感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン7」第16話「キメーラ」


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放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン7の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン7」あらすじ・感想まとめ

第16話 キメーラ CHIMERA

あらすじ

主婦マーサ・クリテンドンが行方不明になる。当日、マーサの娘がカラスに襲われ、失踪直前にも鳴き声が聞こえたことから、モルダーは事件にカラスが関係あるのではと思う。

 お題は「怪物」。


 モルダーはスキナーから主婦マーサの失踪事件を担当するように命令される。マーサが失踪する前、彼女の幼い娘がカラスに襲われる事件が起きており、超常現象がらみの可能性があった。モルダーはマーサの家の中にカラスがいたらしいこと、失踪前に鏡が割れていた事から、呪いや何かが関係していると推測する。ところがマーサが浮気をしていたらしいことが判明、一転、浮気相手と駆け落ちした可能性が出てくる。やがてマーサの死体が庭から見つかるが、体には猛獣に襲われたような傷を負っていた。

 モルダーは保安官のフィルの家に泊めて貰って捜査を行うが、フィルの妻エレンが醜い怪物に襲撃される事件が発生する。フィルは単なる幻覚だと取り合わないが、モルダーは何者かが召還した怪物がいるのではと考える。

 やがてフィルの浮気相手ジェニーが怪物に殺害され、さらにフィルはマーサとも密通していたことが明らかになり、警察はフィルが二人を殺したと考える。しかしモルダーは、エレンこそが犯人だと確信し詰問すると、怪物化したエレンに襲われる。しかしエレンは自分の姿を見て正気に戻る。

 検査の結果、エレンは解離性同一性障害、いわゆる多重人格と診断される。エレンは夫の浮気を知って精神に異常を来たし、さらに第二の人格の影響で肉体すらも変形していたようだった。最後、エレンが病室の窓からカラスを眺めているシーンで〆。


監督 クリフ・ボウル
脚本 ディビッド・アマン


感想

 評価は△。

 高級住宅街に謎の怪物が現われ次々と人を襲う、というホラー系のエピソードだが、伏線の処理がひどくて、評価はいまいちだった。


 今回の怪異は、高級住宅街に出没する怪物で、一応体型は人間型だが顔はのっぺらぼう的で、手には長いかぎ爪を持ち、突然現われて人を殺すとすぐに姿を消してしまう。出現の前には、予兆の様に室内でもカラスが現われ、また怪物が姿を写した鏡やガラスは悉く割れてしまう。都市伝説にでも出てきそうな感じの、なかなか不気味な怪物である。

 しかし、カラスや割れる鏡といった設定からして、いにかも呪術的な物で召還された風であるが、実は人間が多重人格で変身した姿だったという真相が明らかになると、途端に話がおかしくなってくる。エレンが第二の性格で怪物的に変化した、という事は認めても良いが、すると怪物が姿を写した鏡やガラスが次々と破壊されてしまうのはなんだったのか、という事になる。さらに怪物出現前に意味ありげに登場するカラスたちは、「単に偶然で通りかかっただけだった」という事になり、不吉の予兆でもなんでもなく、単にやたらカラスが多い街だった、という事になってしまい、もう笑うしかない。結局、シナリオライターが、視聴者を「怪物は悪魔召還か何かで出てきたものか?」とミスリードしようとして用意した伏線が、最終的にうまく処理できておらず、なんとも間が抜けた話になってしまっていた。


 今回の話はモルダーとスカリーが別々の事件を担当しているため、序盤以外に二人が一緒にいるシーンは無い。ストーリー上二人が別行動をする積極的理由が無いため、実に不自然な展開だったが、実はモルダー役デイビッド・ドゥカブニーとスカリー役ジリアン・アンダーソンは、それぞれシーズン7でこれ以降に放送する話で監督を担当しており、その仕事が忙しかったため、二人が一緒に撮影する時間が確保できず、こういう展開になったそうである。とはいえ、そのために愉快なシーンも生まれており、スカリーが一人で退屈な張り込みの任務をやらされて、ウンザリした挙句、モルダーに電話して愚痴るシーンが面白い。


スカリー「もしもあなたが戻ってきて、私が望遠鏡に顔をつけたままここで死んでいたときの為に、モルダー、あなたに私の最後の言葉を伝えるわ。『あなたにもう一度会って殺したかった』。ちゃんとおぼえておいてよ」

モルダー(苦笑いしながら)「失礼だがどなた?」

 というやり取りには笑わせてもらった。


 ところで、今回のサブタイトル「キメーラ」とは、ギリシャ神話に登場する生物で、頭はライオン・胴はヤギ・尾はヘビ、という異形の怪物である。しかしながら、今回の話のどこが「キメーラ」なのか全く理解できないままだった。本当に何がキメーラなのだろうか。


 エレンの声は有名声優の田中敦子さんでした。