あらすじ・感想まとめ

第4話 ミレニアム MILLENNIUM

あらすじ

1999年12月29日、自殺して埋葬された元FBI捜査官、クラウチの墓が荒らされ、遺体が盗まれていた。翌日捜査に行ったモルダーは、ただの墓荒らしではないと直感。


 お題は「妖術師、ゾンビ」。


 1999年12月下旬。元FBI職員が自殺し、その死体が埋葬された墓地から盗まれた。モルダーは墓地に血で書いた魔法陣を見つけ、これは死体を操る妖術師の仕業だと推理する。スキナーによれば、過去半年の間に同様に自殺したFBI職員の墓が荒らされる事件が3件発生していた。彼らはいずれも、引退したFBI職員が警察の犯罪捜査に協力する「ミレニアム組織」のメンバーだった可能性があった。ミレニアム組織は裏の顔は怪しげなカルト集団だという噂もあったが、既に数ヶ月前に消滅していた。

 モルダーとスカリーは、元FBI職員でミレニアム組織の一員でもあった「フランク・ブラック」(ランス・ヘンリクセン)に会いに行くと、ブラックは四人はミレニアム組織の分派のメンバーで、「ヨハネの黙示録」を信じ込んでいたと話す。ヨハネの黙示録には、善と悪の最終決戦が起こり死者が蘇る、と書かれているが、四人は予言の成就を待つのではなく自分たちで起こそうとしており、そのために一度死んでから妖術師に生き返らせるように依頼していたらしい。四人は自分たちを黙示録に記されている、戦争・疫病・飢餓・死をもたらす四騎士と見なしていたようだった。そして彼らはその最終決戦ハルマゲドンが2000年1月1日午前0時に起きると考えていた。

 モルダーはブラックの妖術師についてのプロファイルを手がかりに、犯人ジョンソンの家にたどり着くが、四体のゾンビに取り囲まれて動けなくなる。一方、ブラックはモルダーが行方不明になったと知り、ジョンソンの家にやって来る。彼は最初からジョンソンの事も計画も知っていたのだった。そしてジョンソンを取り押さえると、応援に駆けつけたスカリー共々ゾンビを撃ち殺す。そして西暦2000年1月1日は何事も無く始まる。新年の浮かれムードの中でモルダーとスカリーはキスをする。


監督 トーマス・J・ライト
脚本 ヴィンス・ギリガン&フランク・スポトニッツ


感想

 評価は○。


 背景設定は「ヨハネの黙示録」という宗教系のものだが、実際に展開されるストーリーは「モルダーたちとゾンビの戦い」という、ハイブリッドと言うか、チグハグと言うか、のエピソード。しかしこれはこれで結構面白い話ではあった。


 この話は別に予備知識が無くても十分楽しめるが、知っているとなお楽しい裏設定がある。実は今回のゲストキャラのフランク・ブラックは「ミレニアム」という別のテレビドラマの主役で、その彼が「X-ファイル」という別番組に越境出演していたのである。

 「ミレニアム」は、X-ファイル製作総指揮のクリス・カーターX-ファイルと並行して制作した作品で、1996年〜1999年の3シーズン放送された(シーズン1 1996/10〜1997/05、シーズン2 1997/09〜1998/05、シーズン3 1998/10〜1999/05)が、スタッフの迷走で人気が低迷し、丁度X-ファイルのシーズン6終了と同時に打ち切られていた。

 その作品のキャラのブラックが同じクリス・カーター制作のドラマに現われたわけで、今回は二つのドラマの主役が対面するスペシャル版でもあり、また同時に「ミレニアム」の打ち切り後の『その後』を描く後日談でもある、という特別エピソードだったわけである。

 しかし、聖書の黙示録云々というと、X-ファイルの過去のパターンからして神と悪魔が云々という神秘系の話に行きそうなものだが、今回は意表をついてモルダーとスカリーが襲いくるゾンビに銃をぶっ放すという「今風」の話になってしまっていた。

 こんな展開になった事で、ブラック役のランス・ヘンリクセンはおかんむりだったそうだが、これはこれで面白い話だったことは間違いない。モルダーが自分の周りに塩をまいてゾンビを食い止める展開とか、「ゾンビは聖なる塩に弱い」というクラシックな感じも出ていて、結構楽しかった。

 ちなみに何故ゾンビが出てくるかというと、以前にスタッフはゾンビ物の巨匠ロメロとコンタクトして、ゾンビ物の話を作る計画が有ったのだが、それが中止になったため今回の話にゾンビを押し込んだ、という事だったようである。

 さて、劇中でスカリーが強調していたが、20世紀最後の年は2000年であって、決して1999年ではない。「1世紀」は「西暦1年〜100年」だと考えれば容易に理解できる話である。今回自殺した四人とか妖術師ジョンソンはそんなことも理解していなかったのだろうか。まあ「1999年が世紀末っぽい」というイメージは理解できるが……

 それはさておき、最後の最後に新年を祝う雰囲気の中で、モルダーとスカリーがいきなりキスをしたのには仰天した。過去6シーズンに渡ってくっつきそうでくっつかない、という関係を継続していたモルダーとスカリーだが、唐突に仲が進展してしまった。一説によると当時「X-ファイルはシーズン7で打ち切り」という噂が流れていたそうで、そのためスタッフが二人の関係にけりをつけようと一気に仲を進めたのかもしれない。