感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン8」第20話「誕生 Part1」


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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン8 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s8/
放送 Dlife。全21話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン8の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン8」あらすじ・感想まとめ

第20話 誕生 Part1 ESSENCE

あらすじ

http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s8/episode.html
EP20 誕生 Part1
不妊だったスカリーが妊娠し、臨月を迎えた。それに伴って、怪しい影があちこちで動き出す。リジーは、スカリーの母親に取りいってスカリーの生活に入り込み、怪しく動く。

 お題は「異星人の侵略」。


 冒頭、ビリー・マイルズが誰かを殺したあと、部屋に火を放つシーンからスタート。


 ゼウス・ジェネティックスという会社のビルが全焼したが、この会社は過去(第13話「受胎」)に不妊女性に異星人の胚を植え付け異星人の赤子を生ませているという疑いがあったところだった。モルダーは何者かが証拠隠滅を図ったと疑い、ドゲットの協力で捜査を始める。ゼウス社の設立者パレンティ医師は、以前スカリーが胎児の検診をしてもらった相手で、モルダーはパレンティがスカリーに何かをしたのではないかと疑う。

 一方、スカリーは母親の紹介で来たリジーという女性に身の回りの世話を頼むが、リジーは実は政府の工作員ダフィー・ハスケル(「受胎」に登場)とつながっており、スカリーに何かの薬をこっそり飲ませていた。しかしハスケルはビリーに殺され、リジーもスカリーに薬を盛っていたことがばれる。リジーはクローンの研究者で、政府の援助で異星人のDNAを人間の卵子と組み合わせ異星人の子供を作り出すことに成功していたと告白する。しかし今回はスカリーをただ見張っていただけだという。確かにリジーの飲ませていたのはただのビタミン剤だった。

 モルダーはスカリーの子供が周囲から狙われていると知り、二人で逃げ出そうとするが、そこにビリーが現われる。そして、ビリーに襲われそうになった二人を助けたのはクライチェックだった。クライチェックは、異星人はビリー・マイルズの様に宇宙ウイルスを人間に感染させ、最終的にその相手とすり替わってしまうが、そういった「代替人間」たちは、スカリーが生む子供が自分たちの脅威になりかねないと考え、排除しようとしているという。スカリーの子供は「欠点を持たない人間を超えた人間」として生まれるはずだと言う。

 モルダーたちは、スカリーの安全を確保するため、応援としてモニカ・レイエスを呼び出す。モルダーとスキナーはFBI本部に侵入してきたビリーをおびき寄せるとビルの屋上から突き落とし、その隙にレイエスはスカリーを車に乗せて脱出した。しかしそれを見送るFBI捜査官も、首の後ろに突起が有る代替人間だった。続く。


監督 キム・マナーズ
脚本 クリス・カーター


感想

 評価は◎。


 クライマックス二部作のテーマは、このシーズンの初頭から引っ張ってきた「スカリーの妊娠」で、宇宙人や政府の秘密組織が暗躍し、さらにモニカ・レイエスやクライチェックも登場するという豪華編となった。


 今回強烈な印象を残したのは、なんといってもモルダーの活躍(?)である。FBIを辞めてただの一市民になったにも関わらず、行動は以前と全く変わっておらず、ドゲットをダシにしてFBI本部に平気で入り込んだり、疑いをかけた相手の居場所に堂々と忍び込んだり、事件現場に捜査官の様な顔をして現われたり、とやりたい放題。挙句にドゲットに対して「人を怒らせるのもX-ファイル課の仕事の内」とか言ってしまったりする。FBI捜査官の内はまだ大目に見れたものの、ただの市民がこの行動というのはメチャクチャ厚かましいという気がする。

 このエピソードの怪異は、懐かしのキャラクター・ビリー・マイルズである。第15話「デッドアライブ Part2」で、いつの間にか失踪したためもう忘れ去られたのかと思っていたが、最終回前にキッチリ再登場してきた。宇宙人の殺し屋というとおなじみバウンティ・ハンターが頭に浮かぶが、今回は別の用事で忙しいのか何故か姿を現さず、代わりにビリーが関係者を殺しまくっていた。手刀一発で人間の首を落としまくるあたり、先輩バウンティ・ハンターよりよっぽど派手だが、すさまじい怪力だとか、いくら銃で撃たれてもまったくこたえないというあたりはそっくりである。まあ緑の血からレトロウイルスを撒き散らして撃った相手を瀕死にしないだけ、幾分良心的とは言えよう。もともとビリー・マイルズは、この番組のパイロット版「序章」でちょこっと出てきただけのキャラだったのだが、7年経ってからモルダーたちの強敵として暴れまわるとは、なんというか感慨深いものが有る。

 今回はビリーとは別口で、政府の工作員(多分)ダフィー・ハスケルと、ハスケルと組んだリジーが裏工作を行なっていた。ハスケルは第13話「受胎」で登場していた男だが、そんなゲストキャラはすっかり忘れきっていたので、思わせぶりに登場したときには誰かと首をひねってしまった。それにしてもリジーがスカリーにこっそり飲ませていたカプセルの中身がただのビタミン剤というのが全く納得できない。こうなると、「ビタミン剤だから心配なし」と報告した、スカリーが絶対的に信頼しているというあの女医も陰謀の一味なのかと疑りたくなってくるのだが……

 終盤、おなじみクライチェックがまたまた登場したが、登場シーンでモルダーたちに迫るビリーをいきなり車で跳ね飛ばすのに笑った。それにしても、クライチェックはもう政府の秘密組織とかとは縁が切れているはずなのに、何故モルダーやスカリーの周りをうろついて宇宙人の侵略話について色々警告してくれるのか不思議では有る。まあ裏があるというより、かつての「ディープ・スロート」や「ミスターX」の様な機密情報の提供役を割り振られたということかもしれない。

 ラストでスカリーとレイエスの車を見送った男も、実は「代替人間」だったというところで続くとなるが、スカリーを逃がしちゃダメだと思うのだが……、思わせぶりなオチだった。


一言メモ

 サブタイトルの原題「ESSENCE」とは「本質、真髄」といった意味。ただしあまり話の内容とは関係無さそうで、多分次回の第21話の原題「EXISTENCE」とセットでしゃれのつもりだと思われる。