感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン7」第13話「ファースト・パーソン・シューター」


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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン7 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s7/
放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン7の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン7」あらすじ・感想まとめ

第13話 ファースト・パーソン・シューター FIRST PERSON SHOOTER

あらすじ

アイバンとフィービーが開発したバーチャル戦闘ゲーム、「ファースト・パーソン・シューター」のテスト中、テスターの1人が謎のCG美女に撃たれ、本当に死亡してしまう。

 お題は「コンピュータープログラムの暴走」。


 モルダーとスカリーは、ローン・ガンメンたちにゲーム会社FPS社に呼び出される。FPS社は、プレイヤーが銃や装備を身に付け、ゲームフィールド内にホログラムCGで映し出された敵と戦う、という体感型ゲームを開発していた。ところがテストプレイ中に、プレイヤーの一人が本当に死んでしまったのだという。しかも調査の結果、犠牲者はゲームにいるはずのない女戦士に撃ち殺されたことがわかる。さらに、再度ゲームを起動してみると、また女戦士が現れ、プレイヤーを剣で切り刻んで殺してしまった。

 やがてローン・ガンメンがチェックの為にフィールドに入ると、勝手にゲームが起動してしまった。モルダーは三人を助け出すためにフィールドに入るが、女戦士を見かけて後を追いかける。その後ゲームを停止させたもののモルダーは消えうせており、コンピューター内のゲーム空間にいることが解る。女戦士キャラ「マトレイヤ」は、開発スタッフの一人がモデリングしたキャラだったが、自パソコンに入れていただけで、ゲームには追加していないという。やがてモルダーはマトレイヤに襲われ、スカリーはモルダーを助けるため、自分も武器を持ってゲーム内に飛び込む。しかしマトレイヤはいくら倒してもすぐに再生し、全くキリが無い。ローン・ガンメンはプログラムを消去してゲームを破壊し、二人を救い出した。

 最後。FPS社の社長がうなだれていると、突然周囲のパソコンが全て起動して、スカリーの顔の女戦士を映し出すシーンで〆。



監督 クリス・カーター
脚本 ウィリアム・ギブスン&トム・マードック



感想

 評価は△。


 コンピュータープログラムの暴走というSF系テーマの回だったが、内容が余りにも荒唐無稽すぎて全く評価できないB級エピソードだった。


 今回のシナリオを書いたウィリアム・ギブスンとトム・マードック(トム・マドックスとも)は、二人ともSF作家で、特にギブスンは1980年代に「サイバーパンク」というSFのジャンルを作り上げた事で有名な作家である(もっとも1990年代以降はフェードアウトしてしまった感が有るが……)。ギブスンとマードックのコンビは、以前にも、シーズン5・第11話「キル・スイッチ」という回のシナリオを担当しており、「キル・スイッチ」がそれなりに面白いエピソードだったので今回も期待していたのだか、結果的には大外れだった。

 ブログラムの暴走の結果、全く別物であるはずの現実と電脳空間が入り混じってしまい、ゲーム内のCGキャラが実体化して人間を殺害したり、逆に人間がゲーム内に取り込まれてしまったり、という展開は、日本の漫画やライトノベルも有りそうなネタであり、設定自体は結構面白そうでは有る。しかしこのエピソードは、話の進め方や設定が雑すぎて、視聴者を納得させるような虚構が作れきれておらず、結果、安っぽさだけが目に付く、中身の薄い、馬鹿げた話でしかなかった。

 例えば、次々と殺人を犯す女戦士マトレイヤがどうやってゲームプログラムに入り込んだのか、また何故独自の意思を持っているのか、何故プログラムは暴走し始めたのか、何故CGキャラが実体化して人を殺せたのか、何故人間のモルダーたちがゲーム世界に引きずり込まれてしまったのか、何故ゲームプログラムは最後にまた蘇ったのか、等の疑問について、納得出来る説明がひとつも無いまま終わってしまう。まったくもってふざけているとしか言いようがない。

 また絵的にも、銃を持ったSFコスチュームの戦士たちが銃を撃ちまくって戦うシーンばかりで、確かに見た目は派手だが中身が無い。あまつさえ、モルダーやスカリーが同じコスチュームで銃を撃ちまくって「敵」と戦うなど、これのどこがX-ファイルなのかと言いたくなる。

 とどめで、結末で、消去されたはずのプログラムが実は消えておらず、新しくスカリーの顔の戦士をモデリングして、FPS社の社長がにっこり、とかいう「事件は実は終わってなかったオチ」もありがち過ぎて何の新鮮味も無かった。

 超常現象なら「原因が良く解らないが不思議な現象が起きてしまった」で済ませても強引に納得できなくも無いが、SFテーマでそれをやられたら「シナリオライターは何も考えていなかっただけ」と見られても仕方ないと思う。今回はまさにそのような、適当にノリだけでシナリオを書き上げたような駄作回だった。多分クライマックスの、モルダーとスカリーが銃を撃ちまくるシーンが描きたかっただけなのではなかろうか。


 ところでラストに出現したCGが「顔がスカリーの戦士」というのは、最初見ただけでは解らなかった。いくらなんでもスカリーはあんなにブサイクではないと思うのだが……


一言メモ

 サブタイトルの「ファースト・パーソン・シューター」とは、コンピューターゲームのジャンル名で、「一人称視点シューティング」とも呼ばれる。ゲーム画面がキャラクターの視野と一致しており、画面に現われる敵を次々打ち倒していく、といったタイプのゲームの事。