感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン8」第13話「受胎」

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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン8 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s8/
放送 Dlife。全21話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン8の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン8」あらすじ・感想まとめ

第13話 受胎 PER MANUM

あらすじ

http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s8/episode.html
EP13 受胎
スカリーとドゲットはハスケルという男に「妻がエイリアンに誘拐されて子どもを妊娠し、医者に殺され赤んぼうは盗まれた」と聞かされる。信じなかったスカリーだが・・・。

 お題は「エイリアン、政府の陰謀」。


 X-ファイル課にハスケルという男が現われ、妻は異星人の子供を生んだ後、医者に殺されたと言い出す。ハスケルの妻はアブダクションの犠牲者で、様々な実験をされガンにされたりした挙句、異星人の子供を植え付けられ出産させられたという。しかも医者も陰謀に加担し、子供を取り上げた後妻を殺したのだと主張した。

 スカリーはハスケルのあまりに荒唐無稽な主張に、具体的には何もしない事を決めるが、自分の体内の子供が気になり、医者に確認に赴く。その際、メアリー・ヘンダーショットという妊婦と出会うが、彼女も自分は何か得体の知れないものを身ごもっていると怯えていた。スカリーはスキナーと話し合い、休暇という名目でメアリーと共に姿をくらまし、二人一緒に陸軍病院に入院する。

 一方、ドゲットはハスケルの指紋から、ハスケルが30年前に軍で死んだことになっている事を知り、ハスケルはCIAの工作員ではないかと疑いを持つ。そして知人で政府職員のノエルに調査を依頼する。

 スカリーは病院の人間が自分たちを騙している事に気がつき、メアリーと逃げ出そうとしていると、ノエルが率いる兵士が現われ、ドゲットに頼まれたといって二人を車に乗せる。ところが途中でメアリーが産気づき、道端で出産させるが生まれたのは異星人の子供だった。しかしスカリーは眠らされ、目覚めると全てはスカリーの思い違いだったということにされていた。

 最後。回想シーン。モルダーはスカリーが人体実験の際に取られた卵子を政府の研究所から持ち帰っていた。スカリーはモルダーに人工授精の際の父親になってほしいと依頼していた。


監督 キム・マナーズ
脚本 クリス・カーター & フランク・スポトニッツ


感想

 評価は△。

 久方ぶりの宇宙人/政府の陰謀系エピソード。冒頭で、妊婦が出産すると、生まれてきたのがグレイの赤ん坊だった、というグロシーンに衝撃を超えて笑ってしまったが、以後の展開はイマイチで、ストーリーをひねりすぎて、何がなんだかよく解らない話に終始した失敗作だった。


 シーズン8の開始以来殆どスルーしてきたスカリーの妊娠をメインに持ってきたエピソードだったが、「妊娠したスカリーが自分の子に抱く不安」というプロットと、「妊婦メアリー・ヘンダーショットに対する政府の陰謀」というプロットの二つが上手くかみ合っておらず、ただゴタゴタしただけの理解し辛い話でしかなかった。

 そもそも、冒頭ハスケルX-ファイル課にやって来たのは何のためだったのか、というところが明確ではない。メアリーなりスカリーなりの子供に何かしたいのなら、回りくどい芝居をしたりせずに、当人を拉致して秘密の施設にでも閉じ込めればそれで済む話である。それを「ハスケルという男が何かを企んでいる……」という形で視聴者を引っ張ろうとしたものだから、話が複雑な割に腑に落ちない面倒くさいだけのエピソードになってしまっている。明らかにひねりすぎの失敗作である。

 とは言え、全編を通しての、患者が信頼をおく医者たちが実は全員ウソツキで患者を騙している、という設定はかなり怖いものが有り、そういうスリラー要素は評価できた。女医がスカリーのおなかをエコーで検査して、赤ん坊は順調です、と安心させた後、スカリーがふとモニターの下を見ると、全ての画象は録画したビデオテープからのウソ画象だった、というシーンは結構戦慄する場面だった。


 今回最大の収穫は、スカリーがモルダーとの間に子供を作ろうとした、という事実が明確になったことだろう。スカリーがモルダーに父親になってと頼み、モルダーがニッコリしてOKさ、と了承するシーンは、二人と長い付き合いの視聴者としては結構感慨が込み上げてくる的な場面だった。もっとも、現在スカリーが妊娠している子供は本当にモルダーとの子供なのか、はたまたメアリーの様に政府が何かの陰謀でスカリーに植えつけた宇宙人の胚なのか、というところは結局謎のまま終わってしまい、実にもやもやした結末となってしまった。


一言メモ

 サブタイトルの原題「PER MANUM」とはラテン語で、「〜によって」という意味。本編とどういう関係が有るのかまったく解りません。