感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン8」第6話「レッドラム」


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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン8 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s8/
放送 Dlife。全21話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン8の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン8」あらすじ・感想まとめ

第6話 レッドラム REDRUM

あらすじ

http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s8/episode.html
EP6 レッドラム
12月8日、金曜日。独房で目覚めた検事のウェルズは、他の刑務所へ移送される途中、義父のアルに射殺されてしまう。意識が薄れる中、ウェルズの見た時計は逆行し始める。

 お題は「時間の逆行」。


 12月8日金曜日。独房で目覚めた検事マーティン・ウェルズは、事情も解らないままに他の刑務所へ移送される事になったが、建物から出た途端何者かに撃たれてしまう。

 やがて目覚めたウェルズは、自分が怪我一つしていない事に驚くが、友人のドゲットからは自身の妻ヴィッキーを殺した容疑者扱いされて混乱する。しかも日付は12月7日木曜日だという。ウェルズはここ数日の記憶が無いというと、ドゲットはとぼけるなと怒り出す。そしてウェルズは妻ヴィッキーが12月4日月曜日の早朝に殺されており、自分が最有力容疑者となっていることを知る。そしてウェルズがまた目覚めると、前日の12月6日水曜日になっており、ついにウェルズは自分が時間を遡っている事を悟る。しかしドゲットもスカリーもそれを信じようとはしない。

 12月5日火曜日。事件の翌日。ウェルズは友人のドゲットの家で目覚める。ウェルズは断片的な記憶と家の防犯カメラの映像から、妻を殺したのがシーザー・オコンポというゴロツキだとつきとめ捕まえる。前科者だったオコンポの弟は、ウェルズによって麻薬所持の罪で終身刑になり、刑務所で自殺した。しかも彼は今回は無実で、ウェルズもそれを知っていたのに無実の証拠を隠匿して終身刑にしたため、オコンポは復讐したのだった。直後ウェルズは警察に逮捕される。

 12月4日月曜日早朝。ウェルズは犯行数時間前に目覚め、ドゲットに妻が狙われている事を知らせ、警察にも連絡する。しかし警察が駆けつけたときにはまだ犯行時間前だったため、警察はそのまま帰ってしまう。そこに妻とオコンポが次々と現われ、ウェルズはオコンポに殺されそうになるが、ドゲットがオコンポを撃ち殺す。

 エピローグ。ウェルズは時間の逆行は自分の妻を助けたい思いが引き起こしたのも知れないと思う。しかし妻の命を助けた代わりに、ウェルズは証拠の捏造で有罪となった。


監督 ピーター・マークル
脚本 スティーヴン・マエダ(原案 スティーヴン・マエダ & ダニエル・アーキン)


感想

 評価は○。


 時間の逆行に巻き込まれた男の運命を描く不可思議系エピソード。久々にこれはと思わせる秀作だった。


 妻殺しの無実の罪で逮捕された男が、一日ずつ犯行の日に向かって舞い戻っていく様を描く超常展開で、雰囲気はX-ファイルというより「トワイライトゾーン」だった。本エピソードは事実上ウェルズが主人公で、主役のはずのドゲットもスカリーもほぼ物語に関係が無く、二人を別の人物に置き換えても全く問題は起きない。ということで、これがX-ファイルという番組である必然性は限りなくゼロだったが、そういう事を差し引いてもとにかく面白かった。

 時間を溯り、最終的に愛する者の死を防ごうという展開は、タイムトラベル/タイムループ物の定番展開の一つであるが、こういう方法もあるのかと心底感心させられた。しかもこれが結構昔の西暦2000年に作られたエピソードなのだから、かなり評価できると思う。

 視聴者が、事件について全く記憶の無いウェルズと同様に一日ずつ時間を溯り、殺人事件の謎を少しずつ解き明かしていく、という展開は、形はかなり違うものの、『結末から始まって冒頭で終わる』というトリッキーな構成の映画「メメント」(2000年)を髣髴とさせる。メメントの公開は2000年9月で、本エピソードの放送は2000年12月のため、映画「メメント」からヒントを得たということは考えにくいが、似たような時間逆行系の話が同じ年に公開/放送されたことには何か不思議な物を感じてしまう。

 時間をどんどん溯るうち、あらゆる証拠(自宅の防犯カメラ映像など)がウェルズの妻殺しを指し示しているし、ウェルズは度々意味深に妻の死ぬときの場面を思い出すし、オコンポとの会話で、ウェルズが無実の人間を刑務所に送ったことが解ってくるし、で、『実は最後にウェルズが本当に妻を殺した事が解って〆』というとんでもないダークなオチかと予想していたのだが、さすがにそんなことにはならなかった。まあ、「トワイライトゾーン」のエピソードだったら、そちらのオチになったのはまず間違いない。

 今回の脚本を書いたスティーヴン・マエダは、シーズン7・第18話「ブランドX」でも結構出来の良いエピソードを書いており、かなり出来る人の様に思える。ちなみにこの人は、後に「ロスト」や「CSIマイアミ」にプロデューサーとして参加している。

 シーザー・オコンポ役は、悪役俳優で有名(顔が怖い)なダニー・トレホが演じている。おかけで座っているだけなのに悪人の雰囲気満点である。

 ウェルズの声は故・鈴置洋孝氏でした。


一言メモ

 サブタイトルの原題「REDRUM」とは、殺人という意味の「MURDER」を逆から綴ったもので、時間を逆行しているという事にかけている。もっともREDRUMという単語はこの作品が初出ではない。スティーブン・キングのホラー小説「シャイニング」が元ネタだと思われる。