感想:海外ドラマ「X-ファイル 2016」第6話(最終回)「闘争 Part2」

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X-ファイル 2016|FOX|FOX ネットワークス http://tv.foxjapan.com/fox/program/index/prgm_id/20683
放送 FOXチャンネル。全6話。

【※以下ネタバレ】
 
X-ファイル 2016(ニーゼロイチロク)の他のエピソードのあらすじ・感想はこちら
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第6話(最終回) 闘争 Part2 MY STRUGGLE II

 

あらすじ

タッド・オマリーがニュース配信を再開し、異星人のDNAに関する陰謀を告発した。その直後、モルダーが失踪。病院には、各種の感染症にかかった患者があふれ始める。スカリーは、全国民が何らかの方法で免疫機能を奪われ、どんな病原体にも抵抗がなくなったものと考えて治療法を探る。そこへ、昔の友人から電話が入る。

 お題は「DNA改変」。

 第1話「闘争 Part1」の続編。

 6週間前行方をくらました動画ニュースサイトの運営者タッド・オマリーが突然復活し、ニュースの配信を再開した。しかもその内容は、アメリカ国民は知らない間に異星人のDNAを植え付けられており、そのため免疫機能が働かなくなり、病気で簡単に死ぬ可能性がある、という衝撃的な物だった。同じころ、モルダーのアパートが何者かに荒らされ、モルダー本人は行方不明になっていた。

 そして、オマリーの主張通り、病気に侵された人たちが病院に殺到し始め、社会は大混乱に陥った。スカリーの考えでは、秘密組織は過去に天然痘の予防接種と一緒に異星人のDNAも注射しており、それが遺伝で子供たちにも伝わっていくことで、もはや国民全員が異星人のDNAを植え付けられた状態に違いなかった。

 そんな中、元X-ファイル課員だったモニカ・レイエスが突然スカリーの前に現れる。実はレイエスは10年前に瀕死のスモーキング・マンに呼び出され、全人類を人質にした計画を知らされて、以後仕方なく彼の部下として働かされていた。レイエスはスカリーに「異星人のDNAを持つものは生き延びることができる」というヒントを与える。

 実は国民の免疫機能を停止させたのは、異星人のDNAではなく、秘密組織の作った人工ウイルス「スパルタウイルス」だった。そして異星人DNAは、人間に害を及ぼすのではなく、逆にスパルタウイルスの効力を無効化する力があった。スカリーはすぐさま自分の血のDNAを基に、スパルタウイルスのワクチンを作り始める。

 一方モルダーは、自分を襲ったシンジケートのメンバーからスモーキング・マンの居場所を聞き出し、本拠へとたどり着いていた。スモーキング・マンは増えすぎた人間を滅亡させ、異星人DNAを持つ選ばれたものだけを生き延びさせようとしていた。スモーキング・マンはモルダーに仲間になれと持ちかけるが、モルダーは拒否する。ミラー捜査官がモルダーの行方を突き止め駆け付けた時には、モルダーは病気の感染で倒れ意識不明状態だった。

 ミラーはモルダーをスカリーの元へと連れ帰るが、既にモルダーの症状は重篤化し、もはやワクチン投与だけでは手遅れだった。モルダーを救うには息子ウィリアムの幹細胞を移植するしか方法が無かったが、ウィリアムは行方不明であり、どうすることもできない。絶望するスカリーたちの真上に、突然光り輝くUFOが出現した。<完>


監督 クリス・カーター
脚本 クリス・カーター(原案:クリス・カーター、ドクター・マーガレット・フィエロン、ドクター・アニー・サイモン)


感想

 評価は〇。


 第1話「闘争 Part1」の続編で、テーマとしてシリーズの定番である異星人云々が再び持ち出されたが、今回は素直に「異星人のDNA」や「秘密組織の人類絶滅計画」といった荒唐無稽な話に徹しており、なかなかの面白さだった。


 オリジナルシリーズは、X-ファイル関連の事件に関わるのはあくまでごく少数の関係者のみ、というのが定番だったが、今回は久々の復活でノリが変わったか、アメリカ全体にパンデミック的な状況が発生し、全国民が異星人のDNA云々の陰謀に巻き込まれるというとんでもない事件となってしまった。もうモルダーやスカリーが個人で収拾できる範囲を超えており、いろいろな意味で2010年代のX-ファイルは変わってしまった、と痛感させられた。

 今回の話は原案に二人のドクターが参加しているからか、かなり専門的な医学用語をやたらと使っており、『スカリーの異星人DNAが見つからない→やり直してみたらようやく発見できた』云々という辺りの会話は殆ど理解不可能だった。まあ、スカリーとアインシュタインの医者コンビがそれっぽいことを言っている、程度に受け取っておけば良いのかもしれない。

 本エピソードは人類のDNA改変云々話がメインだが、さりげなくタッド・オマリーがニュースの中で『ケムトレイル』に言及していたのにはニヤリとさせられた。ケムトレイル(chem trail)とは「ケミカル・トレイル(chemical trail)の略で、怪しげな飛行機雲のこと。陰謀論者の主張では「政府が飛行機から特殊な化学物質を散布しておいて、それを飛行機雲だとごまかしているが、普通の飛行機雲とは性質がまるで違うのですぐ解る」とされるオカルトネタの一つである。今回、さらっとこの手のオカルトネタを放り込んできてくれたのは、オカルトスキーにはちょっと嬉しかった。

 今回は第5話「バビロン」に登場したFBI捜査官ミラーとアインシュタインのコンビが再度登場している。しかし、さすがに「バビロン」の時とは違い、モルダーとスカリーを押しのけて活躍したりはせず、主役コンビのサポートに徹していた。最終回という重要エピソードにも顔を出すという事は、X-ファイルの今後の新作があるとすれば、二人はレギュラー昇格、ゆくゆくはメインキャラとしてモルダー&スカリーからバトンタッチ、という流れが既に決定済みなのかもしれない。

 ストーリー中盤には、懐かしのモニカ・レイエスが戻ってきてくれて、ちょっと嬉しい展開となった。2016にはモルダー&スカリーの主役コンビの復活の他、スキナー、スモーキング・マン、ローンガンメン三人組、等、オリジナルシリーズのメンバーがどっと戻ってきて13年ぶりの同窓会の様相を呈しているが、付き合いは僅かだったとはいえレイエスことアナベス・ギッシュも戻ってきてくれたのは嬉しい話である。しかし、レイエスの相棒ドゲットことロバート・パトリックは、2016への参加は辞退した様で、残念ではあった。

 終盤には、モルダーとスモーキング・マンの対決がまたも実現したが、二人とも本当に歳を取ったと嘆息せずにはいられなかった。二人の対決は、シーズン2・第8話「昇天 Part3」以来何度か実現しているが、若くて活動的なモルダー対老獪な権力者スモーキング・マンという構図がワクワクさせてくれた。しかし、2016ではもうモルダーは疲れ切った中年だし、スモーキング・マンはスモーキング・マンで今にも倒れそうだし、と、見ていて悲しいものがあった。そろそろこの腐れ縁もどこかで断ち切るべきなのではあるまいか。

 そして、驚くことに、本エピソードはなんとラストまで行っても事件は解決せず、「続く」(通称:クリフハンガー)で幕を閉じてしまうので、あまりといえばあまりのオチに、心底呆然とさせられた。放送前にドゥカブニーは冗談めかして「もう自分たちは歳をとって体力が無いので、フルシーズン24話は作れないので、6話だけにとどめた」と語っていたのに、まさかの続編前提のオチである。X-ファイル史上最大級の大風呂敷を広げておいて、そのまま作り逃げとは、ちょっとスタッフが何を考えているのかわからない。これは噂通り2017年秋に新作テレビシリーズが放送されるのを願うしかなさそうである。


一言メモ

 オープニングでいつもは「THE TRUTH IS OUT THERE(真実はそこにある)」と表示されるシーンで、今回は特別に「THIS IS THE END」と表示されていた。


もう一言

 本作は、シナリオを書いた人物を表示する際、いつもの「Written by 誰それ」ではなく、

Story by : Dr. Anne Simon & Dr. Margaret Fearon & Chris Carter
Teleplay by : Chris Carter

 という変わった表示をしていた。これはシナリオのアイデアを考えた人が別にいる場合に、こう表示することが決められているためである。具体的には「Story by ~」はアイデアを提供した人物、「Teleplay by ~」はそのアイデアを具体的なシナリオ形式に書き上げた人物、をそれぞれ示している。



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