感想:海外ドラマ「スパイ大作戦」第36話(シーズン2 第8話)「ニセ札製造マシン」

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【※以下ネタバレ】
 
シーズン2(29~53話)の他のエピソードのあらすじ・感想は、以下のページでどうぞ
perry-r.hatenablog.com
 

第36話 ニセ札製造マシン The Money Machine (シーズン2・第8話)

 

あらすじ

悪質資本家の信用を失墜させるため、紙幣偽造組織に扮したIMFチーム。偽物の偽造紙幣マシンを使った作戦で任務の遂行を図る。


アフリカの小国ガレアで紙幣の原紙が強奪される。犯人はアフリカ財界の大立者ダボリーと思われたが、大物であり容疑だけでは逮捕できない。ガレアに乗り込んだIMFチームは、紙幣偽造組織に扮し、ニセの最新鋭ニセ札印刷マシンを使った作戦でダボリーの信用失墜を狙う。

※DVD版のタイトルは「偽造紙幣マシン」。


【今回の指令】
 アフリカの新興国ガレアで、紙幣に使う紙が、偽札作りのプロのタゴールに盗まれた。そして、それを実行させたのは、同国の財界の大物である証券会社社長ウォルター・ダボリーである。ダボリーはタゴールに偽札を作らせ、流通させる計画だと思われる。IMFは盗まれた紙を取り戻し、またダボリーを再起不能にしなければならない。


【作戦参加メンバー】
 レギュラー:フェルプス、ローラン、シナモン、バーニー
 ゲスト:無し


【作戦】
 シナモンはダボリーの会社で銅山の株を買いあさり、さらにダボリーに接近して金を貸してほしいと頼み込む。シナモンはダボリーに、夫の地質学者が銅山で新鉱脈を見つけたので、それが正式に公表されれば株は値上がり確実だと嘘を吹き込む。

 一方、ローランはわざとダボリーの前でいろいろ怪しいそぶりを見せ、自分が偽札作りの組織の一員だと信じ込ませる。またバーニーはダボリー宛のテレタイプで「鉱山に新鉱脈が見つかった」という偽情報を送り付ける。

 ダボリーはローランの偽札作りの仲間だというフェルプス接触し、フェルプスは「コンピューターを使った紙幣偽造マシン」を披露し、完璧な偽札を印刷するところを見せる。実はその「偽札」は、IMFがあらかじめ政府関係者から手に入れていた本物の紙幣だが、ダボリーたちはマシンが本物だと信じ込む。ダボリーはフェルプスに報酬50万ドルを約束し、マシンで偽札を800万ドル分印刷させ、それで銅山の株の代金を支払おうと考える。そして部下には銅山の株を残らず買い占めるように命じる。

 翌日、ダボリーは盗んだ紙幣用の紙をフェルプスに渡し、偽造紙幣を800万ドル分印刷するように指示する。フェルプスたちは、その紙で偽札を印刷しているふりをして、実は紙を受け取り、代わりにあらかじめ用意していた仕掛けのある紙幣を差し出す。また、ダボリーが『偽札』を詰め込んだカバンの中には、フェルプスが小型の装置をこっそり忍ばせる。

 同じタイミングで、IMFと連携している政府の役人がダボリーの会社を訪問し、現金も無いのに銅山の株を買い占めているのは問題だと警告する。慌ててダボリーは会社に戻り、800万ドルの紙幣を見せようとするが、その瞬間シナモンがリモコンのスイッチを入れる。するとダボリーのカバンの中の装置が作動し、札のインクを溶かしてしまう。タポリーは800万ドルの紙幣のはずが、ただのインクのにじんだ紙くずになっているのを見て呆然となる。

 最後、シナモンが他のメンバーに「ダボリーは長い休暇に出ることになった」と冗談めかして報告するシーンで〆。


監督: ポール・スタンレイ
脚本: リチャード・M・サカル


感想

 評価は〇。

 IMFがターゲットの金銭欲を利用して上手く嵌めてしまう、というなかなか痛快なエピソードで、満足度は結構高かった。


 今回のエピソードの目玉が、IMFが持ち込んだ”自称”「紙幣偽造マシン」。売り文句は、コンピューターを利用することで、原版を作る必要もなく簡単に偽造紙幣を印刷可能、という夢のようなマシンであるが、もちろんIMF謹製のインチキ機械である。この回の放送は50年前の1967年なのだが、当時としては「コンピューターを使用」は「魔法」とほぼイコールの万能イメージだったのだろうか。

 マシンの外観は21世紀から見るとかなりレトロで、スイッチを入れると前面の磁気テープがぐるぐる回り、さらに表面にはやたらとランプが取り付けられている、という、いかにも『コンピューター』である。

 また動作の仕方が傑作で、まずマシンの上にある「引き戸」をスライドさせて、穴から紙を一束入れると、少し待つだけで前面のスロットから紙幣を印刷した紙が滑り出て来る。さらにその紙を別の箱に入れると、今度は綺麗にお札が切り分けられて出て来る、という具合で、いくらなんでも「引き戸」は無いだろうと大笑いしてしまった。現在のコピー機を見慣れていると、紙の給紙システムとかがアナログに過ぎるのだが、我々がよく目にするコピー機が今の形になったのは1980年代になってかららしいので、当時としてはこんな描写でも視聴者としては特に違和感はなかったのかもしれない。

 さらに面白いのが、実はこのマシンというのがハリボテだということで、中にバーニーが潜んでいて、フェルプスが上から紙を差し込むと、それを受け取ってかわりに機械の中から印刷した紙を差し出したり、切り分けられた紙幣を並べて送り出したりするのである。それをダボリーたちは、コンピューター利用のハイテクメカだと感心して眺めているので、彼らの騙されぷりには本当に痛快だった。

 紙幣用の紙が盗まれたというのでどれだけ大量なのかと思ったら、実はトランク二個に入る程度の量だった、というのは、ちょっと意表を突かれた。まあトラック一台分も有ったらドラマとして大掛かりになりすぎて困るだろうし、トランク二個分でも高額紙幣を印刷すれば結構な額になるはずなので、それなりにリアルと言えるのかもれしない。

 終盤、IMFと連携している政府の役人ギローが、「ダボリーは金も無いのに思惑買いをしている。現金を見せないなら政府が介入する」云々と警告する。思惑買いとは何かと調べてみたのだが、見た目そのままで「噂や憶測など、特に根拠がないままで株を買う事」だった。別に思惑でも何でも株を買うことに政府が口出しできるとは思えないのだが、市場を混乱させているのがまずいという事なのだろうか。また最後のシナモンの言葉から、ダボリーは逮捕されたと推測されるが、何の罪なのだろうか。株取引の知識が無いとちょっと腑に落ちない結末ではあった。


参考:今回の指令の入手方法

 フェルプスが車で建物に乗り付け、建物そばのタバコの自動販売機にコインを入れ、「EMPTY(売り切れ)」と書いてあるボタンを押すと、取り出し口にタバコの箱サイズの黒い四角い箱が落ちてくる。その箱は小型のオープンリール式テープレコーダーで、さらにそれに写真入り封筒が貼り付けてある。フェルプスは車内でテープを再生し指令を確認する。最後「なおこのテープは10秒後に消滅する」といい、フェルプスがそばのドラム缶にレコーダーを放り込むと、ドラム缶の中から白煙が立ち上る。


参考:指令内容

 おはようフェルプス君。その男はウォルター・ダボリーといってアフリカにおける財界の大立者である。西側に友好的なアフリカの新興国ガレアにあるダボリー証券は、その国の経済に対して隠然たる勢力をもっている。先週、ガレア紙幣に使う紙が、偽造紙幣のベテラン・タゴールに強奪されるという事件が起きた。タゴールの背後にはダボリーがいて、やがて偽造される紙幣を流す計画と思われるが、しかしダボリーがあまりにも大物であるため、容疑だけで逮捕できぬという現状だ。

 そこで君の使命だが、奪われた紙を回収し、ダボリーに再起不能の打撃を与えることにある。例によって君もしくは君のメンバーが捕らえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで。なお、このテープは10秒後に消滅する。成功を祈る。


シーズン2(29~53話)の他のエピソードのあらすじ・感想は、以下のページでどうぞ

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