読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン7」第21話「三つの願い」

ドラマ


X-ファイル シーズン7 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]

■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン7 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s7/
放送 Dlife。全22話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン7の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン7」あらすじ・感想まとめ

第21話 三つの願い JE SOUHAITE

あらすじ

突然口がなくなり、手術で再生しなければいけなくなったギルモアが、モルダーのオフィスを訪ねてくる。証拠はないが、元部下だったアンソンの仕業だ、と言い張るギルモア。


 お題は「願いをかなえる精霊」。


 モルダーたちの元に貸し倉庫の経営者ギルモアが訪ねてきたが、彼は不思議な事にいきなり口がなくなり、手術で作り直す羽目になったという。そしてその原因は、日頃から不和だった従業員のアンソンのせいだと決め付け、調べてくれという。興味を持ったモルダーたちは行方知れずのアンソンを探しに向かった。

 実はアンソンは長い間放置されていた貸し倉庫の荷物の中からじゅうたんを見つけるが、それは広げると3つの願いをかなえてくれる美女精霊が出てくる魔法のじゅうたんだった。しかし、願いの一つ目はうっかり口うるさいギルモアを黙らせる事に使ってしまい、二つ目に望んだ豪華ボートは「海に」という条件をつけなかったため、自宅の側の道路に出現させられてしまいどうにもならない。最後にアンソンは熟考の末、三つ目の願いで「自由に透明人間になれる能力」を求めるが、裸で屋外に飛び出したところ車にはねられて死んでしまう。スカリーは運び込まれた透明な死体に粉末をふりかけて、それが探していたアンソンの死体だと確認する。

 その後、アンソンの弟レスリーは、まず一つ目の願いで兄を生き返らせるが、「生前のまま」という条件をつけなかったため、体がぐちゃぐちゃの姿のアンソンが帰ってくる。さらに二つ目の願いでアンソンをしゃべれるようにするが、たわごとの様なことしかしゃべらない。キレたレスリーが三つ目の願いを考えているうちに、アンソンは暖房代わりにガスオープンの中にマッチを落とし家を大爆発させる。

 一方モルダーはアンソンの家にいた謎の女性が、イタリアの独裁者ムッソリーニや、ニクソン大統領の側にいる映像を見つけ、彼女こそ精霊ジナイア(ジーニーの女性形)だと確信する。本人を見つけて話を聞いてみると、彼女は15世紀のフランス出身で、じゅうたんの中にいたイフリート(精霊)に3つの願いを叶えてもらえる事になり、三番目にパワーと長寿を望んだところ、彼女自身が精霊にされてしまったという。彼女を利用した人間が全員破滅するのは、本人の望みが愚かだからとのことだった。さらにモルダーも以前じゅうたんをひろげたので、願いをかなえてやるという。

 モルダーは、私欲の為に使えば破滅すると考え、まず「世界平和」を頼んだところ、ジナイアはモルダー以外の人間を全員地球から消し去ってしまった。慌ててモルダーは第二の願いで人間を元に戻してもらう。三つ目の願いは、再度人類の幸福のため、会社の契約に使うような長ったらしい書類を作ってジナイアが変な叶え方をしないようにしようとする。ところがそこにスカリーが来て、幸福などはそれを努力して目指すのが尊いと諭され考えを変える。

 最後、モルダーとスカリーはモルダーの部屋で楽しくビデオを見ている。ジナイアは、かつてモルダーに話した希望通り、どこかの店でカフェオレを飲んでいるシーンで〆。



監督 ヴィンス・ギリガン
脚本 ヴィンス・ギリガン


感想

 評価は○。

 サブタイトルを見てまさかと思っていたが、本当に「魔法の精霊が現われて、何でも三つの願いを叶えてくれる」というおとぎ話の様なエピソード。それなりに面白かった事は認めるが、X-ファイルの世界観でこういう話をやるのはどうかと思わずにはいられない。初期には宇宙人や心霊現象をテーマにしていたX-ファイルが、6年後にはモルダーとスカリーが魔法の精霊と対面する事になろうとは、本当にシーズン1からは遠いところに来てしまったという気がする。

 今回の監督と脚本は、プロデューサーでもあるヴィンス・ギリガンが担当。ギリガンは今までにもシナリオライターとして何度も仕事はしてきたが、『X-ファイルはシーズン7で打ち切り』という噂が流れていたため、お別れ記念というかそういう物として監督を担当したそうである。

 魔法の精霊が当たり前の様に存在し、精霊に出会った人間がどんな願いをかなえてもらうかで頭を悩ませる、という展開は、「X-ファイルの世界観から乖離している」という点に目をつぶれば、結構ユーモラスで楽しかった。モルダーより前に頼みごとをしたアンソン・レスリー兄弟が、透明人間化能力を頼んで(予想とおり)車にはねられて死んだり、死人を生き返らせることを頼んで(予想とおり)ぐちゃぐちゃの死体がそのまま帰ってくるとか、モルダーが世界平和を頼んだら(予想とおり)世界中の人間を全て消してこれで世界は平和になりました、とか、一々皮肉な結末になるのが、ブラックな笑いを呼んでなかなか面白かった。

 ラストはモルダーがジナイアのために最後の願いを使ったことが示されるが、最初どういう事なのか良く解らなくて再確認してしまった。これはモルダーが頼みごとをする前に、ジナイアに「君なら何を望む?」と聞いて、それにジナイアが「カフェオレを飲みながら静かにすごす」と答えた事を実現してあげたわけで、結構オシャレなラストだった。まあ、これがX-ファイル的に適切なエピソードだったかどうかはともかくとして。

 終盤、スカリーがジナイアがいきなり消えたのを見て「催眠術かメスメリズムよ」と言うシーンがある。メスメリズムとは、18世紀のドイツ人医師メスメルが考えた治療体系で、本人はそれを「動物磁気」と呼び、その他の人はメスメリズムと呼んだ。メスメリズムは現代の催眠術の嚆矢とも言えるものだが、彼の弟子以降の世代で急速にオカルティックな世界に傾斜していったため、今では単なる「トンデモ科学」と同義語と考えて良い。要するに、スカリーは「こんなのはオカルトか何かよ」と言ったようなもので、なんか変な台詞ではあった。


一言メモ

 サブタイトルの原題「JE SOUHAITE」とはフランス語。意味は「I WISH(私は望む)」。