感想:海外ドラマ「X-ファイル シーズン8」第21話(最終回)「誕生 Part2」


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■ディーライフ/Dlife X-ファイル シーズン8 http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s8/
放送 Dlife。全21話。

【※以下ネタバレ】


※シーズン8の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら→「X-ファイル シーズン8」あらすじ・感想まとめ

第21話(最終回) 誕生 Part2 EXISTENCE

あらすじ

http://www.dlife.jp/lineup/drama/xfile_s8/episode.html
EP21 誕生 Part2
肉の塊となったはずのビリーは再びよみがえり、スカリーの追跡を始める。

 お題は「異星人の侵略」。


 第20話「誕生 Part1」の続編。


 スカリーとレイエスは、ドゲットの故郷で今は廃墟となった町デモクラット・ホットスプリングにたどり着き、出産の準備を始めた。一方、モルダーたちは、ゴミ収集車に転落して細切れになって死んだはずのビリー・マイルズが生き返ったことを知る。ドゲットの友人で諜報機関の関係者ノエル・ローラーは、ドゲットにスカリーを狙う男の情報だと言って、ある話をする。スカリーは6年前宇宙人のふりをした軍関係者に拉致され首にチップを埋め込まれたが、そのチップには無敵の兵士を出産させる機能もあったという。またスカリーを狙う不死身のビリー・マイルズもその生物型無敵兵士なのだと教える。

 モルダーはその話をデタラメだと否定し、やがてノエルがクライチェックと繋がっている事が判明した。さらにドゲットはノエルと同僚クレイン捜査官がグルで、モルダーとスキナーを殺そうとしていることを知る。結局スキナーはまたしても裏切ったクライチェックを射殺し、ドゲットとスキナーは襲ってきたノエルとクレインを殺した。

 一方、スカリーたちのところにビリー・マイルズが現われるが、たまたま出会った女性保安官がビリーを射殺した。レイエスは保安官の助けを借りてスカリーの出産を手助けするが、その途中で保安官の首筋にビリー同様に妙な突起が有ることに気が付く。さらに死んだはずのビリーが生き返り、最後には町に四方八方から正体不明の人々が集まってくる。しかし彼らはスカリーに手を出さず、出産を見守った後姿を消した。

 スカリーの子供はモルダーの父親の名前を取ってウィリアムと名付けられた。カーシュはドゲットの報告書が受け入れられないと叱責するが、ドゲットはカーシュが死んだノエルやクレインと繋がっている疑いが強いと告発する。そして独断でレイエスをX-ファイル課の課員にすると宣言する。


監督 キム・マナーズ
脚本 クリス・カーター


感想

 評価は◎。

 最終回は、シーズンの初頭から引っ張ってきた「スカリーの妊娠」についての物語の総決算回で、今まで潜んでいた新型宇宙人「代替人間」たちが一気に姿を現す、という展開ともあいまって、実に見ごたえが有った。


 今回は、異星人が地球人とすり替わった「代替人間」の大活躍回で、今までは派手に動いていたのはビリー・マイルズだけだったが、今回はドゲットの秘密情報源(のつもりだった)ノエル・ローラーや同僚のクレイン捜査官も正体を表してFBI本部の中で襲いかかってくるなど、いかにも宇宙人侵略話の雰囲気で実に楽しかった。またスカリーの出産場所を見つけた代替人間たちが、四方八方から集まってきて、廃屋の中でじっとスカリーを見つめているシーンも実に不気味で印象深かった。

 しかし、いくら新型の宇宙人だとはいえ、ひき肉レベルまで解体されたビリー・マイルズがいつの間にか再生してしまうとは、いくらなんでも不死身すぎである。まあ、金属の小片が突然くるくる回転し始めて、みるみる「成長」して背骨を形成していくあたりは、見た目は面白かった事は認めるが……、あと、あれだけ必死に逃げてきたスカリーとレイエスの居場所をどうやって突き止めたのかも答えが無いまま終わってしまったのは、いささか納得できない。まさか、代替人間の女保安官が、たまたま出会った相手がスカリーたちだった、という偶然で見つけたとでも言うつもりだろうか。

 前回出てきたスカリーのお手伝い役リジーは今回は全く出番が無かった。ということは彼女がスカリーにこっそり飲ませていた謎のカプセルは、本当に「ただのビタミン剤」だったわけで、あんなにこそこそと思わせぶりにふるまっていた理由が解らない。これもまたX-ファイルにありがちな「視聴者をミスリードしようとして後でつじつまが合わなくなる」の一つだった模様である。

 さて、FBI本部を逐電したスカリーとレイエスが、ドゲットの故郷デモクラット・ホットスプリングにたどりついて出産の準備を始めるのだが、何一つ用意をしていなかったのには笑ってしまった。タオルからろうそくから何から全て廃墟で現地調達である。「たまたま」必要なものが揃っていたから助かったが、何も手に入らなかったらどうするつもりだったんだと突っ込まずにはいられない。いくら急な話でも、レイエスにあらかじめ色々買い物をしてもらってから迎えに来てもらってもバチは当たらなかったと思う。

 出産の準備を進めるレイエスが、何度も夜空を見上げてまぶしい星を見つけるシーンが有る。視聴していたときはピンと来なかったのだが、どうもあのシーンは、キリスト生誕を知らせたベツレヘムの星の登場に見立てているらしい。また、終盤モルダーがスカリー救助に駆けつけた際「光に導かれた云々」と語ったのもまたしかり。そして最後にローン・ガンメンの三人組がスカリーの出産祝いに駆けつけるのは、彼らが「東方の三博士」役担当という見方も有るようである。つまり、全ては、スカリーの息子ウィリアムをキリストになぞらえているわけである。スカリーが出産した空き家は「出エジプト記 岩の水」という看板が掲げられていたが、これも何か関係が有るのかもしれない。非キリスト教徒なのでピンと来なかったが、キリスト教圏の視聴者にとっては容易にわかる比喩だったのだろうか。

 今回はシーズン2から断続的に登場していた悪役クライチェックがついに退場となり、ちょっと感慨深かった。忘れた頃に何度でも帰ってきたのだが、ついに(今までやられたことに腹を据えかねていた)スキナーに撃ち殺されてしまったわけである。まあ、今までの所業を全て抜きにしても、今回だけでもビリー・マイルズが襲ってきたときにスキナーをおいて一人だけエレベーターで逃げ出そうとした、というあれだけとっても、恨みの銃弾を食らうのは必然だったと言えよう。

 最後、カーシュも代替人間とグルではないか(というかカーシュも代替人間なのでは?)という疑問を残したまま物語が終わってしまうのは実に気を持たせてくれた。しかし、カーシュも言っていたが、ドゲットが勝手にレイエスをX-ファイル課員にしました、というのは強引過ぎである。まああの展開は、『次のシーズンはこの二人でコンビを組んでいく』というスタッフの視聴者への予告編だと思って納得するべきなのだろう。


一言メモ

 サブタイトルの原題「EXISTENCE」とは「存在」といった意味。ただし話の内容とまるで関係無さそうで、多分前回(第20話)の原題「ESSENCE」とセットでしゃれのつもりだと思われる。