感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン7」第7話「オリソン」


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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン7 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s7/
放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン7の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン7」あらすじ・感想まとめ

第7話 オリソン ORISON

あらすじ

女性殺しで服役していたドニー・ファスターが、刑務所から脱走した。囚人の1人が指を切ったと錯覚し、所内が大騒ぎになっている間に、誰にも気づかれずに逃げ出したのだ。

 お題は「異常犯罪者、お告げ、神と悪魔の戦い」。


 シーズン2・第13話「フェチシズム」の続編。

 刑務所からドニー・ファスターという終身刑の囚人が脱獄したが、不思議な事にファスターが逃走するのに誰も気がつかなかったという。ファスターは5年前モルダーとスカリーが逮捕した異常性癖を持つ殺人鬼だった。モルダーは過去に二件似たような脱走事件が起きており、三つの刑務所全てに教誨師(受刑者に説教する者)のオリソン神父が関わっていることを知る。

 オリソンはかつて殺人で服役した過去が有り、また脳に浮腫があった。モルダーは頭蓋骨に穴を空けて脳に酸素を大量に取り入れれば超能力が発現するという怪しげな説を持ち出し、オリソンも同様の処置をして催眠能力を身につけ、ファスターを脱獄させたと考える。オリソンは自分を神の使者だと自認し、ファスターを神に代わって殺そうと企んでいるらしかった。

 オリソンはファスターを殺そうとするが、逆に悪魔に変化したファスターに殺されてしまう。さらにファスターはスカリーの家へ忍び込み彼女を殺そうとするが、異常に気が付いて駆けつけたモルダーに取り押さえられる。そこにスカリーが現われ、ファスターをいきなり撃ち殺す。モルダーはスカリーに、報告書には上手く書いておくと安心させるが、スカリーは自分を動かしたのは神では無く別のものだったら、と考えていた。


監督 ロブ・ボウマン
脚本 チップ・ヨハンセン


感想

 評価は×。


 シーズン2・第13話「フェチシズム」の続編で、女性を殺して髪と爪を持ち去るサイコ殺人鬼ファスターが再登場するだけでもうんざりだが、そこに神のお告げのようなメッセージを追加し、最後には本物の悪魔まで登場するという、もう支離滅裂なストーリーで、当然評価は最低である。


 このエピソードは怪異がとにかくやたらと詰め込まれており、全く整理されていない。まずモルダーが語った「頭蓋骨に穴を空ける」云々という話は、現実に存在していて「トレパネーション」と呼ばれており、オカルト的な手術法としてそれなりに有名である。古代の神官も頭に穴を開けた、という説明も有ったが、これは古代インカ帝国の事を指していると思われる。もっともこれは超能力の覚醒云々のためではなく「頭部の怪我の治療」説の方が正しいと思われる。

 第二の要素が、神のお告げで、ファスターが脱走した6時6分にスカリーの家の目覚まし時計が「6:66」と表示されたり、スカリーが子供の頃聞いた歌が何故かあちこちで繰り返されたり、と、宗教的なメッセージの様なものが繰り返しスカリーの周りに現われる。しかしだからどうしたという感じでは有る。

 最後が神と悪魔の戦いで、オリソンは神の使者を自認し、神から悪党を殺す事を命じられたと主張する。それだけならまだ「狂信者」で済むのだが、オリソンが殺そうとしたファスターの顔が突然悪魔そのものに変化し、ファスターをくびり殺すため、突然「神と悪魔の戦いが地上で行なわれている」という話になってしまう。

 そもそも「フェチシズム」では「異常性癖犯罪者との対決」だけで一本作っていたのに、そこにさらに神と悪魔が戦い、お告げが頻発し、超能力に覚醒するのだから、もう設定を盛り込みすぎとしか言いようがない。


 またこれだけ怪異を持ち出しながら、今回の話の中心人物と見られてたオリソン神父は、中盤であっさりファスターの反撃にあって殺され、後半はファスターがスカリーの家にやってきてスカリーを襲撃する、という「フェチシズム」の焼き直しの様なただのサイコサスペンスになってしまう。正直言って、今回のエピソードは何をしたいのか焦点がまったく定まっておらず、視聴していて心底イライラさせられた。


 オリソン神父は超能力者だったのか? また本当に神から連絡を受けていたのか? ファスターの顔が悪魔に変化したのはなんだったのか? スカリーの身の回りで起きた不可解な出来事の意味は? 最後スカリーがファスターを射殺したのは誰かに影響されていたのか? そうだとしたら、それを行なったのは神か、それともスカリーが疑ったとおり全く別のものなのか? と、謎ばかり撒き散らして、結局きちんとした起承転結も出来ておらず、良くこのシナリオにGOサインが出たな、と不満しか残らないエピソードだった。