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感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン7」第12話「X-コップス」

ドラマ


X-ファイル シーズン7 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン7 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s7/
放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン7の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン7」あらすじ・感想まとめ

第12話 X-コップス X-COPS

あらすじ

満月の夜、狼男に襲われたと言い亡くなった男がいた。そして一ヶ月後の満月の夜、再びモンスターが出たと通報が入る。場所はカリフォルニアの犯罪多発地域ウィロウパーク。

 お題は「未知の怪物」。


 警察官の活動を撮影し放送する人気リアリティ番組「COPS」。今回COPS撮影クルーはカリフォルニア州ウィロウパークの警察に密着取材することになった。満月の夜、住民から怪物が現われたという連絡を受け、保安官が駆けつけると、ドアには何かの動物がつけた爪あとが残っており、さらにパトカーが何者かに襲われ、撮影クルーごと車が転覆させられるアクシデントが発生!

 その後警察は現場近くにいた怪しい男女を捕まえるが、二人はFBI捜査官のモルダー・スカリー両氏だった。モルダー捜査官によれば、前回の満月の夜にこの街で狼男が人間を襲って殺したため、今夜も狼男が現われると予測し張り込み中とのことだった。撮影クルーは両捜査官にも密着し、さらなる撮影を行う事になった。

 その後次々と何者かによる事件が発生するが、犯人は狼男では無く、目撃者によって証言が異なり、「映画『エルム街の悪夢』の怪人フレディ・クルーガー」だったり「頭がハチで体が人間のハチ男」だったりと、全く正体がつかめない。モルダー捜査官の推理によれば、犯人は襲う相手が恐ろしいと思うものに姿を変えており、また被害者から接触のあった別の人物へ伝染するような形で犠牲者を選んでいるようであった。

 モルダー・スカリー両捜査官は犯人らしい相手を追い詰めるものの、結局取り逃がしてしまった。モルダー捜査官によれば、夜が明けたため犯人は逃げ出したとのことで、今度現われるのは次の満月の夜だろうとのことだった。スカリー捜査官がどう報告書をまとめるかぼやいているところで番組終了。


監督 マイケル・ワトキンス
脚本 ヴィンス・ギリガン


感想

 評価は○。

 テーマとしては「人間を襲う未知の怪物」モノだが、通常の回とは違い、「フェイク・ドキュメンタリー(モキュメンタリー)」として作られていて、その趣向が新鮮でなかなか面白かった。


 具体的には、今回のエピソードは、「X-ファイル」というドラマでは無く、「COPS」という警察の活動を放送するリアリティ番組に、モルダーとスカリーの捜査が偶然捉えられた、という形のフェイク・ドキュメンタリーとして作られている。実はこの「COPS」は、架空の番組では無く、X-ファイルと同じテレビ局「FOX」で1989年から現在(2016年時点)まで放送されている実在の人気番組である(※日本では「全米警察24時 コップス」のタイトルで放送)。つまりその「COPS」のフォーマットをそのまま借りたパロディ的な要素も有る回という訳で、「COPS」を知らなくてもフェイク・ドキュメンタリーとして楽しめたが、知っていればさらに抱腹絶倒の回だったと思われる。

 作りは徹底していて、まず「COPS」の番組オープニングテーマ「バッドボーイズ」(インナー・サークル)が流れた後、「COPS」という番組タイトルが表示され、以後車を運転している副保安官が取材クルーのカメラに向かい、「理由が解らないが満月の夜は犯罪が多発する」とか(あからさまな前フリを)話しかけている場面に移行。以後、番組はあくまで「COPS」の取材クルーが手持ち式のカメラで実際の事件を撮影している、という体で話が進む。犯罪者(役の俳優)の顔にボカシがかかっていたり、画面に映る人物の発言に時々「ピー」という音がかぶって聞こえなくなったり、スカリーがカメラを鬱陶しがって手のひらでレンズを塞いだり、同じくスカリーが勝手に車の後部に乗り込もうとするクルーを制止したり、車内でモルダーが後ろを振り返って後部座席(にいるクルー)に自分の考えをとうとうと述べ立てたり、とか、悉くがいかにもこの手の番組でありそうな描写で、実に面白かった。

 今回登場した超常存在は、全く正体不明で、「変身能力を持って人間を襲う何か」としか表現されない。僅かな手がかりから解る事は、「犠牲者に選んだ相手が心底怖れる存在を読み取ってその通りの姿になり相手を殺害すること」、「犠牲者に接触した誰かを次の犠牲者に選ぶという伝染病な性質があること」、の二点である。画面に全く姿を現さなかったが、想像を逞しくすれば、正体は一種の心霊的存在であり、襲撃時にだけ実体化する、という様な物ではなかろうかと思える。今回の様な「何かがいそうでは有るが、はっきりした正体がつかめないまま終わる」というのは、オカルト系特番の様な感じで、却って想像力をそそられて実に良い感じだった。

 手持ち式カメラで撮影した体のフェイク・ドキュメンタリーといえば、映画「ブレア・ウィッチ・ブロジェクト」(1999年)が真っ先に頭に浮かんだが、実際スタッフはこの映画を参考にしたそうで(この回の放送は2000年2月)、画面にあからさまに怪物や何かが登場せず、関係者の証言などによる「何かがいたかもしれない」程度のほのめかしに終始するのは「ブレア〜」を真似したらしい。

 今回の話で上手いなと思ったのは、冒頭に満月だと強調し、続いてモルダーに狼男の捜査に来た、と言わせる事で視聴者に「今回はクラシックな狼男ネタで行くのだな」とさりげなくミスリードさせるところ。だからこそ、怪物に襲われたという住人の証言を元に書いたイラストが、映画『エルム街の悪夢』のカギ爪怪人フレディ・クルーガーだったところで、思いっきりあっけに取られたし、そのあとさらに副保安官が「実は見たのはハチ男でした……」と証言するあたりで、この話は一体どこへ行くのだろうとワクワクさせてくれた。


 シーズン6が終わった頃、スタッフの間では「X-ファイルはシーズン7で打ち切り」という噂が流れていたそうで、スタッフがそれならやりたい事をやり切って終わらせたい、という考えで作ったのが今回の話だったそうだが、変化球系の話にも関わらず面白く仕上がっていて満足度の高い一本だった。