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感想:視聴者参加型推理ドラマ「綾辻行人・有栖川有栖からの挑戦状8 安楽椅子探偵 ON STAGE (オンステージ)」(2017年)

推理 ドラマ

 
安楽椅子探偵 ON AIR [DVD]

安楽椅子探偵ON STAGE | 朝日放送  http://www.asahi.co.jp/anraku/

従来、推理ドラマは1回の番組の中で解決するもの。


しかしこの番組は、事件の起こる「出題編」と、安楽椅子探偵が事件の謎を解く「解決編」の二夜、二週に渡ります。


視聴者は「出題編」放送後の解答締め切りまでに、犯人と推理のプロセスを投稿し、"最もエレガントな解答"を投稿した視聴者1名に栄誉と賞金が贈られるという「視聴者参加型・懸賞金つき本格ミステリドラマです」


原作は日本ミステリ界二大巨匠、綾辻行人有栖川有栖による共作。


1999年の記念すべき第1弾の放送から、2008年の第7弾まで視聴者とのガチンコ知的勝負を繰り広げてきました。
回を重ねるごとにその難解度が増しているという噂がある中、約8年もの沈黙を破り、視聴者に挑戦します。

 
【※以下ネタバレ】
 

あらすじ

『出題編』(放映日:2017年1月5日(木)深夜。約70分)
 

あれから8年、安楽椅子探偵は都市伝説化していた。
そんな中、安楽椅子探偵をモチーフにした芝居を上演する劇団が現れる。
その本番中に安楽椅子探偵役の役者が殺された…。

 12月。「山科笛美」は就職できずに困り果てていたところ、道端で一つの笛を拾う。笛美はそれが都市伝説として語られている「安楽椅子探偵」を呼び出すための笛だと確信し、大喜びする。さらに笛美はネットで安楽椅子探偵関係を検索するうちに、まさに安楽椅子探偵をテーマにした舞台劇「安楽椅子探偵の伝説」を見つけ、話のネタに調べに出かける。

 劇を上演している劇団「超煽情シアター」の座長「天王寺満斗」(てんのうじ・みつと)は、幼いころに父親から安楽椅子探偵の事を聞かされ、すっかり安楽椅子探偵マニアになってしまっていた。そしてその思いが高じて劇を上演するようになったのだという。安楽椅子探偵に会いたい天王寺は笛美に今すぐ笛を吹けと迫り、笛美が拒否すると、では吹く瞬間に立ち会いたいと言って、劇団で働くように勧める。

 劇団の最新作「安楽椅子探偵の伝説3」で安楽椅子探偵役を演じる若手「中崎楽太」(なかざき・らくた)は、最近人気に天狗になり、先輩俳優から反感を買っていた。

 1月15日。千秋楽公演で、舞台の上で安楽椅子探偵が突然倒れて動かなくなり大騒ぎになる。調べてみると、安楽椅子探偵の恰好をしていたのは、中崎楽太ではなく、その双子の弟で劇団スタッフの「中崎安夫」(なかざき・やすお)だった。しかも安夫は死んでおり、彼が座っていた椅子には背もたれに針が取り付けられ、先端には即効性の毒が塗られていた。何者かが椅子に座るはずだった楽太を狙い、毒針を仕掛けたとしか考えられない。

 さらに、行方知れずの楽太は、劇団事務所のロッカーの中で撲殺死体として発見された。楽太は劇が始まる前の昼間15:00~16:00のうちにすでに殺されていたことも判明した。

 笛美は知り合いの刑事「東山恵司」(ひがしやま・けいじ)にくっついて素人探偵気取りで事件の捜査を始めるが、恵司が捜査能力がお粗末極まりないため、犯人の目星は全くつかない。

 やがて恵司は天王寺が毒薬を所持していたことから、強引に天王寺が犯人だと決めつける。笛美は、「もしかして、天王寺は自分で犯罪を起こして自分を窮地に追い込み、そこで笛を吹いて安楽椅子探偵を呼び出したかったのでは?」と思いつく。その瞬間、破れかぶれになった天王寺は笛美の笛を奪い取り、笛を吹き鳴らす。




『解決編』(放映日:2017年1月13日(金) 深夜1:34~。約60分)

 笛を吹いた途端、一堂の前に謎の存在「安楽椅子探偵」が現われ、「純粋推理空間」で事件の説明を始める。


●推理1

 天王寺のデスクから毒の瓶が発見されたが、デスクは事務所の中にあり、劇団関係者なら誰でも引き出しに毒を入れることができる。これをもって天王寺が真犯人という証拠にはならない。


●推理2

 犯人は自分が毒針を仕込んだ椅子を舞台で使わせるため、前日まで使用していたプラスチックの椅子にペンキをかけて使用不能にした。しかし普通にペンキをかけた場合、背もたれの部分にかかるはずだが、実際は腰かける部分に垂れたようになっており、不自然さがある。犯人はなぜこんな風にかけたのか?

 それは「背もたれにかけられなかった」と考えるのが一番自然。犯人は椅子の上にドライアイスで台を作り、その上にペンキを注いだコップを置いて一種の時限装置を仕掛けた。そして数時間後にドライアイスが気化してコップが倒れた結果、椅子の座る部分にペンキがこぼれた。こう考えると、容疑者は最後まで劇場に残っていた天王寺だけではなく、「ペンキ入りコップを持って椅子の側に近づけた人物」にまで広がる。そして、この時点で劇団関係者以外は全員排除される。


●推理3

 犯人は毒針を仕掛けて、安楽椅子探偵役の中崎楽太を舞台上で殺すつもりだったことは明白である。にも関わらず、犯人は楽太を芝居が始まる前の15時ころに事務所の資料室で撲殺している。何故計画を変えたのか?

 論理的な回答は一つ。「人違いで殺害した」。当日、中崎安夫は電話で何者かに15時に会おうと呼び出されている。おそらく犯人はこの時安夫を殺すつもりで資料室に呼び出したのだが、実際に来たのは楽太だった。楽太は最近四六時中ネックレスをしているが、その時は首からタオルを下げていたためにネックレスが見えず、犯人は楽太と気が付かないまま殺してしまったのである。


●推理4

 資料室の犯行前後の状況を見比べてみると、「棚に置いてある電気時計が7分遅れている」「棚の雑誌の並びが変わっている」事が分かる。電気時計が遅れているという事は、7分間電気コードがコンセントが抜かれていたということである(当日停電は無かったことがあらかじめ示されている)。さらに時計の下あたりに並べてある雑誌の並びが変わっている、という事は、答えは一つ、犯人はコンセントを使用したかったので、時計のコードを抜いたのである。

 ではコードを抜いて何をしたのか? 資料室の植木鉢を注意深く見ると、丸いものが落ちている。これはネックレスの一部である。また事務所備え付けの掃除機用の紙パックが一個減っている。合わせて考えれば、答えは「掃除機を使った」である。犯人は楽太を殺した際、ネックレスがちぎれて飛び散ってしまい、慌てて拾い集めたものの、椅子の下に転がり込んだものは手がとどなかった。そのため掃除機を持ち出して吸い込んだのである。


●推理5

 ところで、当日千秋楽の昼には、事務所にはコードレス掃除機が新しく届いていた。何故犯人は苦労してコンセントを空けたりせずに、コードレス掃除機を使わなかったのか? 答えは一つ「犯人はコードレス掃除機の存在を知らなかった」。コードレス掃除機が届くという事実を劇団関係者の大半は知っていたが、数人はその場におらず聞いていなかった。


●推理6

 「ペンキ入りコップを椅子に置くことができた」「コードレス掃除機が事務所にあることを知らなかった」、この二つの条件を満たすのはただ一人、劇団の衣装係の江坂紗夜である。


●真犯人は……

 劇団の衣装係「江坂紗夜」。


●真相

 江坂紗夜は、実は座長の天王寺満斗の腹違いの妹である。二人の幼いころに両親が離婚したため、天王寺とは苗字が違う。紗夜は母親に引き取られ、たまに父親に会うことが楽しみだったが、そんな時、父親は紗夜を無視して兄の満斗に「安楽椅子探偵」の話ばかりしていたため、紗夜は安楽椅子探偵を憎悪するようになった。

 やがて紗夜は劇団に入ったが、安楽椅子探偵がいかにバカバカしいか知らしめるため、「安楽キコ」の名前で安楽椅子探偵の舞台のシナリオを書いた。ところが予想に反して劇は大うけしてしまった。ますます怒りが募った紗夜は、ならば舞台上で人死にを出して劇をめちゃくちゃにすることを思いついた。

 紗夜は女慣れしていない安夫に近づき、自分の代わりに毒を購入させたり良いように使った。そしてペンキのコップを仕掛けたあと、事情を知る安夫の口封じのため15時に事務所に呼び出した。しかしそこに来たのは楽太の方で間違って殺してしまう。仕方なく紗夜は安夫に「楽太が失踪したので、安夫が身代わりになって舞台に出るしかない」と薦め、安夫も毒針で殺した。最後に兄満斗を陥れるため、毒をデスクに入れたのだった。


●エピローグ

 事件は刑事の恵司が解決したことになり、紗夜は逮捕された。安楽椅子探偵が見えているのは笛を吹いた満斗だけだったが、やがて安楽椅子探偵も消え去った。最後、満斗が客席に置かれた花束を取り上げカードを見ると「Q.E.D」と書かれていた。


感想

 朝日放送(ABC)制作の、伝説的視聴者参加型推理ドラマ「安楽椅子探偵」シリーズの第八弾。まず最初に「出題編」を放送し、視聴者に犯人名とそこに到る道筋を推理して応募してもらい、数日後に「解決編」を放送、という形式で放送されたドラマ。


 本作は第七弾「安楽椅子探偵と忘却の岬」(2008年)から8年ぶりの新作という事で、もう今までのシリーズを知らない人も多いから、という事なのか、謎解きの難易度が歴代シリーズ中ではかなり低めでしたね(番組の最後のトークコーナーで、原作者綾辻行人氏も易しめにした、ということを語っていました)。体感ですが、シリーズで最も易しいと思える3作目「安楽椅子探偵の聖夜」と同様の「入門編」という感じでした。

 しかし、そこはそれ、伝説の「安楽椅子探偵」ですから、易しいと言ったところで「ほいほい誰でも解ける」というレベルではなく、「推理のアクロバットを、難しい話だと5回くらい要求されるのに、今回はたったの2回だけだったよ」という程度で、やはり難しいことには違いなく。

 まあ、今回の話は、謎解きに理不尽さというか「謎解きのために作られた無理のあるシチュエーション」という物はなく、すんなり納得できる話だったのは好印象でした。まあ、「大満足!」とまではいかないものの、まずまずの満足度だったと言えましょうか。

 欲を言うなら「解決編」におなじみの冗談が殆どなかったのが物足りなかったかなぁ、というところです。過去の作品では、「出題編」は徹底的にシリアスに進める代わりに、「解決編」では出演者たちが一転コミカル演技を披露して、その落差も楽しみの一つだったのですが、今回は時間が無いからか脱線もなく粛々と進めてしまい、そのあたりはやや肩透かし感もありました。


 とはいえ、結論を言えば、今回も満足度の高い内容でした。次回作は8年も待たさずに作ってほしいところであります。


※「安楽椅子探偵」シリーズの他作品のあらすじ・感想は、以下のページでどうぞ

perry-r.hatenablog.com


●放送日
出題編 2017年1月 5日(木) (約70分)
解決編 2017年1月13日(金) (約60分)



●スタッフ
原作 綾辻行人 有栖川有栖
脚本 戸田山雅司
プロデューサー 森山浩一(ABC) 秋山利謙(ABC)
監督 山口正紘(ABC)



●キャスト
安楽椅子探偵 ?
山科笛美 やましな ふえみ (劇団「超煽情シアター」スタッフ) 吉川莉早
東山恵司 ひがしやま けいじ (刑事) 植木祥平
竹田勘治 たけだ かんじ (鑑識) 山浦徹


天王寺満斗 てんのうじ みつと (劇団「超煽情シアター」座長) 行澤孝
緑橋登 みどりばし のぼる (劇団「超煽情シアター」俳優) 浜口望海
駒川聖実 こまがわ きよみ (劇団「超煽情シアター」俳優) 富樫世羅
中崎楽太 なかざき らくた (劇団「超煽情シアター」俳優) 長南洸生
守口三咲 もりぐち みさき (劇団「超煽情シアター」俳優) 英智
平野友芳 ひらの ともよし (劇団「超煽情シアター」俳優) 井上拓哉
田辺空彦 たなべ そらひこ (劇団「超煽情シアター」俳優) 竹村晋太朗
中崎安夫 なかざき やすお (劇団「超煽情シアター」スタッフ) 石田直也
長田吹子 ながた ふきこ (劇団「超煽情シアター」スタッフ) 生田朗子
江坂紗夜 えさか さや (劇団「超煽情シアター」スタッフ) 大橋梓
金山武寛 かなやま たけひろ (外部スタッフ) 上杉逸平
植田照信 うえだ てるのぶ (外部スタッフ) 平口泰司
黒川響平 くろかわ きょうへい (外部スタッフ) 渡辺知晃
戸越熊男 とごし くまお (劇場オーナー) 畑中ふう
安楽椅子探偵オタクの男 湯浅崇
天王寺丹貞 てんのうじ あきさだ (天王寺満斗の父) 嶋尾康史